楽譜の中で演奏方法を指定するものには、記号・数字・言葉による表示方法がありますが、演奏者として最も悩むのが言葉による表示です。英語やイタリア語で記してあるものは、意味を調べ、複数の意味の解釈の中から、楽曲にあわせた解釈を選ぶ必要があります。
数多くある言葉による表示の中でも、今回は「agitato」についてです。イタリア語の発想標語ですが、読み方はわかりますか?意味はわかりますか?
この記事では、音楽記号のagitatoの意味や演奏方法について、初心者の方でもわかるように解説していきます!
Agitatoの意味と読み方
agitatoの読み方
agitatoはイタリア語ですから、ローマ字読みで大体読むことができます。「アジタート」と読みます。
agitatoの意味
曲想を指定する発想標語です。
Oxford音楽用語辞典に書いてある説明を要約すると、
激しい、急速な、不安な、落ち着かない、動揺した
といった意味になります。
ちなみに、このagitatoという言葉は、イタリアでは日常会話でも使われています。例えば、「強い風で木々の揺れがアジタート」「初めてのデートでアジタート」などなど、こんな風に使います。つまり、ハイテンションなこと、激しい動きを指す言葉ということですね!
Agitatoの演奏方法
用語の意味から「先へ急ぐようなイメージ」や「不安で焦るイメージ」、「前のめりなイメージ」を持つとよいでしょう。また、参考として以下の曲を聴くと、よりイメージが具体的になります。
ベートーヴェン ピアノソナタ第13番「月光」第3楽章 Presto agitato
曲中に時々現れるsf(スフォルツァンド)が激しい曲調を演出しています。緩急や強弱の微妙な変化が、緊張感や高揚感を表しています。この曲を作曲したころ、耳の病気を患ったベートーヴェンは、死を意識するほど悩んでいました。そんなベートーヴェンの心の叫びが感じられます。
ラフマニノフ ピアノソナタ第2番第1楽章 Op.36変ロ短調 Allegro agitato
全体をで半音階をモチーフとし、複雑な和声進行で構成されています。また、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律の断片が演奏されるなど、荘厳でドラマティックな展開になっています。
前作の交響曲第1番が酷評を受け、ノイローゼ状態になり、作曲もろくにできなくなったラフマニノフが催眠療法によって自信を取り戻し、作曲した作品です。
このように、どの曲の作曲背景にも葛藤や怒りなどの要素があったことがわかります。また、複雑な構成も特徴と言えるでしょう。
このほかにも、YouTubeなどの動画検索サイトやアプリで検索バーにagitatoと入れて検索すると、ほかにもいくつかの候補が出ます。より多くの曲を聴き、曲調などにあった演奏法を見つけることが、より良い演奏へとつながります。
Agitatoの練習方法
まずは、その曲を作曲者がどのような雰囲気で作曲したのかを理解することが重要です。ここからその曲の演奏方法を考え、練習していきます。
agitatoという用語全般に言えることは、激しさだけではなく、どこか落ち着いた感じがあるということです。agitatoという単語の表の意味だけで我を忘れてがむしゃらに弾くのではなく、冷静な気持ちで演奏することが大事になります。
そのためにも、まずは譜面通りに正しい音、リズム、テンポで弾けるように練習します。参考音源を聴くとわかるように、曲中に連符が非常に多い構成となっています。自然と指が動くくらいまで練習します。
焦らずゆっくりのテンポから練習していくことがポイントです!
また、連符の効果的な練習方法としてよく挙げられるのが、リズム替え練習です。
リズム替え練習とは?
例えば、楽譜の一部に[ドレミソド]というすべて16分音符の連符があります。
これをリズム替え練習するときは、、、付点16分音符+32分音符の繰り返しのリズムで弾きます。[ドーレミーソド]というふうになります。
この練習は、下線の部分の音と音の間を通常の楽譜通りよりも短くすることで、指の動きが速くなります。
できるようになったらリズムを変えます。32分音符+付点16分音符のリズム、[ドレーミソード]です。
一通り練習を終えて、楽譜通りに戻して弾いてみると、、、以前よりもゆっくりに感じるはずです。当然、指もよく動くようになります。
ただし、注意する点があります。
まず一つは、重心がずれないようにすることです。
これは、機械的な練習になってしまっているときに起こりがちなことで、本来は[ドーレミーソド]のように、前は重く、後ろは軽くあるべき重心がずれてしまい、[ドーレミーソド]というように、尻餅をついた感じになってしまいます。
これでは、なかなか弾けるようになりません。十分に気を付けましょう!
慣れてきたら、テンポを上げたり、複数のリズムを組み合わせたりするのも効果的です。根気のいる練習ですが、感覚として身につけば、ほかの曲がもっと楽に弾けるようにもなります。メトロノームを使うことも大切です。頑張りましょう!
これが完璧にできるようになると、抑揚を入れたりしても落ち着いて聴こえるようになるかと思います。
まとめ
この記事では、音楽記号agitatoについて解説しました。
agitatoは、激しい、不安、動揺など、ハイテンションで動きが激しいことを表すイタリア語です。発想標語を正しく表現するために、参考音源を聴いたり、作曲背景を調べたりして、曲にあったagitatoが表現できるようにしましょう。
練習で大切なことは、自然に滑らかに指が動くようにすることです。
リズム替え練習も有効活用しましょう。
非常に難易度の高い曲に付されることが多い発想標語なので、曲自体を完成させるにも時間がかかりますが、根気強く練習しましょう。
完成を焦らず、落ち着いて曲を完成させていけると良いですね!