MODXはYAMAHAがリリースしてシンセサイザーです。このモデルは珍しく幅広いジャンルのプレイヤーが使用しているように思います。
MODXシリーズにはMODX6(61鍵盤)、MODX7(76鍵盤)、MODX8(88鍵盤)といったグレードがありますが、鍵盤数が異なるのみで、その他の機能は全く同じものになります。
今回はMODX8をレビューします。レビューするにあたり使用する機材はローランド製のモニタースピーカーです。
まずはMODX8の仕様から解説します。
YAMAHA MODX8の仕様
MODX8の仕様で特に重要な部分をピックアップしてみます。
- MOTIF XFのサウンドエンジンを継承:リアルなピアノ音色やエレクトリックピアノ音色に加え、シンセサイザー、管弦楽器、ドラムの音色など、フラッグシップシンセサイザー「MOTIF XF」の高品位でバリエーション豊かな波形を全て収録。
- VCMエフェクト:MOTIF XF同等のエフェクトを搭載。
- フラッシュメモリーによる拡張機能を搭載:フラッシュメモリーエクスパンションモジュール「FL512M」「FL1024M」(別売)に対応。
- アイディアを生み出すパフォーマンスモード:ピアノ、ドラム、ベース、ギターといった楽器を組み合わせたアンサンブル演奏を手軽に実現するパフォーマンスモードを使えば、ピアノを弾くように様々なジャンルで演奏できます。
- 手軽に使える内蔵シーケンサー:16トラックのシーケンサーを内蔵しており、本体だけで音楽制作が可能。
- 鍵盤:88鍵、GHS鍵盤
- 音源方式:AWM2+アーティキュレーション機能
- 最大同時発音数:128
- マルチティンバー数:内蔵音源16パート、A/Dインプットパート
- シーケンサー容量:約226,000音
冒頭でも解説したようにMODX シリーズには、MODX6(61Key)、MODX7(73Key)、MODX8(88Key) の3機種がラインナップされていますが、鍵盤数以外の機能はどのモデルも全く同じになっています。
今までのフラッグシップモデルの後継機種のシリーズは、61Keyモデルと88Keyモデルの2種類が出ていましたが、MODX には 73鍵モデルが追加されたことで、プレイヤーの選択肢が広がりました。
注目すべき部分は今までにないリアルなサウンドと、鍵盤タッチ(GHS鍵盤)になります。
- MONTAGEから引き継いだ高音質。
- 使いやすさを追求した大型タッチパネルとユーザーインターフェース。
- 高性能、軽量、コンパクトなサイズ。
- アクティブなキーボーディスト向け。
ではMODX8のレビューをしていきます。
YAMAHA MODX8のレビュー
まず本体を操作していて気付いたことはデメリットでした。
この写真を見てもお分かりになるかと思いますがスイッチ関係の耐久性が非常に低いです。
スイッチやフェーダーはいつか必ず壊れてメンテナンスが必要になるものですが、このモデルは他社モデルよりも破損しやすいと思います。
サウンドのレビュー
MODX には、リアルなアコースティック系からシンセサイザーサウンド、リズミックなパフォーマンスサウンドなど、2000を超える膨大なプリセットが内蔵されています。全て MONTAGE と互換性のある圧倒的な高音質のサウンドプリセットです。
これらのサウンドですが、どんな音楽ジャンルにも対応可能なレベルのサウンドになっています。
従来のYAMAHAのシンセは「YAMAHA独特の音」がよほど好きでない限りは使うことはありませんでした。正直に言ってしまえば「使えない音」のシンセが非常に多く使用しているプレイヤーも多くはありませんでした。
しかし、MODX8はライブにもレコーディングにも十分に使用できるクオリティーのサウンドになっています。
ストリングス、リード、パッドは従来のモデルよりも音質が良くなりDAWソフトのプラグイン・レベルの現代風サウンドになっています。
ここでMODX8をライブで使用しレコーディングした非常に参考になる音源を紹介します。
※PVではモチーフが映っていますがレコーディングはMODX8を使用しています。
冒頭のピアノのサウンド、壮大なストリングス・サウンドはかなりクオリティーが高いことがお分かりになると思います。
レコーディング後の音質処理はしているものの、これと全く変わらないサウンドがプリセット状態で鳴らすことが可能です。
サウンドに非常にシビアなこのバンドのキーボーディストが使用している時点で、MODX8のクオリティーが高いことも分かります。
ピアノ・サウンドとGHS鍵盤
プリセットされているピアノのサウンドですが、設定を変更しなくてもじゅうぶんに使用できるクオリティーです。(今までは設定を変えて音作りをしてやっと使えるレベルでした)
そしてGHS鍵盤が搭載されているので非常に弾き易い印象でした。
GHS鍵盤は鍵盤の重さを低音部では重く、高音部では軽くなるように音域によって弾きごたえを段階的に変化させ、自然なタッチ感を実現したものです。このタッチがあると演奏の表現力も格段に上がります。
ストリングスの質感
バイオリンやチェロ、アンサンブル・ストリングスのサウンドがリアルな上に、弦の質感まで再現されているのには驚きました。
この弦の質感まで忠実に再現したシンセは他にないと思います。
リアルといっても他社のシンセと同等レベルではありますが、この弦の質感が加わったことで他社製品の上をいったと思います。
リード・サウンドとコントローラー
リードサウンドはローランドのJD800系に近いように感じました。
芯があり太くてハイ抜けも抜群に良いのでプリセット状態でもバンド・アンサンブルに埋もれてしまったりする心配がありません。ここが今までと異なる部分です。
今までは細く弱いサウンドでしたが、その欠点が全て改善されています。
こちらがコントローラーの写真です。
コントローラーがホイールタイプなので上下に動かしますが、コントローラーが軽い上に効きが強いので慣れるまでに時間がかかりそうです。
自分にとってはこの部分がデメリットに感じました。アップテンポの曲を勢いでリードソロを弾いてしまうとベンドの繊細なニュアンスを出すのが難しいと思います。常に冷静でいなければ上手く使えないように感じました。
シーケンサー機能
MODX8のサウンドをそのまま本体にMIDI入力が可能です。入力したMIDIをDAWと連携させることができますので、これはとても便利な機能だと思います。
演奏だけではなく、音楽制作にも活用できるシンセだと思いました。
まとめ
ではMODX8のレビューのまとめに入ります。
- プリセットサウンドのままで使用可能なほどの高音質。
- GHS鍵盤の効果で表現力の高い演奏が可能。
- ピアノやストリングスのサウンドが高価なプラグイン並みのクオリティー。
- コントローラーの効きが強いので慣れが必要。
- スイッチ関係の耐久性が低い。
MODX8ですが従来のYAMAHA製シンセとは全く異なる、ハイクオリティーなサウンドが印象でレコーディングやライブでも十分に使えると思います。
特にピアノやストリングスのサウンドは、シンセを使用したと言わなければ本物のピアノやオーケストラと区別がつかないほどのサウンドです。
また非常に軽量なので持ち運びに便利なところも良いと思います。
この記事をMODXの購入や使用の参考にしてみて下さい。