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DTM

ソフトシンセFL STUDIO Harmlessの使い方!加算方式と乗算方式での音作りも詳しく


FL STUDIO Harmlessはデモ版とシグネチャーに内蔵されているソフトシンセですが、このソフトシンセは他メーカーのDAWソフト(VST対応)を使用している方も有償購入して使用可能です。

まず初めにアドバイスしておきたいことはHarmlessは使いこなすのが非常に難しいので、プリセットされている音色をクリックして選んで使用することをおすすめします。

今回はHarmlessの基本仕様を紹介しながら、使い方を解説していきます。

まずはHarmlessの基本仕様から始めます。

FL STUDIO Harmlessの基本仕様

Harmless は、加算合成エンジンを使った減算合成シンセサイザーです。

この方法では不可能であるかと思わるような合成法または複雑な減算合成を単独で使用してサウンドを合成が可能です。

フィルターとフェイザーに特殊なシャープとスロープをアサインすることができますので、そのスロープはオクターブではなく周波数の解像度を使って定義させています。

このような仕様なのでHarmless は今までにない実験的な減算加算式シンセサイザーとなっています。

Harmlessを使うにはいくつかの方式を理解する必要があります。

5種類のシンセ音源の方式

  1. アナログシンセ等に代表される「減算方式」
  2. 電子オルガン等に代表される「加算方式」
  3. FM音源に代表される「乗算方式」
  4. サンプラーに代表される「サンプリング方式」
  5. 最近のDTM音源等に代表される「複合方式」

これらの基本機能をベースに音作りをします。

各機能の効果と使用方法

音の元となる電子音を発生させ、電圧の高低によって音程を作ります。代表的な波形には「正弦波、矩形波、非対称矩形波、三角波、鋸歯状波」などがあります。

更に、フィルターには3つの種類があります。

  1. Low Pass Filter:低い周波数帯を通すフィルターで、フィルターレベルを上げていくと、高い周波数帯が徐々にカットされていきます。一般的にフィルターと言えばこのLPFです。
  2. High Pass Filter:高い周波数帯を通すフィルターで、フィルターレベルを上げていくと、低い周波数帯が徐々にカットされていきます。
  3. Band Pass Filter:特定範囲の周波数帯を通すフィルターで、フィルターレベルを変化させていくと変化させた近辺の周波数帯がカットされます。

この機能に加えVCAをコントロールして作った音のレベルを増幅(ボリューム調整)し、音を出力します。

音の余韻と特殊効果の作り方

EGという機能には以下の4つの効果があります。

  1. Attack Time: 鍵盤が押されてから最大音量に達するまでの時間を決定します
  2. Decay Time:最大音量からサスティンレベルに達するまでの時間を決定します。
  3. Sustain Level:音の持続部分の音量レベルを決定します。
  4. Relese Time: 鍵盤が離されてから音が消えるまでの時間を決定します。

このような方式のEGを一般的にADSR方式のEGといい、主にストリングスやシンセパッドの音作りに使用します。

更にフリケンシーのノブをコントロールするとウワやビブラートの効果を得ることが可能です。

フリケンシーの調整方法と効果は以下の通りです。

  1. VCOにかけた場合:ビブラート効果
  2. VCFにかけた場合:ワウ効果
  3. VCAにかけた場合:トレモロ効果

これらの機能を調整することで大半のシンセ・サウンドは作ることが可能ですが、1つ例外があります。それはオルガン・サウンドです。

ハモンドオルガンなどはこれらの方式プラス加算方式を使用して作っていきます。

FL STUDIO Harmless 加算方式での音作り

ここではオルガンサウンドの作り方を解説していきますが、そのためには加算方式を理解する必要があります。

加算方式とは

オルガンの音作りには以下の基礎知識を理解する必要があります。

オルガンの原理

オルガンは音程(周波数)の異なる正弦波を組み合わせて(加算して)音を作っています。

空気式のオルガンの場合、リードに空気を送ることで正弦波を作り出し、電子オルガンの場合、正弦波を電気的に作り出しています。

倍音について

例えば、ピアノを例に挙げた場合、音程A4=ラ(440Hz)を1音鳴らしたとすると、聴感上はラの音に聞こえますが、実際に含まれている音の成分は1種類だけではありません。

基音は440Hzだから第一倍音は880Hz、第二倍音は1320Hzと基音に関係する成分がそれぞれ異なるレベルで同時に鳴っています。それが「倍音」と呼ばれるもので、その複雑な絡みがいわゆる音色を作り出しています。

フーリエ合成

周波数の異なる複数の正弦波を組み合せ(加算して)波形を作り上げる方法で、倍音加算合成とも言われています。ソフトシンセ以外ですと「CMI」というモデルに、この機能が付いています。

逆フーリエ合成

これはサンプリングなどで録ったPCM音を正弦波での合成に置き換えて分析し、最終的に倍音合成音を作り上げる方法で「カーツェル」などに使われた方式です。

これらの機能を駆使し、更に耳を使ってイメージする音に近付けていくことが必要なのでオルガン・サウンドを作るのは非常に高度な技でもあります。

しかし、工場出荷時のプリセット・サウンドが非常にクオリティーが高いので、個人的にオルガン・サウンドはデフォルトのまま使用することをおすすめします。

更にHarmlessを使うには乗算方式も理解する必要がありますので、乗算方式について解説していきます。

FL STUDIO Harmless 乗算方式について

乗算方式というの難しく聞こえると思いますが、これは「FM音源」のことです。

FM音源の特徴と原理

FMとはラジオのAM、FMと全く同じ意味で、FM=Frequency Modulation(周波数変調)、ちなみにAM=Amplitude Modulation(振幅変調)の略です。

この場合の周波数変調はある音に別の音を影響、作用させ元の音に変化をつけると理解すると良いと思います。つまり、周波数変調とはある音のピッチ(周波数)を別の音で動かす技術のことです。

FM音源の大きな特徴(メリット)は、楽器音の特徴であるピッチ、音色、音量の3要素を一括してコントロールできることにあります。

そして以下の5つの機能に分かれています。

オペレーター

FM音源の基本音源で1個のオペレーターにはそれぞれ1個の正弦波が記憶(記録)されています。

余談ですがYAMAHAの名機「DX7」の場合このオペレーターを6個持ち、一昔前の携帯電話のFM音源は2個のオペレーターを持っていました。(携帯電話もシンセの同じ回路を持っていました)

このオペレーターの数が多い程、複雑な音色が作ることが可能です。

アルゴリズム

複数のオペレーターの組み合せのことです。音作りの仕組みの名称なので音に影響する効果はありません。

キャリアとモジュレーター

個々のオペレーターは、アルゴリズムの違いによりキャリアとモジュレーターに分かれています。

モジュレーターは主に出力される音の音色を作り、キャリアは主に出力される音の音程をコントロールします。

デジタルEG

個々のオペレーターにはそれぞれ1個のEGが付いていて、キャリアに対してのEGは音量の時間的変化をコントロールし、モジュレーターに対してのEGは音色の時間的変化をコントロールします。

アナログシンセのADSR方式のEGとは異なり、デジタルEGはレイト(レベル変化速度)、レベル(各ポイントのレベル)によってカーブを決めていきます。

このデジタルEGのメリットはADSR方式のよりカーブのセッティングパターンが格段に増えたことです。

PD音源

PD音源はカシオが独自に開発した音源で、PDとはPhase Distortionの意味です。

原理はほぼFM音源と同様なのですが、FM音源は元の波形がサイン波であるのに対して、PD音源はコサイン波が元波形です。

まとめ

FL STUIDO Harmlessは解説してきた通り複雑な構造になっていますので、アナログ回路とデジタル回路を理解しないと使いこなすことが(特に音作りは)難しいシンセです。

冒頭にも書きましたが、プリセットの音色をそのまま使用するのがおすすめです。音作りには非常に複雑な専門知識が必要になります。

しかし、今回解説した方式を理解すれば幅広い音作りが可能になりますので、1度に全て覚ようとせず、この記事を参考してHarmlessを実際に操作しながら音作りをしてみて下さい。

今回の記事をHarmlessを使用する際に参考にしてみて下さい。