SytrusはFL Studioに収録されているソフトシンセのプラグインです。
SytrusはFM音源のシンセをベースにしていますので、プリセットのサウンドをそのまま使用する場合は問題はありませんが、音作りをするとなると非常に難しいプラグインです。
「6つのオペレーターの掛け合わせが可能な音源」なので、上手く音作りが出来ればYAMAHAの名機DX-7の音色を再現することも出来ます。
今回はSytrusの使い方や音作りの方法を初心者の方にも分かり易く解説していきますが、Sytrus以外のアナログシンセを使用している方にも必見の内容です。
まずは、FM音源で音作りをするための基礎知識から始めます。
FL Studio Sytrusで音作りをするための基礎知識
Sytrusで音作りをするには、以下の4つを理解する必要があります。
- オペレータとは何か?
- モジュレーション・マトリクスでのルーティング、オシレーター、モジュレーター、フィルター、エフェクター、出力の繋ぎ方
- オペレーターにフィルターを適用する方法
- FM音源と減算式音源の違い
FM音源は単純な波形から始めて、フィルタやエンベロープを適用し、最終的な音に「エフェクト」を与えていく手順で音作りを行います。(減算式シンセサイザーでは、画面上に並んだつまみを適当に操作して音が変化していくのが分かり易いのが特長です)
この音作りの方法を見るとSytrusはアナログシンセと全く同じ構造になっています。つまりアナログシンセのソフトシンセ版です。
Sytrusを使うにはアナログシンセの仕組みを理解する必要があります。
アナログシンセの音源回路
アナログシンセが音声信号を担当する機能は以下の3つがあります。
VCO
これはボルテージコントロールドオシレータの略で、基本波形を作る発振器になっています。
アナログシンセサイザーでは、のこぎり波・矩形波・パルス波・三角波などの倍音が豊富な波形がメインに使用されており、倍音を含まない正弦波は補助的に使われます。
VCF
ボルテージコントロールドフィルターは波形を加工する回路です。VCOで作った音をVCFという回路を使用して加工して仕上げていきます。
VCA
ボルテージコントロールドアンプリファイアーは音量を制御する回路です。この回路を使用して最終的な音量を決めます。
これらの3つの機能を一旦まとめてみます。、
- VCO回路で音声信号の基本波形を作る。
- VCF回路で波形の倍音加工をする。
- VCA回路で音量を決める。
基本的な音作りは、この流れになります。
音作りの際に重要なのは、3つの機能が全て電圧(ボルテージ)で制御(コントロール)出来るようになっていることです。
これにより制御信号を発信する回路から任意の電圧を加えて音程・音色・音量を制御する事が可能になります。
制御信号担当回路
VCO、VCF、VCAの機能を制御する回路について解説していきます。
機能制御する3つの回路は以下の通りです。
エンベローブジェネレーター
Attack(立ち上がり)、Decay(減衰)、Sustain(減衰後の保持)、Release(余韻)の4つのパラメータにより、時間的に変化する電圧を発生する回路です。
この回路でVCAを制御を行い音量の時間的変化を制御したり、VCOやVCFを制御して音程や音色の時間的変化を作ります。
LFO
ローフリケンシー・オシレータの略で、低い周波数を制御信号として音声信号の制御回路に送り、周期的な変化を与えるものです。例えば、この信号をVCOに送ればビブラートを生み出すことができます。
LFOはアナログシンセだけではなくデジタルシンセやギター用のマルチエフェクター/アンプシュミレーターにも搭載されていますので、使い方を覚えておくことをおすすめします。
シーケンサー
演奏情報を入力する機能で、所謂MIDIの打ち込み機能です。
演奏情報となる電圧をVCOとVCFに、演奏のオン/オフ信号をエンベロープ・ジェネレータに送ります。
この電圧を受けたVCOは信号が示した音程を発信し、VCFは電圧で指定された音質の加工を行います。
また、オンまたはオフ信号を受けたエンベロープ・ジェネレーターは、そのタイミングにそってパラメータを起動し、設定された時間的変化をVCAに送って出力を制御します。
これらを駆使して音の土台を作っていきます。
続いては作った音に音響を合成するためのオプション機能を解説します。
FL Studio Sytrus 音響を合成させるオプション機能
オプション機能は別名「変調機能」とも呼ばれており6つの機能があります。
1.ポルタメント
入力された電圧が変化する際、その変化を連続的なものにする機能です。
一般的には、キーボードから発した電圧をVCOに送る前に、この機能を経由させて音程が滑らかに変化する様に設定することが多いです。
2.ノイズジェネレーター
ホワイトノイズやピンクノイズを発生させる回路です。機種によってはオシレータの1波形として提供されることもあります。
3.サンプル&ホールド
任意信号をLFOで周期サンプリングして、ランダム波形を生成する機能です。現在ではLFOの1波形として提供されていることが多いです。
4.リングモジュレーター
ギターのマルチ・エフェクター/アンプシュミレーターにも内蔵されている空間系エフェクトです。
2つの音声信号を入力して、その周波数の和と差を作り出します。鐘の音のような非整数次高調波を生成する目的で使用されます。
5.クロスモジュレーション
オシレータ出力で別のオシレータを周波数変調し、FMアルゴリズムによる豊富に高調波を含んだ波形を生成する機能です。
6.オシレータ・シンク
複数のオシレータの周波数の同期機能で、周期波形の強制リセットにより音色変化を伴うので、音作りに積極活用できます。
モジュラー・シンセサイザーの場合は、パッチ・ケーブルにより各機能ブロックの任意接続が可能なので、より柔軟に音声信号に変調をかけることが可能です。
これら6つは例えるなら「作った音に色付けするエフェクト機能」のようなものです。
FL Studio Sytrus 制御の規格
アナログシンセサイザーは、大別して2種類の情報を電圧として送受信する事で各機能を制御しています。
1.GATE
この機能は信号のオン/オフの情報。音の長さを制御しています。ギター/ベースのエフェクター「ノイズゲート」にも搭載されている機能です。
GATEを深くかけると音にサスティンが無くなり音の切れ際が不自然になります。
2.CV
コントロールド・ボルテージの略。音程を初め各機能の値を制御します。
まとめ
FL STUDIO Sytrusはノブやフェーダーが沢山付いているので複雑に見えるかもしれませんが、主な機能は解説してきたような役割です。
デジタルシンセに比べると、複雑ですが使い方や音作りのポイントは「各機能の効果をしっかり理解すること」と「アナログシンセを使用しているアーティストの音楽をよく聴きサウンドを勉強」することです。
目的とする音のイメージをしっかり持つことも重要です。そのイメージ無しに音作りをすると多くの場合、失敗してしまいますのでイメージをしっかり持って音作りをしてみて下さい。
Sytrusはプリセット状態でもクオリティーの高いサウンドが内蔵されているので、音作りが苦手な方はプリセット・サウンドを使用するのも良いと思います。
この記事をSytrusの使い方や音作りの参考にしてみて下さい。