一昔前の打ち込みドラムは非常に機械的で、生ドラムとは程遠いサウンドでした。インダストリアル・ロックなどのジャンルでは、その機械的なサウンドが必要とされていましたが、それ以外のジャンルでは、打ち込みドラムに対し否定的な意見も少なくありませんでした。
しかし、最近はテクノロジーの発達でドラム音源のクオリティーが上がったことから、打ち込みのドラムは当たり前になりました。レコーディング経費削減のために、レコーディングは打ち込みドラム、ライブは生ドラムというバンドも増えました。
今回は初心者におすすめのドラム音源を紹介しながら、midiキーボードでの打ち込み方法、打ち込み後の書き出しやエフェクト処理について、分かり易く解説していきます。
まずは、ドラム音源の紹介から始めます。
目次
初心者におすすめのドラム音源
初心者にはこのEzdrummerがおすすめです。
ロープライスですがサウンドのクオリティーが高く、非常に使いやすいです。本物のドラムの音をサンプリングしていますので、とてもリアルです。
このソフトをインストールしておけば、このメーカーの他のドラム音源のプラグインを追加して使用することも可能です。
こちらは追加のプラグインのDrumkit From Hellです。
スタンダードモデルに比べるとタムやシンバルの数が多いです。
このようなPercussion Kitを追加することも出来ます。
どの音源もサウンドを聴いみれば、そのクオリティーの高さが分かると思います。
引用元:サウンドハウス
これらの音源を購入し、midiキーボードはこちらのnanokeyというものがおすすめです。コンパクトで薄型のmidiキーボードです。ロープライスですが、非常に使いやすいモデルです。
続いてはドラムを打ち込むための基礎知識を解説します。
midi音源にドラムを打ち込むための基礎知識
ドラムを打ち込むには、ドラミングを勉強する必要があります。
極端な例えですが、人間の手は2本しかありませんので、シンバル2枚とタムを同時に叩くことはできません。このような物理的に不可能なドラミングは極力、避けるようにして下さい。
基本的なビートは共通ですが、フィルなどは色々なドラマーのドラミングを聴いたり、バンドスコアを読んで勉強しましょう。
ここでドラムを勉強するのに最適なドラマーを何人か紹介します。
多くのロック・バンドでドラムをプレイしたコージー・パウエルですが、チャイナ・シンバルの使い方が個性的です。
Totoのドラマーであるジェフ・ポーカロのドラミングもおすすめです。多彩なバリエーションのフィルは非常に勉強になります。
様々なジャズ・バンドで活動したトニー・ウィリアムスのドラミングは、シンバルやタムの使い方が素晴らしいので、勉強になります。
続いてはループ音源の使い方を解説していきます。
ループ音源の使い方
ドラム音源には必ずループ音源が付属しています。
これは、4小節~8小節の、あらゆるリズムパターンです。つまり、打ち込まなくてもループ音源をトラックに貼り付けるだけでドラム・パートが作れてしまいます。
先程のEzdrummerの紹介動画で鳴っているものが、ループ音源になります。細かいフィルなどに拘る方は使用しませんが、初心者の方はループ音源を使用するのも良いと思います。
ここで、ループ音源を貼り付けてレコーディングした曲がありますので紹介します。
イングヴェイ・マルムスティーンの最新作「ブルーライトニング」は、アルバムの全曲にループ音源を使用しています。
しかも、2種類の8小節のリズム・パターンのループを貼り付けているだけです。よく聴くと、ずっと同じパターンが繰り返されていることが分かります。
個人的にはこれで良いのか疑問ですが、ループを貼り付けただけでも、このレベルのクオリティーになります。
ループ音源の使い方は、とても簡単で「Grooves」をクリックすると、写真のようなループの選択画面が開きます。ここで好みのパターンを選んでクリックするだけです。
続いてはmidiキーボードでの打ち込み方法を解説します。
midiキーボードでの打ち込み方法
USBポートにmidiキーボードを接続し、ドラムのプラグインを設定したトラックにカーソルを合わせます。あとは写真のようなピアノ・スクロールにキーボードで打ち込むだけです。
どの鍵盤に、どの音が設定されているかは機種により異なりますが1度、鍵盤を鳴らせばすぐ分かるほど簡単です。
こちらの動画はマウスで打ち込んでいますが、分かり易いので参考にしてみて下さい。
ピアノ・ロール上の横線が打ち込んだドラム、写真下の縦線は強弱になります。この強弱を上手く設定することで、よりリアルなドラミングになります。
続いてはパラアウト書き出しについて解説します。
パラアウト書き出しのやり方
打ち込んだドラムのmidiデータをwavに変換し、スネア、シンバル、バスドラを各パーツごとにトラックに振り分ける作業です。
最近、ネットにDTMで曲作りをしてアップされている方の殆どが、この方法を知らない、または行わない方が多いように思います。
midiをwavに変換し、トラックに振り分けることで細かくEQ処理やエフェクト処理が行えます。その結果、広がりと迫力のあるドラム・サウンドになります。
方法はとても簡単です。ミキサー画面を開きパラアウトを設定するだけです。あとは自動でwavに変換しながらトラックに振り分けてくれます。
この作業が終わったら、あとはエフェクト処理を行うのみです。
エフェクト処理のやり方
書き出したwavデータに、EQやコンプレッサーなどのエフェクトをかけて仕上げます。このエフェクト処理ですが、どのようなサウンドに仕上げたいかで、やり方が全く変わります。
ここでは、エフェクト処理の基本と注意点を解説しよう思います。
エフェクト処理の基本と注意点
まずEQはカットする方向でかけて下さい。足りない音域を上げることは、他の音域を下げることになります。
低音を上げれば高音が下がりますし、高音を上げれば低音が下がります。この辺のバランスが難しいのですが、フラットな状態で聴いて不要な部分をカットしていくのがコツです。
コンプレッサーをかけるとアタック感が出ますが、かけすぎると音が割れたり潰れたりします。ジャンルによってはコンプレッサーを深くかけて敢えて潰しますが、基本は割れたり潰れたりしないレベルでかけましょう。
リバーブは広がりが出ますが、深くかけすぎると音が不明瞭になりますので、薄くかけるのがコツです。
ドラムを単体で鳴らしながらエフェクト処理をするだけではなく、常に全体の演奏と一緒に鳴らしチェックをするようにして下さい。
単体で好みのサウンドになっても、全体と合わせて鳴らすと全く違うサウンドになることもよくあります。
これらに注意してエフェクト処理を行って下さい。
まとめ
ドラム打ち込みで最も難しいことは、打ち込みよりもドラムのフレーズの引き出しを増やすことです。
リアルなドラムを打ち込むためには、たとえ叩けなくてもドラマーと同等の知識とセンスが必要になります。そのためには色々なドラマーの演奏を注意深く聴いたり、バンドスコアを読んで勉強することが大切です。
普段、聴いている好きなアーティストのCDを聴く時に、ドラムに集中して聴くのも良いと思います。
- midiキーボードの使い方に慣れる
- ループ音源を貼り付けて曲作りも可能
- 打ち込んだmidiは必ずwavに書き出してトラック分けする
- エフェクトはかけすぎないのがコツ
- 色々なドラマーのドラミングを勉強する
これらのポイントをドラムを打ち込む際の参考にしてみて下さい。