ギターに付いているトラスロッドという部品は、ネックを反りを調整するためのものです。
ギターのネックは木材でできていますので、湿気や温度の変化で変形して曲がってしまします。これをトラスロッドで調整するのですが、非常に難しい作業なので多くの場合は楽器店のリペアマンに依頼します。
しかし、ネックは頻繁に反るものなので中には自分で直したいと考えている方も多いかと思います。
今回はネックの反りについての基礎知識、トラスロッドを回して調整する方法、トラスロッドが回らない時の対処法などを初心者にも分かり易く解説していこうと思います。
ギターのネックの反りを確認する方法
まず、動画でも解説されていますが、ギターのネックの反りには3種類あります。
1. ネックの順反りの確認方法
写真の1番上が「順反り」と呼ばれるもので、ギターを寝せた状態から見てネックが起き上がっている状態です。順反りは弦のゲージ(太さ)やチューニングを変更した際に頻繁に起きます。
順反りをしてしまうとハイポジションにいくにつれ、弦高が高くなり弾きにくくなりオクターブ・チューニングもズレてしまいい、12Fのチューニングが半音高くなってしまうこともよくあります。
弦高調整をしていないのに弦高が高く感じた場合、順反りになっていることが多いです。(反り具合によっては気付きにくいこともあります)
2.ネックの逆反りの確認方法
写真の1番下が「逆反り」と呼ばれるもので「順反り」とは逆方向に沿った状態です。この反り方をすると5F~10F付近の音がビビってしまい、しっかりと鳴らなくなります。
弦高調整していないのに弦高が低くなっていて、音のビビりが出ている場合は逆反りしている場合が殆どです。
3.ネックの捻じれ
「捻じれ」は「順反り」と「逆反り」の両方が起きて「ネックが波打っている状態」です。
この状態になるとチューニングも安定せず、弦高が高いポジションと低いポジションがあり手の施しようがない状態です。
トラスロッドでの調整も不可能なのでリペアマンに依頼して専用の「ネックヒーター」を使用して直すことになります。
ネックの反りを確認する動画を掲載しておきますので参考にしてみて下さい。
続いてはネック調整するためのトラスロッドの位置を解説します。
ネック調整をするためのトラスロッドの位置
トラスロッドですが、この部品はネックの中に仕込んである金属製の棒状のものです。
ギターのモデルによってはトラスロッドの位置が異なりますので、各モデルのトラスロッドの位置を紹介していきます。
引用元:ゼロワンサウンドアース
トラスロッド(ナットの下の金属の部品がトラスロッド)は多くのギターは写真左のヘッド部分から調整することができます。しかし、モデルによっては写真中央と右のようにボディー側から調整するものもあります。
ボディー側から調整するタイプですが、モデルによっては1度ネックを取り外さないといけないものもあります。
ネックの取り外し方法
ネックの取り外しは動画のように行います。
取り外す時は特に問題がありませんが、取り付け時にネジ穴をしっかり合わせてボディーに装着しないと、真っ直ぐにネックが取り付けられませんので慎重に行うようにして下さい。
続いてはトラスロッドの回し方を解説していきます。
トラスロッドの回す方向と回す時の注意点
まずトラスロッドの回すために必要な物を紹介します。
- 六角レンチ。
- プラスドライバー。
トラスロッドは六角レンチで回すタイプとプラスドライバーで回すタイプがありますので、トラスロッドに合ったものを用意して下さい。
トラスロッドを回す方向
- 「順反り」であれば「時計回り」
- 「逆反り」であれば「反時計回り」
トラスロッドは反りに合わせてこのような方向に回します。
トラスロッドの回し方と注意点
トラスロッドはネックの具合を確認しながら少しずつ回していきます。
しかし、ネックが真っ直ぐな状態は非常に分かりにくく、指板にRがついているストラトはフラットなものよりも特に分かりにくいです。
トラスロッドを回し過ぎれば「順反り」が「逆反り」、「逆反り」が「順反り」になることもあります。
- トラスロッドは0.5mm~1mm程度を目安に少しずつ回すようにして下さい。
1回45度まで回すというのが一般的ですが、その角度も感覚的なものなので中々、上手くは行きませんので慎重に少しずつ回して、トラスロッドが僅かに動く度にネックの状態を確認する作業を繰り返します。
ネックは目で確認して真っ直ぐかどうかを判断するのが非常に難しいので、弾き心地で確認する方法もあります。
あまり神経質にならず、更に目で見て確認するよりも「弾き心地が改善されたところでトラスロッドを回すのを止めておく」のがコツです。
それからトラスロッドを回し過ぎるとネック内部を破損してしまうこともありますので、慎重に行って下さい。
続いてはトラスロッドが回らなくなった場合の対策について解説していきます。
トラストッドが回らなくなった時の対策
ネックが反る度にトラスロッドを回していると、段々と固くなっていき最終的に回らなくなってしまします。
例えば、ネックは順反りすることの方が多いのですが、順反りする度に時計回りにトラスロッドを回していれば、いずれ回らなくなります。そうなれば当然ネックを調整することが不可能になります。
トラスロッドが限界まで回りきっている状態で、無理に回せばネック内部が割れてしまいますので絶対に回さないようにして下さい。
トラスロッドが回らなくなった場合、自分では直すことができませんので、リペアマンに修理を依頼して下さい。
中古ギターを買う際に気を付けること
ハイブランドのギターが中古相場よりも安く販売されている場合、トラスロッドが回せる余裕が殆ど無くなっていることがあります。
トラスロッドが回せる余裕についてしっかり説明しない(敢えて言わないこともよくあります)こともありますので、中古ギターを購入する際は「トラスロッドはどれくらい余裕があるか?」を必ず聴いてみるようにして下さい。全く回せる余裕が無いものも販売されているので注意が必要です。トラスロッドを外してのネック調整は数万円かかることもあります。
また、新品のギターの購入する場合は、楽器店で長く保管されネック調整されていない限りはトラスロッドの問題はありません。
しかし、ネックが反っているギターを販売している大手楽器販売店もあります。初心者の方が新品の楽器を購入する際は「ネック調整とオクターブチューニングの調整をしてほしい。」とお願いしてみて下さい。新品を購入する時は必ず対応してくれます。
まとめ
ネック調整について解説してきましたが、ネック調整の費用もギターの維持費だと考え調整する際はリペアマンに依頼することをおすすめします。
その理由ですが、自分自身がネック調整に失敗して何本もギターを破損した経験があるからです。破損の度に3万円~4万円の修理代がかかりましたが、これはそこそこ良いブランドの中古品が買える金額でもあります。これは初心者の場合、現在使用しているギターより高くなるかもしれません。
今でこそ簡単に直すことができるようになりましたが、自分でネック調整ができるようになるまでに、10本以上のギターを破損していますし、調整技術を身に付けるまで時間もかかりました。
初心者の方が自分でネック調整をすれば、ほぼ間違いなく悪化させますので自己責任で行うようにして下さい。
この記事をネック調整の参考にしていただければと思います。