DTMでドラムをMIDI打ち込みする場合、パラアウト出力をすることで各パーツにEQなどのエフェクトをかけて音作りが可能になります。パラアウトして音作りすることで音圧や広がりのあるドラムサウンドを作ることができます。
今回はサンプラー「Kontakt」のパラアウト設定方法、Cubaseのパラアウト出力方法を詳しく解説していきます。
まずはパラアウトの基礎知識から始めようと思います。
パラアウトの基礎知識
通常ドラムをMIDIで打ち込みした場合、1つのトラックに全てのパーツ(スネア、バスドラ、タム、シンバル)をまとめて打ち込まれます。
DAWのエフェクトはトラック全体にかけものなので、例えば打ち込んだドラムトラックにEQをかける場合、トラック全体にEQがかかってしまいます。つまりバスドラにEQ、スネアにリバーヴといったようにパーツ単体にEQかけることができません。
パラアウト設定し複数トラックに出力すると1トラックにバスドラ、2トラックにスネアといったように分けることが可能になるのでエフェクト処理の幅が広がります。
他にもパラアウト出力するとベロシティー(強弱)設定なども各パーツごとに行うことができますので、打ち込みドラムにリアルなニュアンスを付けることが可能になります。
続いてはKontaktのパラアウト設定方法について解説します。
Kontaktのパラアウト設定方法
KONTAKTのDRUMMERシリーズ(80s DRUMMER, 70s DRUMMER, 60s DRUMMER, MODERN DRUMMER または STUDIO DRUMMER)をパラアウトを設定する方法を解説します。
これらのドラム音源でパラアウト設定するには、あらかじめKONTAKT の「Output」ミキサーでパラアウトを構成しておく必要があります。
- ホストシーケンサー内で、KONTAKT 5 をロード。(KONTAKT のMixer が表示されていない場合は「Output」をクリックし「Mixer」を表示)
- アウトプットチャンネルを追加。
- 現在のKONTAKT アウトプットチャンネルの割り当てをクリック。
- KONTAKT でSTUDIO DRUMMER をロード。
- 各ミキサーチャンネルをKONTAKT の各アウトプットチャンネルに割り当て。
- STUDIO DRUMMER のMixer タブ の「SETTINGS」をクリックし「KICK」チャンネルを選択。
- OUTPUT ドロップダウンメニューをクリックし、KICK チャンネルをKONTAKT の最初のアウトプット(st.1) に設定。
- SNARE チャンネルを選択し、アウトプットをst.2 に割り当て。
- 残りのインストゥルメントチャンネルも同様の設定を繰り返す。
以上の9つの手順でパラアウト設定を行います。
これは簡単に説明するとドラムキットの各パーツの出力先を設定しているだけです。
STUDIO DRUMMERのドラムキットは11のステレオチャンネル(Kick, Snareなど11個のパーツ) で構成されています。
通常であれば11個のパーツは1トラックにまとめて出力されてしまいますが、パラアウト設定することで11個のチャンネルから出力が可能になります。
そのためパラアウトさせるには、KONTAKT の「Output」ミキサー「st.1」から「st.11 」までの11個ののステレオチャンネルを作成する必要があります。
Kontaktを使用する場合は何かしらのDAWソフトと併用することが殆どですが、続いてはKontaktとCubaseを併用した場合のパラアウト設定方法を解説していきます。
KontaktをCubaseで使用する場合のパラアウト設定方法
KONTAKTのラックに読み込まれている各インストゥルメントからのオーディオをCubaseのミキサーの各チャンネルにパラアウトする方法を解説します。
この設定をすることにより、各チャンネルをCubaseの個別のトラックとしてミックス処理を行うことができます。
この設定は以下の手順で行います。
- CubaseにKONTAKTをロード。
- KONTAKTで複数のオーディオ出力用にOutputセクションを設定。
- CubaseでKONTAKT用のインストゥルメントアウトプットチャンネルを作成。
- インストゥルメントごとにKONTAKTの別々のアウトプットを割り当て。
では1つずつ解説していきます。
①CubaseにKONTAKTをロードする方法
Cubaseのスタジオメニューより「VSTインストゥルメント(Cubase 9.5以前のバージョンではデバイス > VSTインストゥルメント)」をクリックし、VSTインストゥルメントラックを開きます。
続いてVSTインストゥルメントウインドウで「RACK INSTRUMENTS」をクリックし、使用したいオーディオチャンネル数に応じて「Kontakt 5」または「Kontakt 5 16out」または「Kontakt 5 8out」を選択して下さい。
※Kontakt 5インスタンスでは合計64オーディオチャンネル、Kontakt 5 16outは合計16オーディオチャンネル、Kontakt 5 8outは合計8オーディオチャンネルが使用可能です。
KONTAKTをプラグインとしてロードする際「プラグイン”Kontakt 5”を割り当てたMIDIトラックを作成しますか?」と表示されます。MIDIトラックを作成しない場合はキャンセルを、作成する場合は作成をクリックします。
②KONTAKTのOutputセクションを設定する方法
CubaseでKONTAKTプラグインウインドウを表示します。Outputセクションを表示するには、KONTAKTの「Workspace」メニューの「Outputs」にチェックを入れます。
KONTAKTウインドウのラックスペースの下部にOutputセクションが表示されます。「+」ボタンをクリックし、Outputオプションダイアログを表示します。
Quantityフィールドでは数をクリックしたままマウスをドラッグし、追加したい新規マスターチャンネルの数を選択します。Number of channelsは新たに作成するチャンネルがモノラルの場合は1、ステレオの場合は2に設定して下さい。
Soundcard / Host outputドロップダウンメニューで、最初の未使用のoutputを選択します。初めてCubaseでパラアウトを設定する場合は、最初の未使用のoutputがKt. aux 1 という名称になっています。
選択後、次の利用可能なアウトプットへ自動的に割り当てるために「Ascending output assignment」にチェックを入れます。
「Make this your default configuration」にチェックが入っていることを確認してください。(ここでの操作はKONTAKTのOutputセクションで設定した名前をCubaseの出力名としてこの後正しく表示させるために重要なステップとなります。Cubaseはプラグインを起動した時、そのプラグインのデフォルト設定のアウトプットチャンネル名をミキサーに反映します)
設定を保存するため、OKをクリックし、Outputsウインドウを閉じますが、ここまでの設定が正しく行われていれば「Output Configuration was saved as default」というメッセージが表示されますので、OKをクリックします。
KONTAKTのOutputセクションには8つのマスターチャンネルアウトプットが表示され、それぞれがCubaseの異なるステレオアウトプットにルーティングされます。
※Kontakt 5、Kontakt 5 16out、Kontakt 5 8outは、Cubaseからは別々のプラグインと見なされます。Outputセクションの設定はこれらのKontakt 5 VSTプラグインのそれぞれに対して、個別に設定する必要があります。
③CubaseでKONTAKT用のインストゥルメントアウトプットチャンネルを作成する方法
初めて新しいOutput設定でKONTAKTを使用する場合は、CubaseのVSTインストゥルメントラックからKONTAKTを一旦外し、再度ロードします。
これを行うには、VSTインストゥルメントラックの名前をクリックし、コンテキストメニューでNo VST Instrumentを選択します。既にこのOutput設定でKONTAKTを使用している場合は、この手順をスキップできます。
※この操作は必ず行って下さい。Cubaseはプラグインをロードする時にKONTAKTのデフォルトアウトプット設定を読み込みますので、この操作をスキップすると、アウトプットチャンネル名が正しく表示されません。
続いてドロップダウンメニューを開いて使用可能なアウトプットを選択するために「出力を有効」ボタンをクリックし、出力を有効ドロップダウンメニューで、有効化したいステレオアウトプットを選択します。
追加で出力を有効にするとKONTAKTのフォルダートラックに「Kt. st.1」に続けて有効にした出力が表示されます。
④インストゥルメントごとにKONTAKTの別々のアウトプットを割り当てる
ロードしたインストゥルメントごとにKONTAKTの別々のアウトプットを割り当てます。ラックにインストゥルメントをロードすると、デフォルトでは最初のステレオアウトプット「St.1」に自動的に割り当てられます。
インストゥルメントごとにアウトプットを変更するには、ヘッダーにあるOutputセクションをクリックし、アウトプットを変更します。
ラックにロードした全てのインストゥルメントに対してこの設定を繰り返し、それぞれのステレオアウトプットを選択して下さい。
まとめ
KontaktとCubaseのパラアウト設定について解説してきましたが、この設定は1つずつ確実に行って下さい。両方の設定がしっかりできてこそKontaktの機能をDAWソフトで発揮することが可能になります。
また勘違いしている方が多いのですが、KontaktはDAWソフトではなくプラグインになります。パラアウト設定をして出力先のDAWが無ければ音楽制作をすることはできませんので注意して下さい。
- Kontaktのパラアウト設定を行う。
- Cubase側にKontaktをプラグインとして読み込ませる。
- Cubase側でパラアウト設定を行う。
- DAWソフトはKontaktをプラグインとして認識する。
この記事をKontaktやDAWのパラアウト設定の参考にしてみて下さい。