ブラックメタルはヘヴィーメタルから派生したジャンルですが、ヘヴィーメタルの中でも最も過激でアンダーグラウンドな音楽です。
今でこそメジャーデビューするバンドも増えてきてブラックメタルが一般的にも認知されるようになりましたが、2000年くらいまではマニア向けのジャンルでした。
また、音楽的な話題よりも過激な事件の話題の方が有名なジャンルでもあります。
今回はブラックメタルの音楽的な特徴や歴史について解説しながら、おすすめの名盤を紹介していきます。
ますは、ブラックメタルの音楽的特徴と歴史についてから始めます。
ブラックメタルの音楽的特徴と歴史
元々、ブラックメタルはマイナーなジャンルであったので、いつどこで生まれたのかが不明な部分があります。
「ブラックメタルの血塗られた歴史」という書籍を読んだことがあるのですが、それによれば80年代にノルウェーで生まれたようです。MatallicaやVenomに影響を受けた人達が、スラッシュメタルをベースに生み出したとも言われています。
ブラックメタルの音楽的特徴
- 北欧神話/ネオナチ思想/反キリスト/サタニズムといった内容の歌詞。
- デスボイスや金切り声のようなボーカル。
- エッジの効いたノイズに近いギターサウンド。
- ダークで陰鬱で過激な楽曲。
- マシンガンや爆撃を表現したブラストビート。
以上のような特徴があります。
90年代にメジャーデビューしてくる、ごく一部のバンドはホラー映画仕立ての歌詞、壮大なオーケストラを導入した楽曲のものもありあます。
またメジャーデビューせずアンダーグラウンドな存在に拘るアーティストが非常に多く、過激さや凶暴さを表現するために、敢えてCDの音質を低音質にしてしまうバンドも少なくありません。
ブラックメタルも「プリミティヴ・ブラックメタル」、「シンフォニック・ブラックメタル」、「サタニック・ブラックメタル」などと様々なサブジャンルが存在しています。
中でも「プリミティヴ・ブラックメタル」は1曲が15分以上あるものも沢山あり、劣悪な音質で1つのフレーズを延々とリピートするような曲を演奏しています。
ブラックメタルの歴史
ブラックメタル・ミュージシャンは音楽的な話題ではなく、様々な事件を起こして世間を騒がせることでも有名です。
ブラックメタル・バンドは「サタニズム」を世界に広めることを目的として活動しています。これは日本のヘヴィーメタル・バンド「聖飢魔II」のようなキャラ設定ではなく、本気でそのような考えで活動しています。そのため数々の事件を起こしました。
ブラックメタル・バンドは北欧に沢山いますが、そのバンド達が集まったコミュニティーに「インナー・サークル」というものが存在します。
インナー・サークルに所属する全てのバンドは「サタニスト」つまり反キリストの悪魔崇拝者なのでバンド活動の一環として、北欧の歴史あるキリスト教会への放火事件や凄惨な事件を何件も起こし「サタニック・テロリスト」と呼ばれ社会問題にまでなりました。(放火した教会の写真をアルバムのジャケットに使用する過激なバンドもいます)
その結果、ノルウェー当局が捜査に乗り出しインナー・サークルは解体され、多くのブラックメタル・ミュージシャンは社会不在になります。
ブラックメタル・バンドの多くがこのような過激な人達の集まりでしたが、中にはそのような思想には興味を持たずブラックメタル追求したバンドも少ないですが存在します。
続いてはブラックメタルの名曲を紹介していきます。
ブラックメタルの名曲
Cradle Of Filthは世界で1番成功しているブラックメタル・バンドです。
サタニズムなどの思想は関係なく、毎回ホラー映画仕立ての名盤をリリースしています。
シンセを大々的に取り入れ壮大でメロディックな楽曲が多いので聴き易いのですが、ボーカルの声や曲の雰囲気が下手なホラー映画を見るより気味が悪いです。
Emperorはインナー・サークルに所属し一時はメンバーが社会不在になったバンドですが、音楽的才能と演奏力がケタ外れに高いバンドです。
インナーサークル所属で唯一、世界的に成功したスタジアム・クラスのバンドです。
Dissectionも作曲能力、演奏力ともにハイレベルな人気のバンドです。
ボーカル兼ギターであるリーダーが長期社会不在になりましたが、社会復帰後に1枚アルバムをリリースしました。
動画の楽曲はアルバムのラストを飾る曲でありリーダーの遺書だった楽曲です。リーダーがこの曲を遺して亡くなってしまいバンドが解散しましたが、未だに大人気のバンドです。
Mayhemはブラックメタルを生みだしたバンドです。
因みに、このバンドのリーダーが先程、解説した「インナー・サークル」を設立しました。
このような本家ブラックメタルは、ブラックメタルを聴く人の中でも好みはハッキリと分かれます。個人的には年に1度聴くくらいで良い感じです。
Burzumは、ある意味では世界的に有名なバンドです。メンバーは1人しかおらず全てのパートを担当しています。この曲が「プリミティヴ・ブラックメタル」と呼ばれるものです。
日本盤も数枚リリースするほど人気がありますが、20年近く社会不在で刑務所で録音したCDも数枚あります。
現在は社会復帰していますが、あまりにも過激なネオナチ思想の人物なのでHPがロシア政府の命令で削除されており、音楽活動をしているのか確認ができませんでした。(多分、活動はしていないはずです)
ブラックメタルの名盤10選
Cradle Of Filthのアルバム「Cruelty And The Beast」は実在したハンガリーのエリザベス・バソリー伯爵夫人を題材にしたアルバムです。
ブラックメタルである上に題材が題材なだけに、ダークでホラーなアルバムです。しかし、楽曲のクオリティーが非常に高いのでおすすめです。
続いてもCradle Of Filthのアルバム「Midian」です。
このアルバムは作家「クライブ・バーカー」の「死都伝説」を題材にしています。ダークな作風ですがホラーとはまた違った独特の雰囲気があります。非常に聴き易いアルバムなのでおすすめです。
Emperorの「Prometheus – The Discipline of Fire & Demise」は解散時にリリースしたラスト・アルバムです。それまでリリースしたどのアルバムよりもクオリティーが高いです。
このバンドは演奏力がケタ外れに凄いので(人間離れしています)楽器を演奏する人におすすめです。
Dissectionの「Storm of the Light’s Bane」は未だに人気のあるアルバムです。ノルウェー系のメロディック・ブラックメタルを確立したアルバムでもあります。
楽曲のレベルも非常に高く、スラッシュメタルが好きな方にもおすすめできるサウンドです。
Dissectionのラストアルバム「Reinkaos」も名盤です。
従来の音楽性とは若干変わり、デスメタル系のサウンドになりましたが非常にハイレベルな楽曲が収録されています。
ブラックメタルを生みだしたバンドでもあるMayhemの名盤「De Mysteriis Dom Sathanas」です。
このアルバムは大人気のアルバムで日本盤もリリースされましたが、聴かせることを目的として制作していませんので聴きにくいです。
名盤と言われていますが、ボーカルの声が気味悪くて個人的には苦手です。
Burzumの「Det Som Engang Var」は「涅槃宮」という邦題で日本盤もリリースされていました。
Burzumの作品の中でも人気のあるアルバムで初期のシンセを多用しないスタイルの完成系が聴けます。
こちらもBurzumの名盤「Hvis Lyset Tar Oss」です。「白昼夢」という邦題で日本盤がリリースされていました。
ミッドテンポの長い楽曲が多く、シンセを前面に出しブラックメタル特有のダークさや気味悪さは全くなく、幻想的な雰囲気のアルバムです。
続いてもBurzumのアルバム「Daudi Baldrs」です。獄中でレコーディングされているのでシンセのみの楽曲です。
例えるのであれば70年年代~80年代のB級ホラー映画のサントラのような感じです。しかし、人気のあるアルバムで名盤と言われています。
最後はアメリカのブラックメタル・プロジェクトXasthurの「To Violate the Oblivious」です。マニアの間では名盤とされています。
完全に玄人向けの作品なのでメジャーなバンドを聴いて気に入ったら聴いてみると良いと思います。
こちら「ブラック・メタルの血塗られた歴史」はブラックメタルの歴史に付いて非常に詳しく書かれていますので、この本を参考にブラックメタルを聴いてみるのも良いと思います。
まとめ
ブラックメタルについて解説してきましたが、このジャンルを確立した人達が音楽とは別の話題で有名になってしまったので未だにネガティヴなイメージが付き纏っているのも事実です。
確かに北欧の閉鎖的なシーンで生まれたブラックメタルが、世界的に有名になったキッカケは音楽的成功ではなく、MayhemやBurzumといったバンドの事件だったので仕方がないことかもしれません。
しかし、中には非常にレベルの高い楽曲を制作し、高い演奏力を持ったアーティスト(少ないですが)もいますので1度聴いてみるのも良いと思います。
この記事をブラックメタルを聴く際の参考にしてみて下さい。