ピアノを上手く演奏するためには「スムーズな運指ができる正しいフォーム」が絶対に必要になります。
例えば単純な「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」を弾く時に、右手の指を真っ直ぐに伸ばしたまま弾いてみると、非常に弾きにくいはずです。この真っ直ぐにした指を少し丸めるだけで、とても簡単に弾くことが可能になります。
このように「楽器にはメロディーに合った弾き易い運指」というものが必ずありますので、その運指を探しながら練習することが大切です。
今回は初心者にも分かりやすく、指の動かし方やスムーズな運指のコツなどを詳しく解説していきます。
まずは、基本的なフォームから始めたいと思います。
基本的なフォーム
ピアノを演奏する時の基本的なフォームは「手のひらで軽くタマゴを握る感じのフォーム」とされています。
詳しく説明すると「指の第三関節の手の甲側(握った時に骨が盛り上がるところ)の関節を立たせる」感じのフォームです。
このフォームが出来ていないと、テンポの速い曲が弾けなかったり、音の響きが濁ったりしてしまいますので、必ず身に付けるようにして下さい。
指の位置
親指で鍵盤を弾く時は、親指の真横で弾きます。親指の腹で弾くと、手のひら全体が不自然なフォームになってしまい非常に弾きにくくなります。
その他の指は寝かせずに少し立てるようにし、指先で弾くイメージで演奏すると、綺麗な音が鳴りますし、演奏が楽になります。
矯正方法
弾きにくいフォームだったとしても、1度身に付いたフォームを矯正することはとても大変です。
「弾きにくいフォームだから矯正しよう」と思っていても、演奏をしていると無意識のうちに元に戻ってしまうことがよくあります。
常にフォームを意識しながら、簡単な曲を演奏して矯正する方法がおすすめです。
正しい椅子の座り方
正しい手のフォームで構えるには、椅子に正しく座る必要ことが大切です。
ピアノの椅子の位置は、ピアノの真ん中に置きます。深く腰をかけても弾きにくく、浅く腰かけても安定しないので、椅子の中間にしっかり腰を下ろして座ります。
両足は揃えておくのではなく、右足がペダルに、左足はやや椅子側に置くのがスタンダードな形です。
椅子の高さは、やや鍵盤より少し肘が高くなる高さか、鍵盤と肘の高さが同じくらい(90度)がベストとされています。
続いては運指について解説していきます。
ピアノの指の動かし方
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」を、そのまま弾こうとすると、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」と音が8個あるのに対して、片手は指が5本ですので指が足りなくなります。
この問題を解決する運指が「指くぐり」です。
指くぐり
「指くぐり」は「ド、レ、ミ」は「親指→人差し指→中指」と弾き、親指を中指の下をくぐらせて「ファ、ソ、ラ」を再び「親指→人差し指→中指」の順で弾きます。
このフォームが基本とされているのは、手の構造も考慮した上で1番スムーズな運指であるからだそうです。確かに「ド、レ、ミ」を「親指→人差し指→中指」で弾き、次の「ファ」を薬指で弾くと、その後の運指が非常に大変になります。
指くぐりのコツ
例えば親指をくぐらせる場合は、他の4本の指の下を通って親指を、次の弾きたい鍵盤のへ移動します。
親指以外の指をくぐらせる場合は、反対に他の指の上を通って次の音を弾きます。
「指くぐり」ができると、何個の音でも連続して弾けるようになります。
まずは、この基本的な指使いの「指くぐり」をマスターして下さい。
左右の指使い
指くぐりだけでなく、もう1つ身に付けなければならない運指があります。
ピアノの演奏では左右で指使いが違います。人間の指というのは、親指が体の中心の方にあります。ピアノでは指に番号を付けて呼んでいて、その番号が親指が1番、人差し指が2番~小指が5番となります。
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」を弾くときも、一番最初のドを弾くのは、右手では1番、左手では5番となり指も番号も異なります。ピアノに慣れていないと、まずここで混乱してしまいます。
では、実際にどんな指使いで弾くのか、両手の指使いの違いを見ていきましょう。
右手の指使い
親指から始めて、上がる時は「1・2・3・1・2・3・4・5」となり、下がる時は「5・4・3・2・1・3・2・1」となります。
左手の指使い
左手は、小指から始めて上がる時は「5・4・3・2・1・3・2・1」となり、下がる時は「1・2・3・1・2・3・4・5」となります。
左右の共通点
両手の基本的な指使いは違いますが「右手の上がる時と左手の下がる時」と「右手の下がる時と左手の上がる時」の指使いは同じです。
練習方法
指使いの練習は「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の音階で練習しますが、両手で指使いが異なるため混乱しやすいので片手ずつ練習してください。
慣れるまでは指使いを全部、譜面に書いて見ながら練習し、無理をせず少しずつ丁寧に取り組んでみてください。
手が小さい人におすすめの弾き方
手が小さいとストレッチを必要とするフレーズが、どうしても弾きにくくなります。
この場合は瞬発力で遠い鍵盤までジャンプするイメージで弾くことで対応します。決して簡単な弾き方ではありませんが、慣れてしまうと、どんなに遠く鍵盤でも指が届くようになります。
手が小さいからといって諦めてしまわず、運指を工夫して弾きこなすことも大切です。難しい奏法ですが是非、試してみて下さい。
続いてはスムーズに弾けるようになる練習方法を解説していきます。
おすすめの練習方法
大切なことはメロディーも伴奏も「どうすれば弾き易いかを、弾く前に指使いを考える」ことです。
初心者向けの簡単な曲は何も考えなくても、意外と簡単に弾けてしまいますが、少し難易度の高い曲になるとスムーズな指使いをしなければ、演奏が非常に困難になります。
楽譜を開き何も考えずに弾き始めるのではなく、1つ1つのメロディーを「如何に楽に弾くか?」を考えるようにしてみて下さい。
こちらは比較的、難易度の高いとされるショパンの「幻想即興曲」ですが、5小節目の上段のメロディーを親指でスタートするのと、人差し指でスタートするのでは弾き心地が明らかに変わるのが良く分かると思います。この場合は全体のメロディーを考えると、親指でスタートしたほうが弾き易くなります。
このようにメロディーの流れをよく考えて、指使いを考える習慣をつけると、今まで弾けなかった曲が、意外と簡単に弾けるようになったりもしますので、どんな曲でも弾く前に指使いを考えてみて下さい。
この「考えること」が非常に効果的な「スムーズな運指の練習法」です。
既に弾ける曲も、もう1度「簡単に演奏するには、どんな指使いが良いか?」を考えてみて下さい。そうするだけで驚くほどピアノの演奏は上達します。
まとめ
解説してきました通り、ピアノは基本的な運指をマスターすることと、如何に楽に弾けるかを考えて演奏することが大切です。
今まで何も考えずに演奏していた方は多いと思いますが、好きな曲の演奏や上達のためにも指使いをよく考えて練習するようにしてみて下さい。楽譜に指番号を記入していくのも良い方法だと思います。
弾きにくい指使いでいくら練習をしても、弾きにくさが変わることはありませんので、曲のメロディーや自分に合った指使いを研究してみて下さい。
- 基本的な指番号を覚える。
- 椅子の座り方も考える。
- フレーズに合った指使いを考える。
- 楽に弾ける指使いを考える。
この4つを常に忘れずに、練習を積み重ねれば、どんなに難解な曲も必ず弾けるようになります。
今回の記事をピアノの練習の参考にしてみて下さい。