ドラムのグルーヴ感というと、特に初心者の方にはピンとこないかもしれません。
グルーヴ感とは簡単に説明すると、演奏のノリのことです。ドラムに限らず全ての楽器に共通しているものですが、これはグルーヴ感というものを理解し、意識して聴かないと分かりにくいものです。
そして、グルーヴ感の出し方というものは教則本に載ることもなく、上手く出せるドラマーも決して多くはありませんので、どのように出せば良いのか分からない方も多いと思います。
今回は、個性的なグルーヴ感を出すドラマーを紹介しながら、グルーヴ感を出す叩き方を初心者にも分かり易く解説していきます。
まずは、グルーヴ感の基礎知識から始めます
ドラムグルーヴ感の基礎知識
グルーヴ感とは演奏から感じられるノリのことですので、聴くというよりも感じるものです。
シンプルな8ビートでも強弱も付けず、クリックとジャスト・タイミングで叩けば表情の無い機械的なノリになります。これは打ち込みドラムと同じです。
上手いドラマーは強弱はもちろん、クリックのジャスト・タイミングとは僅かにズラして叩きグルーヴ感を出しています。※適当にズラすわけではありません。
ジャスト・タイミングからズラして叩くには、まずはジャスト・タイミングで正確に叩けなければいけません。
ジャストで正確に叩けるように、クリックを使用して練習することをおすすめします。
続いては、個性的なグルーヴ感を出すドラマーの映像を見ながら、グルーヴ感の出し方の解説をしていきます。
グルーヴ感の出し方
この曲のドラミングは、初心者でも簡単に叩けるシンプルな8ビートです。しかし、良く聴くと3連のシャッフル・ビートのようなスイング感、クリックのジャストより僅かに遅れたバックビートです。
何故、このようなフィーリングが出せるのかと言いますと、まずリズムを「1・2・3・4」で取っていません。
1拍を3つに割って3連符で数えると、自然とリズムがスイングします。更に2拍目と4拍目のスネアが僅かに後ろにズレるので、独特のフィーリングが生まれます。
そして、全体的にドラムがバック・ビート(クリックのジャストより後ろにズレている)ですが、これは叩き方で出しているのではありません。
使用しているドラム・セットを見ると、各パーツが非常に大きいことが分かると思います。大口径のドラム・セットを使うと、叩いてから発音するまでに若干、タイムラグが生じます。このタイムラグが、このバックビートを作り出している要因です。
この曲もシンプルな8ビートですが、先程の動画の8ビートとは真逆で、軽快かつ前進するようなグルーヴ感があります。
この軽快さと前進するフィーリングは、ゴースト・ノートを巧みに使っていることから生まれます。
スネアを叩いた直後に、マーチなどで使うドラムロールをゴースト・ノートとして一瞬だけ入れることで、このグルーヴ感を出しています。
続いてはアップテンポの2バスを使用した定番のビートですが、この手のドラミングをする多くのドラマーとは、全く違ったグルーヴ感を出しています。
普通、2バスの連打は左右の足を交互に動かしてバスドラを踏みますが、このドラマーは右2回、左2回を交互に踏んでいます。その結果、この独特なグルーヴ感が生まれます。
個人的には、このタイプの曲に、このグルーヴ感は合わない上に、他の楽器のプレイヤーが合わせにくいと思うのですが、かなり独特なので興味のある方は参考にしてみて下さい。
続いては、クリックを聴きながらジャスト・タイミングで演奏している曲です。
既に紹介した、どのドラミングよりも機械的にリズムキープに徹しています。2000年以降のドラミングの流行りは、このような機械的なドラミングです。勿論、演奏時はイヤー・モニターでクリックを聴きながら叩きます。
正確さ重視の機械的なドラミングには否定的な意見もありますが、これも1つのグルーヴ感ですし、曲調に合っていれば問題は無いと思います。
どのビートもですが、譜面上はクリックとジャスト・タイミングに表記されます。グルーヴ感の出し方を表記しているドラム譜はありませんし、譜面に表すことは出来ません。
どのようなグルーヴ感でビートを刻むかは、自分次第です。またバンドで演奏する方は、メンバーと話し合い細かく決めていく必要があります。
まず大切なことは色々なドラマーの演奏を聴き、グルーヴ感というもの聴き取れるようになることです。
セッティングや機材に拘る
グルーヴ感を出す叩き方も大切ですが、ドラム・セットのセッティングや使用するスティックにも拘ると良いと思います。
例えば、タムを水平にセッティングするのと、自分の方へ傾けるのではサウンドも演奏性も変わります。前者はスティックを完全に振り下ろした時にタムに当たるので、パワフルなサウンドになります。後者はスティックを振り下ろす途中でタムに当たるので、パワーは弱くなりますが、速いドラミング向きで疾走感が出ます。
そして、スティックの太さも同様にサウンドやグルーヴ感に影響します。太いスティックほど音量が大きくなり、ビートは後ろに引っ張られます。
特にスティックの太さはドラミングに、かなり影響しますので慎重に選ぶようにして下さい。
練習方法
効果的な練習方法ですが、まずはシンプルなビートを正確に、一定のアタックで叩けることが基本です。
アマチュアのドラマーは、強弱を全く気にせず叩く方が非常に多いです。ハイハット、スネア、バスドラの全てが叩く度にバラバラの強弱です。これはボーカルが発声する度に音量が違うことと同じです。これでは、非常に聴きにくいドラミングになっていまいます。
クリックを聴きリズムをキープしながら、一定のアタックで叩く練習をし、出来るようになったら、スネアやバスドラに強弱を付けていく練習をしましょう。
クリックも4ビートだけではなく8ビートや16ビートで鳴らすと、自然と叩くビートにグルーヴ感が生まれてきます。クリックを3連符で鳴らしながらの8ビートの練習もおすすめです。
このような練習を繰り返すことで、クリックがなくてもリズムのコントロールが出来るようになり、グルーヴ感を出すことが可能になります。
そして、色々なドラマーの演奏を注意深く何度も聴き、良いと思った部分を真似することも大切です。
続いては個性的なグルーブ感を出すドラマーを3人、紹介しますので是非、参考にしてみて下さい。
おすすめドラマー3選
まずはレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム(通称ボンゾ)です。この曲はシンプルなドラム・ビートから始まりますが、このグルーヴ感は勉強になります。大口径のドラム・セットならではのバック・ビートの良い例です。
続いてはコージー・パウエルです。この曲は3連のシャッフルですが、シャッフルをこのグルーヴで叩くのも非常におすすめです。こちらも大口径のドラム・セットによるサウンドです。
こちらは日本のバンド、ラウドネスの樋口宗孝氏です。サウンドもグルーヴ感も勉強になると思います。シンプルな8ビートの曲ですが、スネアを確実にヒットさせ、更に押さえこむ叩き方は是非、試してみて下さい。
まとめ
グルーヴ感について解説してきましたが、譜面に表記されるものではないので、難しく感じる方も多いかと思います。
しかし、ドラムに限らず楽器の演奏で最終的に行き着くところはグルーヴ感です。これは派手なテクニックにも勝るものです。
グルーヴ感が聴こえるようになるまでには、時間もかかりますが、それは意識することで確実に聴こえるものです。これは初心者のうちから意識して練習することをおすすめします。
- グルーヴ感を意識して音楽を聴き練習をする
- 正確なリズムでビートを刻めることが基本
- ドラム・セットのセッティングや機材にも拘る
これらを意識して練習するようにしてみて下さい。