ジャズを聴く方であれば1度は「アシッドジャズ」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。
このジャンルは通常のジャズとは少し異なるもので、1980年代にクラブシーンで流行した音楽です。
今回はアシッドジャズの特徴を解説しながら、おすすめの名曲・名盤を紹介していきます。
まずはアシッドジャズの特徴から始めます。
アシッドジャズの特徴
アシッドジャズは簡単にいうと、1980年代にイギリス・ロンドンをはじめとするクラブシーンで生まれた「踊れるジャズ」です。
70年代のソウルやファンクなどの要素を取り入れたアシッドジャスは、後にR&Bやヒップホップにも影響を与えていきます。
アメリカ・シカゴで生まれたハウスなどのクラブミュージックに近いイメージで、ジャズの要素を残しつつも、ハウスの高揚感をミックスしたジャンルです。
アシッドジャズの歴史
アシッドジャズの歴史を語る上で外せない人物が「ジャイルス・ピーターソン」です。
当時のクラブシーンでは縁遠い存在となっていた1970年代のジャズをDJ達が「踊れるサウンド」に組み立てていきましたが、その中心にいたのがジャイルスです。
ジャイルスは15歳の頃に自宅に海賊ラジオ局を作り、自力で音楽を配信していました。
ジャイルスは、それまで大人のための古典的な音楽というイメージがあったジャズを若者向けのダンスミュージックに再定義しました。
そして、DJエディ・ピラーとともに、レーベル「アシッド・ジャズ」を設立します。
日本への影響
アシッドジャズは日本でも渋谷系というジャンルで大きなムーヴメントを起こしました。
その中でもジャイルス・ピーターソンに「アシッドジャズの歴史の中で極めて重要なグループ」として位置付けられているのが、日本のクラブシーンにおいてジャズを選曲するDJのパイオニア「U.F.O.」です。
アシッドジャズの最大のテーマである「踊れるジャズ」を圧倒的なセンスで完璧に体現したサウンドは、日本だけではなく本場のイギリスでも大人気となりました。
アシッドジャズで人気アーティストやバンドが奏でるおすすめ名曲・名盤10選
Space Cowboy/Jamiroquai
アシッドジャズをこれから聴こうとしている方におすすめなのが、アシッドジャズの世界で最も成功したと言われるイギリスのアーティスト「Jamiroquai」です。
大ヒット曲「Space Cowboy」は、アシッドジャズの持つ都会的でオシャレな感じと、踊れるグルーヴ感の両方を高い次元で融合した名曲です。
Don’t You Worry ‘Bout A Thing/Incognito & Stevie Wonder
この曲はミュージカル3Dアニメーション「SING」にも起用されたことでも有名です。
この曲は1973年にアメリカのシンガーソングライター「Stevie Wonder」が発表した曲ですが、多くのアーティストがカヴァーしています。
Four80East/Eastside
正統派アシッドジャズの名盤です。ジャンル特有の雰囲気である、都会的なサウンドとストリート・ジャズの要素を押し出した曲が多数、収録されています。
Breakout/Swing Out Sister
日本のR&B系アーティストに大きな影響を与えたバンドと言われています。
「Breakout」は、シンセポップスの懐かしさと、80年代の楽曲とは思えない新しさを感じる不思議なサウンドが特徴の名曲です。
Cantaloop/US3
この曲はジャズ・ラップです。「Blue Note Records」の音源をサンプリングしラップを乗せた、遊び心ある名曲です。
Fresh In My Mind/A Forest Mighty Black
ブラジリアン・ジャズの伝説的なピアニスト「テノーリオ・ジュニオール」の「Nebulosa」をいち早くサンプリングしたことでも有名この曲は、1997年にリリースされたアルバム「Mellowdramatic」に収録されています。
1975/Incognito
この曲は「Transatlantic RPM」収録の人気曲で、このアルバムは名盤と言われています。個人的にも非常におすすめのアルバムです。
Out of Here/Corduroy
このバンドは昔、CMでコーネリアスやカヒミ・カリィと共演したこともあります。攻撃的かつ陽気でグルーヴィーなサウンドが特徴のバンドです。
Dorado/Blue Mitchell
この楽曲が収録されているアルバム「Graffiti Blues」はアシッドジャズの名盤です。
紹介してきたアーティストの中では、1番ジャズらしいジャズを演奏しています。
After Hours/Ronny Jordan
ロニー・ジョーダンはアメリカのアシッド・ジャズ・ギタリストです。
ソウル、ディスコ、ヒップホップ、ファンクの要素をブレンドしたアシッド・ジャズの代表的なアーティストです。こちらも個人的におすすめの曲です。
こちらの「クラブジャズ・ディフィニティヴ 1984-2015」はクラブジャズの名盤が多数、紹介されている書籍です。
掲載されているアーティストで興味があるものを、Youtubeで検索し聴いてみるのも非常に楽しいのでおすすめです。
ジャズのおすすめ番外編
Miles Davis/A Tribute to Jack Johnson
アシッド・ジャズのバンド・サウンドが好みの方にはこちらもおすすめです。
マイルス・デイヴィス、ジョン・マクラフリンといった凄腕プレイヤーが共演している名盤です。
普段、マーシャル・アンプを使っているギタリストにとっては、このギターサウンドは非常に勉強になります。マーシャルのスーパートレモロというモデルを使用した、素晴らしいトーンを聴くことができます。(このトーンは偶然、出せた奇跡の音かもしれません)
Richard Bona/kalabancoro
こちらも現代風のアシッド・ジャズ/クラブ・ジャズに通じる名曲です。
Richard Bonaはベーシスト兼ボーカリストですが、作曲センス、演奏力、歌唱力が他のアーティストより格段に上でスピリチュアルな域に達しています。
Bonaのアルバムはどれも素晴らしい名盤ですのでおすすめです。
Marcus Miller/Power
ベースがメインのジャズですが、都会的でクラブ・ジャズ系のサウンドです。
ベースを演奏しない人にも楽しめる名曲が多いので是非、聴いてみて下さい。
まとめ
アシッド・ジャズは通常のジャズのように敷居が高くもなく、音楽性も本来のジャズとは異なるものが多いので音楽に詳しくない方でも楽しめるのが魅力です。
元々、大衆向けに作られたジャンルでもあります。通常のジャズの用に難しくありませんし、向き合って聴かず部屋のBGMとして流しておいても良いと思います。
また世界各国にアシッド・ジャズのアーティストがいますが、地域によりスタイルが異なるので聴き比べてみるのも面白いと思います。
アシッド・ジャズやクラブ・ジャズに関する書籍は沢山、販売されていますので、その書籍を見ながらYoutubeで興味のあるアーティストを探して聴いてみるのもとても楽しいです。今まで知らなかった音楽に出会えますし、これは趣味としてもおすすめできます。
今回の記事を参考にして、アシッド・ジャズやクラブ・ジャズを是非、聴いてみて下さい。