楽器の録音や録音後のEQ処理は、作品の完成度を左右する重要な作業です。このEQ処理を上手く行わないと、折角の楽曲が台無しになりかねません。
そして、EQ処理には正解がありません。各ジャンルによりEQ処理方法は様々ですし、どのような処理をするかは好みにより全く変わります。
今回のテーマはProtoolsを使用したEQ処理です。実際に音源を聴きながら、EQの機能の解説や使い方や調整方法を、初心者にも分かり易く解説していきます
まずはEQの基礎知識についてから始めます。
EQの基礎知識
EQ(イコライザー)とは低音から高音までの各音域の周波数の調整を行うものです。
EQ | 音域 |
ベース | 低音域 |
ミドル | 高音域 |
トレブル | 高音域 |
プレゼンス | 超高音域 |
EQのツマミは表のような音域の周波数を調整します。超高音域に関しては非常に聴き取りにくいのですが、これはピンポイントでかけるというよりは、楽曲全体を雰囲気を明るい音質にするものと考えて下さい。
EQは楽器の音作りや、録音後の全体の音質調整の際に使用されます。どのように使用するのかは人それぞれ全く異なります。
そして、EQにはパッシブEQとダイナミックEQの2つがありあます。
ダイナミックEQとパッシブEQの違い
パッシブEQ
これは所謂、普通のイコライザーのことです。パッシブは任意で設定した周波数のカット/ブーストをするだけのものです。別名パラメトリックEQとも呼びます。
アクティブEQ
こちらはダイナミックEQと呼ばれているものです。ダイナミックEQは任意で設定した周波数にスレッショルドで管理し入力量をコントロールすることができます。
続いてはProtools EQの使い方について解説していきます。
ProtoolsEQの使い方
既に解説しました通り、ProtoolsにはパッシブEQとダイナミックEQの機能があります。まずは、この2つのEQの基本的な使い方から解説をしていきたいと思います。
パッシブEQの使い方
ProtoolsのパッシブEQな写真のようなものになります。主に「FREQ」「Q」「GAIN」と「カーブタイプ」の各機能があります。
FREQ
FREQは「Frequency」の略で、これは「周波数」を意味します。この機能は調整したい周波数を設定できるツマミです。
Q
「Q」の設定を調整すると、設定した「FREQ」の上下幅を変更することができます。「Q」は「QualityFactor」のことで、電子工学や電気工学でよく用いられる言葉がそのまま使用されています。「
GAIN
「GAIN」の値を変更することで、「FREQ」と「Q」で設定した数値を上下できます。
カーブタイプ
これは主に2つのタイプがあります。
1つは、FREQやQで設定した周波数よりも上(または下)の帯域を上下するときに使うシェルビングタイプ。
もう1つは、FREQやQで設定した周波数を上げたり下げたりするときに使うピーキングタイプです。
パッシブEQの効果的な使い方
EQの機能の理解はしたものの、特に初心者の方はどのように使ったらいいのか分からないかと思います。ここでは初心者にも簡単に出来る、EQの簡単な使い方を解説していきます。
EQをかけるポイントを決める
まずは、ピーキングタイプで『Q』を狭くして動かしていきます。そして、GAINをある程度あげた状態で、FREQを動かせば耳障りなポイントが見付かると思います。
そのポイントが見つかったら、FREQとQの設定はそのままにし、GAINだけを下げていきます。下げすぎると、音が薄くなってしまうこともあるので、音を聴きながら調整していきます。
これが簡単なEQの使い方です。慣れるまでは、EQをかけた状態とかけていない状態で、どのように変化しているのかを聴き比べながら操作するのが大切です。この作業はEQの特性や効果の勉強にもなるので、おすすめです。
ダイナミックEQの使い方
ダイナミックEQはスレッショルドでEQを管理するというものです。この機能はコンプレッサーにも似ています。
ダイナミックEQの機能を簡単に説明しますと、EQの特定の周波数のみに、コンプ的な音量変化を与えるのがダイナミックEQです。
ダイナミックEQの効果的な使い方
ダイナミックEQは4バンドのEQです。写真の下の方に「スレッショルド」のボタンが見えると思います。コンプレッサーに似た構造ですが、ダイナミックEQは特定の周波数を調整するのコンプレッサーのようなものです。
コンプレッサーとの違いは、コンプレッサーは音量を圧縮しているのに対して、ダイナミックEQは周波数のカット/ブーストの量を調整していることです。
この違いさえ分かってしまえばパッシブEQと操作方法は同じで、任意のポイントの周波数を調整するだけで様々な効果が得られます。
EQ処理の注意点
EQ処理の聴こえ方は、使用するヘッドホンやモニタースピーカーにより全く違います。
例えばヘッドホンをしてEQ処理をし、その後にモニタースピーカーで聴いてみると全く違う音になっていたということは、よくあります。ここがEQの処理で最も難しいことです。
初心者の方には少し難しいと思いますが、EQ処理の他にミックスダウンの時なども、こういった問題がよく起きます。
作品を最終的にどのような環境で聴くかを想定して、EQ処理をすることが大切です。この技術は何度もEQ処理を繰り返すことで、徐々に身に付いていきます。
またヘッドホンは音質にクセや方よりのない物を使い、モニタースピーカー本体のEQはフラットにして使うことをおすすめします。
まとめ
Protoolsに装備されている各種EQは非常にクオリティーの高いものです。使い方をマスターすれば、プロクオリティーの作品を作ることが可能です。
EQ処理をしやすくするために、各楽器のEQをフラットに設定して録音するという方法もありあます。録音の段階で楽器にEQをかけ、個性的なサウンドを作ってしまうと最終的なEQ処理が難しくなります。できるだけ楽器のEQ設定はフラットにすることをおすすめします。
そして、DAWソフトを使う方の誰もが経験することは、サウンドの方向性を見失うことです。出したいサウンドが最初は明確だったもののEQ処理を続けていくうちに、それを見失いゴールが見えなくなります。最終的に、どのようなサウンドを目指していたのかさえ分からなくなることも、よくあります。
長時間、EQ処理やミックスをしていると必ずこのようなことが起きますので、方向性を見失ったら一旦、作業はやめてリセットすることも大切です。
またEQ処理やミックスは本で勉強するよりも、音を聴いて勉強し実践を繰り返すようにしましょう。普段の音楽を聴く時にEQ処理やミックスに注意して聴くことをおすすめします。
- ヘッドホンやモニタースピーカーの設定に注意する
- EQ処理をしやすくするために楽器のEQはフラットにする
- EQ処理に注意しながら音楽を聴いて勉強する
- 目指すサウンドの方向性を見失ったら一旦、作業をやめてリセットする
EQは操作方法はとても簡単ですが、微調整が難しく僅かな設定でサウンドが全く違うものになります。何度も繰り返し、様々なEQ処理のバリエーションを身に付けるようにして下さい。
EQ処理は楽曲の完成度を左右する非常に大切な作業でもありますので、作曲や楽器の練習と同様に練習を積み重ねるようにして下さい。
今回の記事をEQ処理の参考にしてみて下さい。