ジミ・ヘンドリックスは60年代に僅かな期間しか活動はしませんでしたが、エレキギターの常識を覆すギタープレイを披露しました。
右利き用のストラトキャスターを逆さに持ち、大音量のマーシャル・アンプにファズ・フェイス、ワウペダル、ユニバイブなどのエフェクターを使い、斬新なサウンドを出したことでも有名です。
ロックでは当たり前になった、トレモロアームでの過激なアーミングや、積み重ねたマーシャル・アンプを大音量で鳴らすスタイルも、ジミが始めたものでした。
ジミに憧れるギタリストは沢山いますが、演奏や機材の詳細は不明な部分が非常に多いです。
今回はジミのギターや機材、奏法などを初心者にも分かり易く解説していきたいと思います。
まずは、ジミが使用していたギターと機材についてから始めます。
ジミヘンドリックスのギターと機材
引用元:デジマート
ギター
ジミは、フェンダーのストラトキャスターをメインギターに使用していました。
ジミは左利きなので、右利き用のギターを逆さに持ち替えて使用していたというのが定説です。
しかし、実はジミは右利きでした。
左利きに憧れていたことと、ストラトを逆さに持つとテレビカメラにアップで映った時に、ボリュームやトーン・ノブが映り「マシンを操っているようでカッコ良く見えるから」という理由で、右利き用のギターを逆さに使っていたようです。
右利き用のギターを逆さ持ち替えると、演奏面やサウンド面で問題が起きます。
まず、ハイポジションが非常に弾きにくくなります。17Fより上は、指が長くないと弾けません。
そして、ピックアップのテイルピースが逆になるので、本来出るはずのサウンドが出なくなります。
ハイポジションは指の長さでカバーし、テイルピースの問題で変わってしまったサウンドは、自分のサウンドの個性として活かしました。
この弾きにくさと独特のサウンドは現在、ジミのシグネチャーモデルが発売されていますので弾いてみると、お分かりになると思います。
シグネチャーモデルは、あくまで見た目が同じなだけであり、マウントしているピックアップや、使用されている配線、コンデンザーなどは60年代当時のものとは全く違います。
アンプとエフェクター
引用元:スモールガレージ
ジミが使用したエフェクターはファズ、ワウペダル、ユニバイブ、アンプはマーシャル・アンプです。
因みに、この中で現在も入手可能な物はマーシャル・アンプのみです。エフェクター類は後継モデルが発売されていますが、ユニバイブは様々な事情から生産不可能になりました。
では、1つずつ機材について解説していきます。
ファズ
引用元:デジマート
ジミは何種類かのファズ・フェイスを使用しています。このファズ・フェイスで、歪みサウンドを作っていました。(当時、歪み系エフェクターはファズしかありませんでした)
現在、ファズ・フェイスは復刻版がリリースされていますが、当時のものとは配線やパーツが違いますので、同じサウンドを出すことが出来ません。
ファズ・フェイスでジミのようなサウンドを出すコツは、ACアダプターやアルカリ電池を使用しないことです。
当時はACアダプターで稼働するファズはありませんでしたし、アルカリ電池もありませんでした。
必ず、マンガン電池を使用するようにしましょう。
ワウペダル
引用元:Julien’s Auctions
ジミはVOXのワウを使用していまいたが、こちらも当時のものは入手困難です。特に変わった使い方はしておらず、ギアのコントロールもしていません。
ユニバイブ
引用元:eBay
現在は入手困難で、硫化カドミウムの使用が禁止されたことから制作不可能な、ユニバイブです。日本製のエフェクターで本来はオルガン用なのですが、これをギターに繋いで使用しました。
あの有名なウッドストックでのライブの時は終始、ユニバイブをオンにしたままプレイしています。
フィルモアイーストでのマシンガンで聴けるユニバイブ・サウンドも素晴らしいので、おすすめです。
アンプ
アンプは100Wのマーシャル・スーパーリード・プレキシと、4×12キャビネットの組み合わせで、フルボリュームで鳴らしています。
当時のマーシャルにはゲインが搭載されていませんでしたので、フルボリュームにしてアンプを歪ませていました。
ジミヘンドリックスのサウンド
ジミのサウンドは時期により異なりますが、基本的には大音量のマーシャルと、接続したワウやユニバイブによって得られたサウンドだと思います。
これは、ワウやユニバイブをオンにしたからではなく、オフの状態でも繋いだことによる音質の劣化が、マーシャル・プレキシの耳を突く高音の角を取ったということです。
そして、ジミのサウンドを目指す場合はライブ盤を聴きこむことです。
ライブ盤は録音後に様々な音質処理を行いますので、ステージで鳴っている音と全く同じ音を聴くことは不可能です。
例えばライブ盤の「バンド・オブ・ジプシーズ」と「フィルモアイースト」は同じ時期に、同じ会場で録音されていますが、この2枚はサウンドが全く違います。
かなり難しいことですが「ライブ盤を聴き、録音後の音質処理を考えながら、ステージで鳴っている音を予想することが音作りのコツ」です。
ジミヘンドリックスの左利きのコードの弾き方
引用元:デジマート
ジミのコード弾きで有名なものは「ジミヘンコード」とも呼ばれているE7(#9)です。
ネットで検索すると、このコードの押さえ方の楽譜や動画の解説が出てきますが、ここでは敢えて譜面は載せずに解説を進めていきます。
譜面を載せない理由ですが、ジミヘンコードと呼ばれるE7(#9)ですがバンドスコア、ネットの楽譜、解説動画どれも違います。
E7(#9)を鳴らしていることは間違いありませんが、正確な押さえ方は不明です。
この曲の23秒からE7(#9)が登場しますが、よく聴くと一般的に知られているジミヘンコードのポジションではありません。
これはあくまでスタジオ盤の話です。ライブでは様々なポジションで弾いています。
個人的な見解ですが、スタジオ盤のジミヘンコードは6弦が鳴っているように思います。
コード弾きに親指を使用
ジミはコードを弾く時に、6弦を親指で押さえることが多いです。
つまり、親指を使った押さえ方が出来ないと、ジミの曲を弾くことは難しいです。手が小さいと押さえにくいですが、親指を使ったコード弾きも練習するようにしましょう。
ジミヘンドリックスのピッキング
ジミは指が長く、異常なほど親指が反るのでピッキングは逆アングルです。
そして、ピックと同時に爪や親指と人差し指も弦に当てて個性的なサウンドを鳴らしています。
この曲のイントロをよく聴いてみると、とても小さい音で分かりにくいのですが、ピック以外の音が混ざっていいます。
その音こそ、爪や指の音です。ジミは、注意して聞かないと分からない部分まで拘ってギターを弾いていました。
今まで、軽く聴き流していた曲も、注意深く聴いてみると色々な発見があると思いますので是非、細かい音まで聴くようにしてみて下さい。
まとめ
引用元:Wikipedia
ジミについて解説してきましたが、ジミのギタープレイには近づくことさえ不可能ですので、自分なりの解釈でジミの曲を演奏するのがおすすめです。
使用機材は、今から60年も前の物ですので、ハイファイな現在の機材では真似することが難しいですが、プレキシとファズで近いサウンドは出せますので試してみて下さい。
最後に個人的におすすめの、ジミのギタープレイを紹介したいと思います。
引用元:アマゾン
動画はありませんが、こちらのライブ盤の「マシンガン」は特に素晴らしいギタープレイが聴けます。
中盤に出てくる1弦15Fの1音チョーキングがあります。たった1音ですが、そのタイミングとニュアンス、バンドのグルーヴに合わせたユニバイブのウネリが見事にリンクするプレイが聴けます。
計算したのか偶然なのかは分かりませんが、素晴らしいプレイですので是非、聴いてみて下さい。
この記事をジミの曲を弾く時の参考にしてみて下さい