マーシャルのDSLシリーズは非常にクオリティーの高いギターアンプでしたが、2017年に生産完了になってしまいました。しかし、最近になり新しいモデル「DSL1C」を加え再リリースされました。
今回は自宅練習に最適な「DSL1C」のレビューをしていきますが、1つめのポイントとなるのは「スタックアンプのサウンドを1Wの小型アンプで、どこまで再現できているか?」です。
そして、2つめのポイントはマーシャルのオフィシャルHPのコメントに「JCM2000に近いサウンドを鳴らすために再設計」とありますが、これを「どこまで再設計しているのか?」になります。(JCM2000は欠点が多いアンプです)
まずは、DSL1Cの仕様とサウンドから始めます。
ギターアンプ Marshall DSL1Cの仕様とサウンド
DSL1Cは写真の通りコンボ・アンプになります。まずは、このアンプの仕様を見ていきたいと思います。
DSL1Cの仕様
- タイプ:コンボ
- 実効出力:1W/0.1W
- チャンネル数:2(クラシック・ゲイン/ウルトラ・ゲイン)
- コントロール:ボリューム(クラシック・ゲイン)、チャンネル・セレクト、ゲイン(ウルトラ・ゲイン)ボリューム(ウルトラ・ゲイン)、トーン・シフト、3バンドEQ(トレブル、ミドル、ベース)、リバーブ、ロー・パワー
- プリ管:2 x ECC83
- パワー管:1 x ECC82
- スピーカー:1×8″ Celestion G8C-15″Eight-15″ (15w) 16Ω
- フットスイッチ:付属
- サイズ(cm):36x34x21.5 (W x H x D)
- 重量(kg):7.9
- リアルなアンプサウンドを再現するエミュレート回路付きヘッドフォン出力と、0.1Wまで出力を下げるパワーリダクション機能を搭載
ポイントは出力が1Wという点と、2種類のゲイン・チャンネル(クラシック・ゲインとウルトラ・ゲイン)を搭載することで、ヴィンテージ・サウンドから現代風のハイゲイン・サウンドまで可能にしている点です。
このアンプが発売された時に、1番気になったのはJCM2000のサウンドを再現するウルトラ・ゲインについてです。正直、何故に欠点だらけのJCM2000のサウンドを再現しようとしたのかが理解できませんでした。
JCM2000はコントロール・ノブの可変幅が非常に狭く、音作りの際に微調整ができませんし、言葉で表現するのがとても難しいですが物凄くクセのあるハイ(高音)が鳴ります。
これらの欠点まで再現されているとなると、ウルトラ・ゲインは個人的には不要なチャンネルになってしまいます。
では、実際にDSL1Cのサウンドを聴いてみましょう。
DSL1Cのサウンド
使用しているギターがハムバッカー・ピックアップをマウントしたSG(恐らくマホガニー・ボディー)をアンプ直で弾いていますので、それを踏まえて解説していきます。(EQはフラットに設定)
クラシック・ゲイン
ゲインを限りなく絞ったクリーンはマーシャルのコンボ・アンプによくあるサウンドです。クラシックな雰囲気は殆ど無く、最近のマーシャルのクリーン・サウンドといった印象です。
クランチをフルアップにすると古き良きマーシャル・サウンド(クリーンと歪みが同時に鳴っているようなサウンド)になります。
しかし、これだけでは物足りないのでブースターを使用すると良いと思います。
ウルトラ・ゲイン
こちらは良くも悪くもJCM2000のサウンドを再現しています。
ローとミッドの抜けの悪さと、クセのあるハイがやはり気になります。
もしも、このチャンネルを使用する場合はEQやゲインを控えめにセッティングして、EQ搭載のエフェクターを繋ぎ、バランスを取りながら音作りをすると良いと思います。
続いてはDSL1Cを実際に弾いてみた感想を書いていこうと思います。
ギターアンプ Marshall DSL1C徹底レビュー
DSL1Cのレビューに使用したギターと機材は以下の通りです。
- フェンダー・ストラトキャスター(リア:ディマジオ HS-3, フロント:ディマジオ YJM)
- フェンダー・ストラトキャスター(フロント、センター、リア:カスタム69)
- Ibanez TS-9
- Vemuram Jan Ray
HS-3とYJMをマウントしたストラトの場合
アンプ直でクラシック・ゲインを使用した場合、ゲインをフルアップでも物足りなさを感じました。(物足りなさはマウントしているHS-3とYJMがローパワーなことが原因です)しかし、サウンドはヴィンテージ・マーシャル風でとても良いと思います。
不足しているゲインをIbanez TS-9でブースト(レベルがフル、ゲインがゼロ)すると、サウンドにハリとサスティンが出て非常に素晴らしいサウンドになりました。
ウルトラ・ゲインに関してはアンプのEQや機材のセッティングを色々と試してみましたが、JCM2000の欠点を補正することはできませんでした。
クラシック・ゲインのような音のハリや芯も無くなり、本来のマーシャル・アンプの良さが全く出ていないように感じます。
歪みを得るためにウルトラ・ゲインを使用するのであれば、クラシック・ゲインをブーストした方が良いと思います。
こうすることでゲインは稼げますし、音のハリや芯を失わずにウルトラ・ゲイン並みのパワフルなサウンドを鳴らすことができます。
カスタム69をマウントしたストラトの場合
カスタム69は、ハムキャンセル構造でもなく特にサウンドが個性的なわけでもないノーマルなピックアップです。
このピックアップをマウントしたギターで弾いてみたところ、アンプ直ですとクリーン/クランチともにサウンドは非常に素晴らしいのですが、音量と太さが足りませんでした。
Ibanez TS-9でブーストすると王道のロック・サウンンド、Vemuram Jan Rayでブーストするとダンブル・アンプのようなサウンドになりました。
ダンブル・アンプのようなサウンドになるのは、Vemuram Jan Rayの影響が大きいとは思いますが、レコーディングでも使用できるほどのサウンドです。
ウルトラ・ゲインに関しては、やはりこちらのギターでも上手く音作りができず、ハムキャンセル構造ではないのでノイズもかなり多いです。
- DSL1Cはクリーン、クランチ、ハイゲインの全てのサウンドをクラシック・ゲインのチャンネルで作るのがコツ
- オーバードライブまたはクリーン・ブースターを併用する
- ウルトラ・ゲインは個人的には不要なチャンネル
まとめ
DSL1Cを含めマーシャルが最も良く鳴るセッティングは、チューブ管をフルドライブさせることです。しかし「フルドライブ=アンプのボリュームを全開」にすることですので、自宅などでは(スタジオでも)なかなか難しいです。
このDSL1Cはワット数を1Wにすることで、チューブ管をフルドライブをさせても、それほど音量が上がらずに済みます。これこそがクラシック・ゲインで良いサウンドが鳴る要因です。
- DSL1Cはクラシック・ゲインをフルドライブさせると良いサウンドが鳴る
- フルドライブ+ブースターで更に増幅させると、ヴィンテージ・マーシャルに近いサウンドになる
- ウルトラ・ゲインは全て控えめのセッティングにして、エフェクターとバランスを取りながら音作りをするのがコツ
- ウルトラ・ゲインにはEQ搭載のエフェクターを使用する
DSL1Cを使用する際のポイントは以上になります。
是非、参考にしてみて下さい。