ボーカルの歌唱方法にはミックスボイス、ファルセットなど様々なものがありますが、今回はエッジボイスというものについて解説していこうと思います。
この歌唱方法を身に付けることで歌の表現力がアップしますし、エッジボイスはボイストレーニングとしても効果的です。
エッジボイスとは何かといった基礎知識、習得の仕方、高音域での使用方法を紹介していこうと思います。
まずは、エッジボイスとは何かから解説します。
エッジボイスとは
「エッジボイス」は、別名で「ボーカルフライ」とも呼ばれる声のことで、声帯を閉じて発声した時に出る、ガラガラとしたような声のことです。
音程が安定した声を出すためには声帯を均一に振動させることが重要で、そのためには声帯を適度に閉じて発声する必要があります。
エッジボイスは、声帯を適切に閉じているからこそ出せる声です。
エッジボイスを歌唱テクニックの1つとして曲中で使うこともありますが、安定した声を出せるようになるためのボイストレーニングといして用いることも多いです。
エッジボイスの効果とメリット
エッジボイスの声帯閉鎖の感覚を身につけ声帯の使い方をマスターすれば、表現力豊かな歌い方ができるようになります。
また、エッジボイスの効果やメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 音程や声量の安定。
- 倍音が響く声になる。
- 高音に張りが出る。
- 声の調子のチェックができる。
以上のような効果とメリットがあります。
1つずつ詳しく解説していきます。
音程や声量が安定する
声帯がほど良い力で閉じている「声帯閉鎖」の状態を維持することができるようになると、常に一定の音程で歌うことができるようになります。
発声している間に音程が上振れまたは下振れしてしまうのは、声帯閉鎖の状態になっておらず、声帯から息が漏れてしまっていることが原因です。また、息漏れは息を使っている割に声量が出ない原因にもなっています。
エッジボイスを習得すれば、これらの息漏れによる問題を解決させることができます。
倍音が響く声を出せる
「倍音が響く」とは、声を出しているときに複数の音が響いている状態をいいます。
音は、空気を構成する分子を次々と揺らしながら伝わっていく波です。その波が人間の耳の中の鼓膜を振動させると、人に音として認識されます。
波の形は音の高低や質によって変わるので倍音では複数の形の違う波が、次々と鼓膜を振動させる状態になります。そのために複雑な音色に聞こえ、そして心地よく感じられる歌声となるのです。
エッジボイスを習得すると、普段から歌うときにも「エッジ感」のある歌声が出せるようになります。
声に複雑さが増すことで、歌声を「倍音が響く声」に近づけることができます。
高音に張りが出る
高音を発声するときに「張り」のある声を出せることも歌い方の重要なポイントの1つです。
エッジボイスを出しているときの声帯の状態のままで高音を発すると、張りのある高音を鳴らすことができるようになります。
また、地声から裏声に切り替えるときの「換声点」での声のがらつきや息漏れ、裏返りなども、エッジボイスの習得で改善させることが可能です。
これらの「換声点ブレイク」が起きてしまう原因は、声帯を上手く閉じられていないことにあります。
エッジボイスを習得し、声帯閉鎖の感覚をつかむことで、換声点ブレイクを上手く乗り越えられるようになります。
声の調子がチェックできる
声帯閉鎖の状態のときにだけ出すことができるエッジボイスは、声帯が疲れていたり、風邪を引いていたりなど、喉の調子が悪いときには出すことができない声です。
喉が不調のまま無理をして歌の練習を続けてしまうと、効率が上がらないだけでなく、歌い方に悪い癖がついてしまう恐れもあります。
エッジボイスが上手く出せない日は、ボイストレーニングの休息日にすることも重要です。
続いてはエッジボイスの声の出し方について解説していきます。
エッジボイス 声の出し方
まずは簡単にエッジボイスを出す方法から紹介します。
- 力を抜き出しやすい音程で「アー」と発声する。
- 発生したまま音程を1番低い音まで下げていく。
1番低い音まで下げると最後は声にならなくなり「ガラガラ」とした音しか出ないと思いますが、その声が「エッジボイス」となります。
上手くいかない時は喉に力が入りすぎていないかを確認して、息の量を調節してみると良いと思います。
エッジボイスを出すためのコツ
エッジボイスを出すための声帯閉鎖の状態にするには、力が抜けていることが肝心ですので、大きく息を吐いたり深呼吸をしたりして、リラックスすることを心掛けて下さい。
声帯を閉鎖状態にするコツは以下の通りです。
- ゆっくり息を吸う。
- 吐いている途中で力を入れて強く息を止める。
息を吐いている途中で力を入れ、息を強く止めている時が声帯を強く閉じている状態です。
この声帯がしっかりと閉じている時の、閉鎖筋が強く働いている様子を感じてみることが大切です。
効果的な練習方法
エッジボイスの効果的な練習方法を解説していきます。
- エッジボイスを出す。
- エッジボイスを「アー」と伸ばさず「ア・ア・ア」と切る。
- 声帯のみに力を入れ身体の力は抜くのがポイント。
エッジボイスで鳴らしているのは、喉仏に近いごく一部分だけです。
また、エッジボイスの練習の際に「アー」と伸ばして発声してしまうと、声帯閉鎖の感覚が掴みづらくなってしまうので、その点にも気をつけて下さい。
エッジボイスが上手く出ない時の対処法
エッジボイスが上手く出せない場合は、以下の2つの点をチェックして改善してみて下さい。
- 声帯の隙間を無くす。
- 息の量を増やす。
この2つを意識するとエッジボイスが出しやすくなります。
声帯の隙間を無くす方法
声帯に隙間がある状態では息が漏れてしまい、エッジボイスにならずに空気の抜けたような声しか出せません。
改善するには、声帯が閉じた感覚を掴むためのトレーニングをしてみて下さい。
トレーニング方法ですが冷たくなった手を温めるように「ハー」と息を吹きかけるように息を吐き出します。この時に息を吐きながら、声帯が開いていることを意識します。
次に「ハー」を「アー」という発声に切り替えます。この切り替えが上手くいかない方は、「ハーーーア!」と切り替えた後に息を止めてしまっても良いです。
このように息を止めた瞬間に、声帯が閉じています。
この練習を繰り返せば、声帯が閉じている感覚を掴むことができます。
息の量を増やす方法
声帯を通す息の量が少なすぎるとエッジボイスを出すことができませので、まずは全力で「ハー」と息を吐いてみます。
それができたら、今度は「ハーーーア・ア・ア」と、息を吐いている途中で声に切り替えてみいきます。この時に注意しなければならないことは、声に変化させた時に声量が落ちないようにすることです。
続いて吐いていた息の量はそのままに、お腹から声を出すようにして「ア・ア・ア」と発声します。
この感覚が掴めるようになるまで、トレーニングを積み重ねることが大切です。
続いてはエッジボイスで高音を出す練習方法の解説をします。
エッジボイス 高音の練習方法
高音を出す場合は裏声にエッジボイスをミックスするのですが、入れ込むというよりは、「添える」というイメージの方が上手くいきます。
エッジボイスを出している状態から、ブツブツした音の状態を保ったまま、音程を徐々に上げていきます。
高音になるにつれ、ハミングするときのように鼻が震えている状態である「鼻腔共鳴」を意識するのが大切です。
裏声に力が入りすぎてしまったり、声が割れてしまわないよう注意が必要です。
このような状況のまま裏声のエッジボイスの練習を続けると、単に奇声を発しているだけになってしまい、キンキンとした細い声になってしまうことも多くあります。
音色に膨らみを持たせつつ、楽にクリアな高音を出すことを目指して練習してみて下さい。
まとめ
エッジボイスは歌の表現力をバリエーションを豊富にするだけではなく、ボイストレーニングにも効果的です。この声質が好みではなく、使わないとしてもとレーニングに取り入れることにより歌唱力をアップすることができます。
また近年ではエッジボイスを更に高度にしたデスボイスがロックだけではなく、ポップスのジャンルでもメジャーな歌唱方法になってきてきますので是非、マスターするようにしてみて下さい。
エッジボイスをトレーニングに取り入れることにより、ミックスボイスやファルセットなどの高音を楽に出すことも可能になります。
この記事をエッジボイスの出し方やボイストレーニングの参考にしてみて下さい。