マルチエフェクター/アンプシミュレーターの代表格であるLINE6のPODシリーズですが、このPOD X3はギター以外の楽器用の(ボーカル、ベース、キーボード)エフェクターやアンプシミュレーターが内蔵されています。
それまでのPODはギター用とベース用と分かれており、ボーカル用とキーボード用はありませんでした。
POD X3のレビューと、内蔵されているアンプ・モデルの解説をしていきたいと思います。
まずはLINE6 POD X3のレビューから始めます。
目次
LINE6 POD X3のレビュー
POD X3の主な特長は豊富なアンプ・モデルとエフェクトです。
ヴィンテージ・アンプから最近のアンプまで、ほぼモデリングされていますし、エフェクターに関しては入手困難な機種(ユニバイブやテープエコー)も内蔵されています。
このように沢山のアンプやエフェクターがモデリングされていますが、元々はアナログ回路のアンプやエフェクターを、デジタル回路でサウンドをシュミレートしたものなので完全再現はできません。
ポイントとなるのは「どこまで再現できているのか?」になります。
PODユーザーでしたので、POD X3が発売されすぐに購入しましたが、その時の率直な感想は以下の通りです。
- アンプ、エフェクターともにサウンドがハイファイ過ぎる
- モデリングしている機材の再現度は高い方
- 音作りの幅が広い
- ギター・プレイのニュアンスを出すのが難しい(良く言えば誤魔化しが効くので上手く聴こえる)
といった感じでした。
※当時、メインで使用していた1つ前のモデル「POD 2」と比べた感想です。
ハイファイ・サウンドをどう扱うか
現在は「POD HD」に進化して、更にサウンドがハイファイになりましたので今聴くとPOD X3のサウンドは、そこまでハイファイには聴こえませんが、やはりデジタル特有のハイファイ・サウンドをどう扱うかが課題になります。
この問題を解決するために試行錯誤した結果、ギターとPOD X3の間に電源をオフにしたコンパクト・エフェクター(TS-9)を接続しました。
電源オフのエフェクターを1つ挟み、そこでサウンドを劣化させることで、ハイファイ特有のクセが取れます。
エフェクターについて
内蔵されているエフェクターですが、モデリングしているエフェクターの特長を掴んでいてクオリティーは高いと思います。勿論、デジタル回路で再現したものなので100%再現はできていませんが、かなり本物に近いサウンドです。
アンプ・モデルやエフェクターは実際に鳴っている音ではなく、録音後の処理で更にリアルなサウンドになります。
あくまでもPOD X3は録音用ですので、実際に鳴っているサウンドを録音後に、どのような音質処理を行い理想のサウンドに仕上げるかが重要です。
録音後の音質処理を見越した音作りをするのがポイントだと思います。
プレイのミュアンスが出しにくい
全てのPODシリーズに言えることですが、ギタープレイの繊細なタッチを出すのが非常に難しいです。
ピックが弦に当たる小さなアタック音や、ベンドやヴィブラートをかけた時に弦がフレットに擦れる小さな摩擦音などの細かいプレイ・ニュアンスがストレートに出ません。
PODを100%使いこなすには「PODを鳴らしきるギターの弾き方」を身に付ける必要があります。
続いてはPOD X3のアンプモデルのレビューです。
LINE6 POD X3 ギターアンプモデルのレビュー
POD X3には人気アンプをモデリングしたアンプシミュレーターが内蔵されています。そのアンプモデルを1つずつレビューしていきます
アンプ名 | レビュー |
Agro | アグレッシヴなサウンドのハイゲイン・アンプ。ミドルのコントロールでサウンドが七変化します。ミドルを回すだけで音作りが可能です。 |
BIG BOTTOM | 重低音が鳴りつつ音と抜けも良いアンプです。メサブギーのレクチの個性がしっかり出ている印象です。 |
CHEMICAL X | モデリングしているアンプは不明です。クリーンからハイゲインまで幅広く出るアンプです。 |
CHUNK CHUNK | ハイゲインでタイトな低音が出ます。ミッド、ハイをそれなり回しても耳障りなハイが出ません。 |
Insane | 過激なハイゲイン・アンプです。ボグナー・アンプのようなサウンドですが、デジタル色が強く独特なサウンドです。 |
Lunatic | ミッド、ハイが前面にでるハイゲイン・アンプです。濁りの無いサウンドなので音抜けに拘る方におすすめです。 |
Modern Hi GAIN | ソルダーノのX88Rをモデリングしています。PODシリーズはソルダーノ・アンプの再現度が高いです。オーバードライブ系のサウンドです。 |
Purge | マーシャルのJMP-1をモデリングしています。JMP-1とは程遠いサウンドで単体では使えないので、ストンプと併用すると良いと思います。 |
SPINAL PUPPET | クリ-ン、クランチ、ハイゲインとオールマイティーに使えるアンプです。とても扱い易いです。 |
TREPLATE | 初代POD 、POD2にも内蔵されていたレクチの復刻版です。レクチをモデリングしているので音抜けは悪いです。ストンプのチューブ・スクリーマーと併用すると良いと思います。 |
アンプ・シュミレーターもエフェクト同様に、録音後の音質処理を見越したセッティングをすることがポイントです。
最終的に音源にした時のサウンドを想定して音作りをすると上手く使えます。
LINE6 POD X3 その他のアンプモデルのレビュー
POD X3にはベースアンプ(マーシャル、アンペグ、ギャリアン・クルーガー、トレース・エリオットなど)やキーボード用のアンプも内蔵されています。
ベースアンプ
どのベースアンプのモデルにも共通するのは「音のレスポンスの遅さ」です。
弦を弾いてモニターから音が出力されるまでに若干の(個人的にはかなり気になるレベル)タイムラグがあります。
正直、このタイムラグが気になりPOD X3でベースアンプを使用することは殆どありませんでした。
レスポンスに関しては設定でどうすることもできませんので、ベースで使用する場合はベース用のPODがおすすめです。
キーボードアンプ
キーボード用のアンプを使用してまず気付いたことは音の劣化です。
EQをフラットにセッティングしてクセの無い音作りをしてもハイ落ち(高音が極端に削れる)してしまい、音抜けのしないこもったサウンドになりました。
キーボードに関してはDAWソフトに直接繋いだ方が良いと思います。
キーボード用のエフェクトも使用すると極端に音が痩せてしまい、楽器本来のサウンドを損なう感じでした。
LINE6 POD X3をスタジオで鳴らした結果
POD X3をスタジオに持ち込みマーシャルJCM2000(ギターアンプ)と、ミキサー経由でモニタースピーカーから鳴らす実験をしたことがあります。
ギターアンプから鳴らした結果
まず、ギターアンプから鳴らすのには(当然ですが)向いていません。POD X3の良さもアンプの良さも出すことができませんでした。
アンプ・シュミレーターをオフにしてエフェクトのみでの使用も試しましたが、決して良いサウンドを作ることはできませんでした。
モニタースピーカーから鳴らした結果
「ギター」→「ミキサー」→「モニタースピーカー」と接続して鳴らしたところ、ギターアンプから鳴らすよりも上手くいきました。PODの良さを十分に引き出せたと思います。
しかし、この接続方法でライブをするとなると自分の立ち位置よりも前で音が鳴るので、弾いている音をモニターするのが難しくなります。
PODのサウンドでリハを使用したい方には、この接続方法でモニタースピーカーから出力させると良いと思います。
まとめ
POD X3のレビューのまとめに入ろうと思います。
- ハイファイ過ぎるサウンドはギターとPODの間に電源をオフにしたコンパクト・エフェクターを接続し解決
- PODでニュアンスを出すギタープレイを身に付ける
- 録音後の音質処理を見越した音作りをする
- ベースアンプは音のレスポンスが遅い
- キーボードアンプは音痩せと劣化が激しい
以上のようなポイントをPOD X3を使用する際の参考にしてみてください。