篠笛は篠竹に穴を開けただけの、非常にシンプルな日本の伝統楽器です。
昔から日本各地のお祭り、獅子舞、神楽等の民俗芸能をはじめ、民謡、長唄などの音楽に使われてきました。
篠笛には様々な種類があり、演奏する楽曲により適切な笛を使い分けます。
そして篠笛は、吹けば吹くほど音が良くなる楽器でもあります。
今回は篠笛の基礎知識から、高音の鳴らし方やビブラートのかけ方までを、初心者にも分かりやすく解説していきます。
まずは篠笛の良い音についてから始めます。
篠笛の良い音とは
篠笛には沢山の種類があり、値段も様々です。初めて篠笛を購入する時には、何を基準に選んだら良いか悩むところです。
篠笛は1本、1本が手作りなので、メーカーやクラフトマンにより全く違う音が鳴ります。同じクラフトマンが作った篠笛でも、同じ音が鳴りません。
ある程度、上達してくると、どの笛でも上手く鳴らすことができるようになり、笛の音色の個性が分かるようになります。
初心者のうちは音やピッチが悪いのは、吹き方が原因なのか、篠笛の個性なのかが判断しにくいものです。
篠笛にはプラスティック製の格安の物がありますが、竹製のものに比べると音色が劣ります。
篠笛の良い音とは竹製の篠笛の音と言われていますので、購入の際は音の好みもありますが、竹製の篠笛を選ぶようにして下さい。
篠笛を吹く正しい姿勢
篠笛は体全体を使い演奏する楽器ですので、正しい姿勢で構えることが非常に大切です。
正しい構え方
肩の力を抜き、両肘を張り過ぎないようにし、顔は正面を向きます。
右手で笛の中ほどを持ち、左手で笛の歌口(吹き口)付近を持ちます。
この時に口元を隠すために、歌口が中指の第一関節付近になるように笛を持ち、右手は指を定位置に移動します。
笛を口に当てる場合、適切な位置にするために笛を回して、上唇で触れて歌口を確認します。歌口の当て方は、下唇は歌口に4分の3程かけ、上下の唇を軽く合わせ横に引きます。
※この時に口元が疲れる場合は強く引きすぎです。
篠笛の作法
篠笛は日本の伝統楽器ですので、演奏していない時の作法があります。
演奏を終えたら一度、全ての指孔を塞ぎ、左手を口元に移動し手を添えたまま、ゆっくり笛をおろします。
正座して演奏する場合は、畳の上に直接笛を置くことを避けるために、笛の袋を四つ折りにして歌口の部分が枕になるように置くようにします。
この時に歌口・指孔は右側に向けることで、手に取る際に自然に指孔が上になります。
篠笛の吹き方
初心者の方が篠笛を吹くと、全く音が鳴らないことがあります。
その際に音を鳴らそうと強く吹いてしまいがちですが、そうしてしまうと逆に音が上手く出ません。
音が出ない場合は頬を膨らませないように意識しながら、太い息で吹くようにして下さい。
この時に笛の両サイドを両手で持ち、えくぼを出すように唇を引いて、息を歌口に吹きつけます。
更に笛の角度や息の吹き方を考えながら吹くようにしてみると、綺麗に音が鳴るようになります。
続いては運指と音を鳴らす練習方法について解説していきます。
練習方法
息の吹き方に続いて、篠笛の基礎練習をいくつか紹介していきます。
音を出す練習
音を出す際の基本は、雑音が鳴らないように、安定して長く音を鳴らし続けることです。
まずは5秒間、音を鳴らし続けることを目標にし、徐々に音を鳴らす時間を長くしていきます。この練習は、常に同じ音色が鳴るように意識して吹いて下さい。
音を長く鳴らす場合は、最初から息を使いすぎないことがコツです。
指穴を押さえて音を出す練習
実際に指穴を押さえて音を出す練習では、呂音では「六」の音が比較的出やすいので、まずは「六」の音を鳴らします。
指穴を押さえて音を鳴らす場合も、出来るだけ長く音を鳴らしつつ、安定した音を鳴らす練習を繰り返します。
指穴をしっかりと塞ぐとこで安定した音になりますので、隙間ができたりしないように注意して下さい。
指を動かしながら音を出す練習
「六」の音が安定して音が出るようになりましたら、「五・四・三・二・一」の順で同様の練習をして下さい。
低音が鳴る「二」や「一」は、より軽く息を吹くのがコツです。
それから息を吹いたまま、指を変える練習も大切です。
まずは「六」の音を鳴らし、そのまま音を止めずに「五」の音を押えます。スムーズに「六~五」と音が移れるように繰り返します。
同様に「五〜四、三~二、二~一」と続ける練習を繰り返していきます。
- 息を使う量を意識する
- 指穴を確実に塞ぐ
- 低音ほど軽く吹く
基礎練習は、この3つに注意しながら行うようにして下さい。
続いては、きれいな高音の出し方を解説していきます。
きれいな高音の出し方
篠笛で高音は大甲音と呼ばれています。
因みに大甲音の「ラ、シ」は鳴らすのことが非常に難しく、楽曲に用いられることは殆どありません。
大甲音では「ド」の音が比較的出やすいので「ド」の音(数字譜の「8」の音)を鳴らす練習をします。
「ド」の音で始め、安定して音が出るようになったら、次に「レ→ミ→ファ→ソ」の順に同様に音を出してみてください。
音が高くなるにつれ「強く細い息」で吹くのがコツです。
甲音、大甲音になると息を細く、早く、そして正確に音が出るポイントに当てる必要があります。
中々、音が出ない場合は息を当てる角度を変えたりするなど、色々と試してポイントを探し出して下さい。
また中々、音が出ないからといって力まず、リラックスした状態で吹くようにしましょう。
この練習でも音は出来るだけ長く鳴らし、安定して音が鳴るまで練習しましょう。
続いてはビブラートの出し方について解説していきます。
ビブラートの出し方
これまで一定の息を保ちながら音を鳴らす吹き方を解説してきましたが、ビブラートは一定の息を崩す奏法です。
息を適当に崩して音を揺らすのではなく、息をリズムに合わせて崩しながら音を揺らすことが非常に大切です。
ビブラートの練習は必ずメトロノームを聴きながら行って下さい。
篠笛のビブラートのかけ方には、いくつかの方法があります。
- 腹筋でかける
- 喉元でかける
- 口元でかける
この3つの、どの方法でも構いません。
そして息を吐く量に強弱をつけながら、音を揺らしていきます。
基本的なビブラートの練習方法
- 1小節、全音符で音を伸ばす
- その全音符を4分音符に分割して揺らす
- 次は全音符を8分音符に分割して揺らす
- 同じく全音符を16分音符に分割して揺らす
これをメトロノームに合わせながら練習します。
慣れてきましたら、全音符を3連符や6連符で分割して揺らしてみて下さい。
そしてビブラートは音程の揺れ幅も大切です。
「ド」の音を揺らす場合、「ド」と「ド#」の半音階の間で、どの程度の揺れ幅でビブラートをかけるかを意識しながら練習するようにしましょう。
ビブラートをかける際に大切なことは、揺れのスピードコントロールと、揺らす音域の幅です。
上手くビブラートをかけるコツと練習方法
上手いビブラートはタンギングを使ってかけるのがコツです。
※タンギングとは舌(厳密には喉と腹筋も)を使って音を切っていくテクニックです。
篠笛の場合、音を切るのは「指打ち」で行いますが、ビブラートの練習ではタンギングを使ってビブラートを練習します。
タンギングをを使用したビブラートの練習方法は以下の通りです。
- 指は「呂音」の「レ」を押さえて、最初はゆっくりと1小節で4回吹く。
- 次は1小節で8回吹く。
- 次は16回と段々と息を短くしていく。
最終的に1小節で32回ほど音を切れるようになると連続した音になってきます。
この時の喉の動きが上手くビブラートをかけるコツになります。
まとめ
篠笛について解説をしてきましたが、最後に重要なポイントをまとめてみようと思います。
- 篠笛は竹製のものを選ぶ
- 音色を保ちながら音を長く鳴らす練習をする
- 音を長く鳴らせるようになってからビブラートを練習する
- 篠笛を上手く鳴らすコツは息の量のコントロール
これらのことに意識しながら、練習を積み重ねるようにして下さい。
演奏に関しては、音を長く鳴らせなければビブラートをかけることはできません。
まずは音色を安定させつつ、音を長く鳴らす練習から始めて下さい。
この記事を篠笛の演奏をする際の参考にしてみて下さい。