ご存知の方も多いと思いますが、ピアノにはグランドピアノとアップライトピアノと電子ピアノの3種類があります。
この3種類は、どれもピアノに変わりはありませんが音も演奏性も全く異なる楽器です。
今回はグランドピアノとアップライトピアノと電子ピアノの構造や音の違いを紹介しながら、それぞれの特徴について解説していきます。
まずは、アップライトピアノとグランドピアノと電子ピアノの定義から解説します。
アップライトピアノとグランドピアノと電子ピアノの定義
グランドピアノ、アップライトピアノ、電子ピアノに共通することは鍵盤を叩いて音を鳴らす楽器という部分です。
厳密にはグランドピアノとアップライトピアノは打楽器、電子ピアノは電子楽器です。
現代の(19世紀半ば以降)グランドピアノとアップライトピアノは「モダンピアノ(後程詳しく解説します)」、それ以前のピアノは「フォルテピアノ」、「ハンマークラヴィーア」、「ハンマーフリューゲル」とよ呼ばれています。
グランドピアノとアップライトピアノは鍵盤を叩くことで、本体内部のハンマーが弦を叩いて音を鳴らしますが、電子ピアノは本体内部にハンマーも弦もありません。
電子ピアノは鍵盤を押すことで、内部の音源が反応し音を鳴らしています。つまり、キーボードと同じ構造になっています。キーボードと異なる部分は鍵盤の重さと楽器本体の見た目です。
キーボードの鍵盤は非常に軽いものが多いですが、電子ピアノの鍵盤は本物のピアノと限りなく同じ重さの鍵盤になってます。こうすることで、普段は電子ピアノで練習していて、ピアノ教室や発表会などでグランドピアノやアップライトピアノを弾いても、違和感がなく演奏することが可能です。
続いてはアップライトピアノとグランドピアノと電子ピアノの違いについて解説します。
アップライトピアノとグランドピアノと電子ピアノの違い
まずは先程、書いた「モダンピアノ」についてですが、モダンピアノは2種類に分かれており、それがグランドピアノとアップライトピアノです。
グランドピアノ
音と構造
グランドピアノは鍵盤を叩くと、テコの原理でハンマーを上方向に跳ね上げる構造になっています。そのため力が一方向に伝わるので、アップライトピアノに比べて打弦エネルギーが2〜3倍となり音の強弱が広く取れます。
ハンマーが自重で戻るため完全に戻らなくても次の打弦ができるため、素早い連打やトリルが可能です。
種類と価格
グランドピアノには3種類の大きさのモデルがあり大きい方から「コンサートグランド」、「パーラーグランド」、「ベビーグランド」となっています。
「コンサートグランド」はコンサートホールでクラシックの演奏会で使用される最も高価なグランドピアノです。
「コンサートグランド」よりも小型の「パーラーグランド」や「ベビーグランド」は学校の音楽室や体育館、小規模なホール、家庭用として用いられることが多いです。
グランドピアノはモデルにより価格が異なりますが、アップライトピアノや電子ピアノよりも高価で相場は200万円ほどです。
アップライトピアノ
音と構造
鍵盤を叩いた時に動くハンマーの方向が、同一方向ではないので力と時間のロスが生じます。
ダイナミックレンジの幅もグランドピアノに比べて狭くなります。連打性能は、ハンマーを戻すのにバネの力を借りるため、素早い連打をするには限界があります。
※グランドピアノは1秒間に13~14回の連打が可能なのに対してアップライトピアノは6~7回と半分程度です。
グランドピアノとは形が全く異なり小型なので家庭用として用いられることが多いです。
価格
アップライトピアノはグランドピアノの相場が200万円なのに対し70万円と比較的、安価であるのも特徴です。
電子ピアノ
電子ピアノはグランドピアノやアップライトピアノとは全く異なる楽器です。
音と構造
鍵盤を叩くことで、内蔵された音源が反応してスピーカーから音が出力される構造です。
簡単に説明すると多彩な音色が鳴らせるシンセサイザー(キーボード)のピアノの音のみがなるものです。シンセサイザーとの大きな違いは、アップライトピアノのようなデザインと鍵盤のタッチにあります。
全く同じではありませんが本物のピアノに限りなく近い鍵盤タッチ(重さ)になっています。
時代による音の違い
電子ピアノは製造された時代により音が全く異なります。これは内蔵音源(ピアノの音を鳴らす機械)が時代と共に進化したためです。
電子ピアノが開発された1929年当時に内蔵していた音源に関しては詳細が不明ですが、1980年代に入るとシンセサイザーに内蔵されたことでも有名な「PCM音源」や「FM音源」が電子ピアノにも内蔵されます。この音源は人気シンセザイザー「YAMAHA DX-7」の音でもあります。
しかし、「PCM音源」や「FM音源」は本物のピアノには程遠い音です。低音が出なく金属的な高音が特徴です。この音は古き良きファンクやソウル・ミュージックの音で、もっと分かり易く説明するとゲームの「ファミコン」のBGMの音でもあります。
その後、内蔵音源の進化し「物理モデル音源」が開発され限りなく本物のピアノの音に近い音になりました。
モデルによってはグランドピアノやアップライトピアノ、ヴィンテージのエレクトリックピアノなどがプリセットされており、好みの音色を選ぶことが可能です。
価格
グランドピアノやアップライトピアノよりも遥かに安価で、安いものですと10万円以内で購入することが可能です。
しかし、電子ピアノも意外と大きい楽器なので設置スペースの問題があります。
電子ピアノに代用できるシンセサイザー
KORGの「トライトン」は非常にリアルなピアノの音が出ることでも有名です。個人的には低価格の電子ピアノよりもリアルなサウンドだと思います。
鍵盤数もピアノと同じ88鍵のモデルがありますし、2000年頃に発売された「トライトン・プロ」は中古品でしか入手できませんが、3万円程度入手が可能です。
電子ピアノを始めたいけれど設置スペースが無い方や、できるだけ費用をかけずに電子ピアノを弾いてみたいという初心者の方に「トライトン」は非常におすすめのシンセサイザーです。
まとめ
グランドピアノ、アップライトピアノ、電子ピアノについて解説してきましたが、この3つは似ているようで全く違う楽器でもあります。
グランドピアノとアップライトピアノは形や音よりも、1秒間の連打回数の違いが演奏に大きく影響します。
そのためアップライトピアノでは原曲通りに演奏することが非常に困難な楽曲も出てくると思います。リストの「パガニーニ練習曲」や「超絶技巧練習曲」など音数の多い楽曲はアップライトピアノで原曲通りに演奏することは難しいかもしれません。
電子ピアノは本物のピアノと全く同じ音は鳴りませんが、様々な音色が選べるのでクラシックにもジャズやソウルなどにも対応可能なので、グランドピアノとアップライトピアノよりも楽しんで演奏できる楽器だと思います。
- グランドピアノとアップライトピアノは形状や音の他に演奏性(連打可能回数)が異なる。
- グランドピアノの相場が200万円に対しアップライトピアノは70万円と半分程度。
- 電子ピアノ鍵盤を押して内部音源を操作する、シンセサイザーと全く同じ構造の楽器なので様々な音色が選べてクラシック以外のジャンルにも対応可能。
- ピアノ、電子ピアノを設置するスペースがない方にはKORG「トライトン」がおすすめ。
以上がグランドピアノ、アップライトピアノ、電子ピアノの違いですので参考にしてみて下さい。