シロフォン、マリンバ、グロッケンは見た目はよく似た楽器ですが、音色はもちろん音の配列や音域も異なる楽器です。音の配列や音域が異なれば、奏法やアンサンブルでの使用方法も変わってきますので曲中での役割が変わります。
今回はシロフォン、マリンバ、グロッケンの音色や素材の違いを解説していきます。
まずはシロフォン、マリンバ、グロッケンの定義から始めます。
鍵盤楽器シロフォン・マリンバ・グロッケンの定義
シロフォン、マリンバ、グロッケンは音板を並べた鍵盤打楽器で撥を用いて演奏します。
しかし、シロフォンとマリンバは木製の音板を並べた鍵盤打楽器、グロッケンは鉄製の音板を並べた鍵盤打楽器になります。
この3つの楽器ですが見た目はそっくりですが音色、音域、曲中での役割りが異なる楽器でもあります。
続いては、この3つの楽器の特徴や違いを詳しく解説していきます。
鍵盤楽器シロフォン・マリンバ・グロッケンの違い
3つの楽器の特徴について詳しく解説していきます。
シロフォン
- 木製鍵盤打楽器。
- 音域は3~4オクターブ。
- 明るく硬質な歯切れの良い音。
- マリンバとは調律による倍音構造が異なる。
木製の音板をピアノの鍵盤と同じようにに並べてあり、音板の材質には「ローズウッド、紫檀、カリン」のような堅い木材が使用されています。マリンバもシロフォン同様に木製ですが、シロフォンの方が高くて硬い音がします。
通常、音板の下にマリンバ同様の共鳴管が取り付けられていますが、近年は繊維強化プラスチックを使用した音板の製品も制作されています。
演奏にはマレットと呼ばれる撥を使用しますが、撥の打部(木、ゴム、プラスティック、毛糸巻き)の材質により音色が変化します。
シロフォンは片手にマレットを2本持ち演奏しますが、マリンバのように4本~6本使用することもあります。
マリンバ
- 木製鍵盤打楽器。
- ピアノと同じ鍵盤配列。
- 音域は4~5オクターブ。
- 素材にはローズウッドやアフリカン・パドックを使用。
- 響きの豊かな深い音色。
ピアノと同様の配列をした木製鍵盤をマレットを使用して演奏します。
シロフォンと同じ構造ですが、シロフォンよりも鍵盤が広く厚く造られており、深みのある音色を出すことができます。
更に、鍵盤の下に各音階によって長さを変えた共鳴用の金属管が取り付けてあり、この金属管が音に共鳴し響きの豊かな音色になります。
マリンバの起源はアフリカにあると言われおり、木の板を並べた下に「ひょうたん」を共鳴管の代わりにした民族楽器だったそうです。
マリンバはソロで演奏されることも多い楽器で、有名な曲には以下のようなものがあります。
- Merlin – Andrew Thomas
- Khan Variations – Alejandro Vinao
- Velocities – Joseph Schwantner
- Dances of Earth and Fire – Peter Klatzow
- Cameleon – Eric Sammut
- NIFLHEIM – Csaba Zoltan Marjan
どの曲もYoutubeで聴くことができますし、聴き覚えのある曲も多いかと思います。
グロッケン
- 金属鍵盤打楽器。
- 音域が非常に高い。
- 鉄製の音板を並べたものの他に鐘を並べてものもある。
グロッケンの音板は共鳴箱を兼ねた箱に収められるか、箱を使わずに共鳴管の上に並べられます。通常はスタンドに設置されされ立奏のスタイルで演奏されることが多いです。
基本的に2本のマレットで演奏しますが、場合により3本以上、使用することもあります。
マレットのヘッドは「真鍮」や「アルミニウム」などの金属やプラスチックなどが一般的です。
しかし、曲調により適切なマレットを選ぶ必要があります。また、マレット以外で演奏する奏法として、音板の縁を弦楽器の弓で弾く奏法があります。
続いてはシロフォン、マリンバ、グロッケンの奏法について解説していきます。
シロフォン、マリンバ、グロッケンの弾き方や特殊奏法
基本的にこの3つはマレット(曲調により本数は異なる)を使用して鍵盤を叩いて演奏する打楽器です。
基本的な演奏方法
マレットを片手に2本ずつ持って演奏するのが基本スタイルですが、場合によっては片手に4本ずつマレットを持って演奏する方もいます。
打ちたい音板に合わせてマレットの間隔が調整できるように、親指と人差し指を自由に動かせる形で持つことがポイントです。
特殊奏法
音を長く伸ばしたい場合は管楽器や弦楽器に比べて音が伸びないので、音板がマレットに当たる時間をできるだけ短くして連打するトレモロ奏法があります。
このトレモロ奏法を用いると音が長く繋がって伸びているように聞こえます。トレモロの時は通常、柔らかいマレットを使用します。
動画を見るとよく分かりますが、実際は小刻みに叩いていますが音が伸びているように聞こえます。
音板を左右にこすって連続した音を出すグリッサンド奏法というものもあります。
グリッサンド奏法は、どちらかというと効果音的な音を鳴らすことができます。仕組みは小刻みに高速で半音階を演奏するものです。
リズムに合わせてクロマチック奏法的なものと、リズムには関係なく効果音的に半音階を鳴らし効果音を鳴らす方法があります。
シロフォン、マリンバ、グロッケンの中でも特殊奏法が多いのがマリンバです。これは楽曲でマリンバの役割がシロフォン、グロッケンよりも多くのことを求められるからです。
奏法名 | 弾き方 |
ロール | 両手によるものと片手によるもの(4マレット使用時に片手の2本を使用して行う) |
デット・ストローク | マレットを鍵盤に押し付けるように弾くことで音に消音効果と独特の打音を持たせる。奏者側の鍵盤(一般的には白鍵にあたる幹音に限るが、黒鍵にあたる派生音側に立って演奏すれば一応可能)に体を押さえつけても似たような音色を得られる。 |
グリッサンド | 先端で鍵盤の表面をこするように鳴らす。 |
マンドリン・ロール | 片手に持った2本のマレットを縦に並べて鍵盤を挟み表裏を連続して弾く。奏者側の鍵盤(一般的には白鍵にあたる幹音に限るが、黒鍵にあたる派生音側に立って演奏すれば一応可能)のみ可能。 |
リムショット | マレットの柄で鍵盤の角を弾く。 |
ボディショット | 楽器の側板を打楽器として叩く。 |
特殊マレットの使用 | マラカスのようなものや、牛皮を巻いたものを使用する。 |
以上のような特殊奏法があります。
そして、特殊奏法の中でもユニークなものが1円玉を使用する方法です。音板1本に1枚ずつ1円玉をテープで貼り付けて音に味付けをする人がいます。こうするとラテンアメリカの雰囲気の音が出るそうです。
まとめ
シロフォン、マリンバ、グロッケンについて解説してきましたが、この3つは形は似ていますが全く異なる音色であり、曲中での役割も違う楽器です。
アンサンブルでの需要はマリンバりシロフォンが多く、シロフォンに関してはシロフォンをメインにした楽曲も存在しています。
- サン=サーンス:『死の舞踏』、『動物の謝肉祭』より「化石」
- バルトーク:『弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽』
- ハチャトゥリアン:バレエ音楽『ガイーヌ』より「剣の舞」
- カバレフスキー:組曲『道化師』より「ギャロップ」
- 黛敏郎:『木琴小協奏曲』
これらの曲はシロフォンを前面に出したものですので、1度聴いてみるのも良いかもしれません。
シロフォ、マリンバ、グロッケンはピアノやバイオリンなどと比べると普段、聴く機会が少ないかと思いますが、幻想的で綺麗な響きの楽器ですのでこの機会に是非、聴いてみてください。