篠笛の楽譜は五線譜に音符を記したものではなく、音符や奏法を数字、カタカナ、記号で記した楽譜(数字譜)になっています。
J-POPの篠笛譜(数字譜)というものは殆ど出回っていませんので、J-POPを篠笛を演奏する場合は、五線譜であるメロディ譜かピアノ譜等を代用して演奏します。
また篠笛の演奏では#や♭の多い楽曲を移調という方法を使い演奏しやすくします。
今回は篠笛の楽譜の読み方と、移調についての解説をしていきます。
まずは篠笛の楽譜とピアノのドレミの楽譜との違いから始めたいと思います。
篠笛の楽譜とピアノのドレミの楽譜との違い
冒頭でも少し触れた通り篠笛の楽譜は音符を記した五線譜ではなく漢数字、カタカナ、記号を記した数字譜になっています。
数字譜には装飾音やアクセント、ビブラートなど、高度な吹き方にも対応できるメリットがあります。
引用元:巌松堂
五線譜と篠笛の数字譜の違いは、こちらの写真を見ていただくと分かりやすいと思います。
音符を記した五線譜の下の漢数字とアラビア数字、記号が篠笛の楽譜になります。
続いては篠笛の楽譜の読み方について解説していきます。
篠笛の楽譜の読み方
篠笛の楽譜は呂音(低音)は漢数字、甲音(高音)はアラビア数字で記すという特徴があります。
呂音
呂音は「りょうおん」と読みます。篠笛の低音域の音で、数字譜では漢数字で(一~七)まで表記します。
甲音
甲音は「かんおん」と読みます。呂音より1オクターブ上の音域で、数字譜ではアラビア数字(1~8)で表記します。
音程表
呂音と甲音の音程は、表のようになっていますので参考にしてみて下さい。
大甲音とは
篠笛には呂音と甲音の他に大甲音(だいかんおん)と呼ばれる高音があります。
これは3オクターブ上の音域のことで、アラビア数字の上に「・」をつけて表します。
メリ音とカリ音
メリ音とカリ音は半音階(#や♭)のことです。
篠笛で半音を表記する場合は、メリ音とカリ音を「三メ」や「7カ」と数字の右上に記します。
その他の記号
引用元:しの笛の世界
音符の長さや休符を表す記号は、写真の一覧表を参考にしてみて下さい。
移調する方法
篠笛にはフルートのように半音キーが付いていないため、演奏したい曲があっても、半音記号(♯,♭)が多い楽譜を演奏することが難しい場合があります。
また最低音のド(呂音の一の運指)よりも低い音符が登場するような場合には、物理的に篠笛で演奏をすること自体が不可能です。
このような時に篠笛で演奏しやすくするために、半音記号が少なく演奏可能な調に移調して演奏します。
また移調をすることにより、篠笛演奏の幅が広がり楽しみも倍増します。
このように篠笛で様々な楽曲を演奏するためには、移調の知識は必要不可欠となります。
移調をすると、移る調によっては楽曲の雰囲気を大幅に変えてしまうことになりますので、可能な限り原曲の雰囲気を崩さない調に移調することが大切です。
篠笛で移調する場合は「#や♭が沢山ある楽曲をどの調に変えれば#や♭が少なくなり、演奏がしやすくなるか」を把握しなければいけません。
※どの調に移調するかは演奏者の好みにもよりますが、初心者の方は、できるだけ#や♭の少ない調がおすすめです。
調とは
移調の前に調について簡単に解説します。
調とは曲のキー、移調とはキーチェンジになります。
カラオケで歌いにくい曲をキーチェンジすることがありますが、移調はこれと同じです。
移調の基本
- 原曲の旋律に一番近い音(調]を見つけ移調して、旋律が正しく出来たかを確認する。
- 移調したら原曲と同じ旋律になったいる事を実際に笛の音を出し確認する。
- 特に#や♭がある音に気を付けて移調します。
- 移調したら実際に吹いてみて、不安定で演奏がしにくい音が出た時は、全ての音を1音ほど移調します。
- 基本は篠笛の音域を意識して、原曲に最も近い調を見つけ、その音程差だけで上下に音程を移していくことです。
初心者におすすめの調
半音キーがついていない篠笛の構造を考えると「長調の楽曲ならハ長調」に「短調の楽曲ならイ短調」に移調するのがおすすめです。
ハ長調やイ短調は基本的に#や♭の半音階を使用しませんし、篠笛の音域にも合った調になります。
これらの違いは、実際に楽譜を見比べてみると分かりやすいと思います。
こちらは「変イ短調」の楽譜です。
ト音記号の隣を見ていただくと♭が7つ付いています。
これを半音上の「イ短調」に移調してみます。
こちらが「変イ短調」を半音上の「イ短調」に移調した譜面です。
7つもあった♭がゼロなり非常に演奏しやすくなります。
※ト長調の場合もイ短調と同様に#や♭が無くなります。
初心者の方は、まずはト長調またはイ短調に移調することをおすすめします。
この他にはへ長調とニ短調(♭が1つ)、ト長調とホ短調(#が1つ)が#と♭が少ない調ですのでおすすめです。
- 篠笛の移調は曲の雰囲気よりも演奏性重視。
- 移調は#と♭の数が少ない調に移る。
- 音域も考えて移調する。
- 初心者が移調する場合はハ長調かイ短調。
まとめ
篠笛の楽譜は数字譜なので、最初のうち(特に五線譜に慣れている方は)違和感を感じるかもしれません。
数字譜に慣れるには数字や記号を1つずつ覚えるよりも、好きな楽曲を練習しながら覚えることをおすすめします。
知っている楽曲を演奏しながら覚えると、ミストーンに気付きやすいというメリットがあります。
移調に関しては初心者のうちは、ハ長調かイ短調が良いですが、慣れてきましたら原曲の雰囲気を壊さずに移調することにもチャレンジしてみて下さい。
今回の記事を、篠笛の演奏に役立ていただけたらと思います。