吹奏楽やオーケストラなどで活躍し、木管楽器の中で低音域を担当するファゴット。
他の多くの管楽器と異なり、10本の指をすべて使って演奏するため、ファゴットの運指は難しいと感じる人が多いのではないでしょうか。
この記事では、ファゴットの運指の覚え方や見やすい運指表を紹介します。
また、ファゴットのトリルの運指や、最低音の吹き方についても解説していきます。
ファゴットには同じ音を違う指で押さえて出すことのできる「替え指」が多いため、いろいろな運指を覚えて演奏に活用しましょう。
ファゴットの見やすい運指表は?
ファゴットは音域が広く、一番低い音であるB♭(シのフラット)から3オクターブ以上高い音まで出すことができます。
そのため、譜面でもヘ音記号から、ハ音記号、ト音記号まで幅広い記号を使ってメロディが表記されます。
出せる音域が広く、さらに替え指もあることから、運指の種類はとても多く複雑でファゴット初心者には難しいと感じてしまうかもしれません。
ファゴットにはドイツ式(ヘッケル式)とフランス式の楽器があり、フランス式は「バッソン」と呼ばれています。
2つの楽器の違いは以下の通りです。
ドイツ式(ヘッケル式) | 19世紀前半ごろからドイツにて改良され作られたファゴット。 キーを増やしたりパーツを開発したりすることで、より音程や音量をコントロールしやすくしている。合奏でも他の楽器の音色と調和しやすい。 |
フランス式 | フランスで作られ、従来の古典的なファゴットの仕組みを継承しているファゴット。 キーはドイツ式に比べて少なく、操作が比較的難しい。ドイツ式よりも音量が小さく、合奏よりもソロ向きの楽器。 |
現在は世界的にドイツ式が多く使用されているため、この記事ではドイツ式の運指表をご紹介します。
ヤマハ楽器解体全書の運指表
ファゴットの見やすい運指表として、以下のヤマハ楽器解体全書の運指表をおすすめします。
それぞれのキーをどの指で押さえるのかがわかる上、一音ずつ押さえるキーが色付けされているので運指がわかりやすくなっています。
PDFをダウンロードすれば印刷もできるので、常に手元に置いておきたい人にもぴったりです。
The Woodwind Fingering guideの運指表
こちらは海外のサイトで、ファゴット以外にもオーボエやフルートなど様々な木管楽器の運指がまとめられています。
The Woodwind Fingering guide
上記のヤマハの運指表よりも高い音の運指や替え指が記載されています。
より高音域も練習したい場合は、参考にしてみてください。
また、ヤマハの運指表には記載のない替え指もあるので、チェックしておけば替え指のレパートリーを増やすこともできるでしょう。
ファゴットの見やすい運指表は?
- 基本的な運指は「ヤマハ楽器解体全書」の運指表
- より高音域も練習したいときは「The Woodwind Fingering guide」の運指表
では、これらの運指表を元に、実際にファゴットの運指を覚えるにはどのようにすれば良いのでしょうか。
ファゴット運指の覚え方は?
先ほども説明した通り、ファゴットの運指は種類がとても多く、一度にすべての運指を覚えるのは難しいです。
しかし、初めからすべての運指がわかっていないと曲が吹けないということはありません。
自分が吹く曲で使用する運指から少しずつ覚えていきましょう。
自分の吹く曲に合わせて運指を練習する
練習の際は、吹く曲と同じ調の音階練習をすることをおすすめします。
例えば、ハ長調の曲を練習するのであれば、ハ長調の「ドレミファソラシド」の音階を一緒に練習してみましょう。
そうすると、曲の中で使用する運指を効率よく覚えることができます。
また、替え指についても、その曲の中で使える替え指から順番に覚えていきましょう。
同じ音であっても替え指を使うと音色が変わり、やわらかい音やピアニッシモの小さい音も出すことができます。
曲の雰囲気や強弱の指定に応じて替え指を使うのがポイントです。
自分の出したい音色を出せる替え指を探すというのもファゴットを吹く醍醐味なので、ぜひトライしてみてください。
練習教本を使用する
教本を使って練習するなら、『ヴァイセンボーン』という教本がポピュラーです。
ピアノを弾く人にとっての『バイエル』のような、メジャーな基礎練習の教本と言えるでしょう。
この本では、まず中音域の吹き方から練習を始め、徐々に低音域や高音域に広げていったり、シャープやフラットの付いた音を練習したりするようになっています。
出しやすい音域から練習を始められるので、初心者でも無理のない練習ができ、運指を覚えることができるでしょう。
ファゴットの運指の覚え方
- 曲に合わせた調の音階を練習する
- 曲の中で使用できる替え指から覚えていく
- 練習教本を使用する
次に、ファゴットのトリルの運指についてです。
トリルの運指はどうする?
トリルとは、基準音とその1音上や下の音を交互にピロピロと鳴らすことで演奏を華やかにする奏法です。
ピッコロやフルートでよくトリルを演奏するイメージがあるのではないでしょうか。
ファゴットでも同じように、指を抑えたり離したりする動きを素早く繰り返すことによって演奏することができます。
トリルも、曲に出てきた都度、運指を確認して覚えていきましょう。
ファゴットのトリルの運指を確認するには、先ほども紹介したこちらのサイトが便利です。
The Woodwind Fingering guide
素早いトリルを演奏するには、指を離すときに上げすぎないことや、指に力を入れずリラックスすることが大事です。
無理に練習しすぎると腱鞘炎になる可能性もあるので、注意してください。
最後に、ファゴットの最低音の運指と替え指についてです。
最低音の運指と替え指は?
ファゴットの最低音の運指は、下の図のようになります。
ファゴットは主に中音域~高音域に替え指が多く、低音域にはあまり替え指がありません。
そのため、最低音にも替え指は使いません。
この運指で最低音が出にくかったり、ピッチが高くなってしまったりする場合は、キーの押さえ方ではなく別の要因があるかもしれません。
吹くときの口の形であるアンブシュアは適切にできているでしょうか?
高音域を吹くのに適しているアンブシュアと低音域を吹くのに適しているアンブシュアは異なるので、同じアンブシュアで吹こうとしていないか確認してみてください。
また、リードの調整をしてみることによっても低音が出しやすくなることがあります。
楽器屋さんでリードを探すときは、できるだけ試奏をして低音のピッチが安定するリードを選んでみましょう。
リードはデリケートなので、欠けてしまったりしないよう、使用していないときの管理にも気を配りましょう。
ファゴット初心者の吹き方や正しい音色、教え方についての詳しい記事はこちら!
→ファゴット初心者の吹き方練習法や教え方!どの音色が正解なのかも詳しく!
まとめ
この記事では、ファゴットの運指の覚え方や見やすい運指表を紹介しました。
また、ファゴットのトリルの運指や、最低音の吹き方についても解説してきました。
ファゴットを始めたばかりという人や、運指の覚え方に悩んでいる人などは、ぜひ参考にしていただければと思います。
ファゴットの運指は種類がとても多く、ひとつひとつ機械的に覚えていくのは大変です。
曲の中で実際に使う運指から覚えていけば、モチベーションが下がらずに運指を覚えていくことができるでしょう。
また、曲の流れで運指を覚えることによって、前の音からのつながりや次の音へのつながりを意識しながら、使いやすい替え指を覚えることもできるでしょう。
このとき、できるだけ色々な調の曲を練習することをおすすめします。
同じ調の曲ばかりだと運指のレパートリーがなかなか増えず、吹ける音が限られてしまう可能性があるためです。
色々な曲に触れながら少しずつ運指を覚え、徐々に吹ける曲を増やしていきましょう。