大正琴は大正時代にタイプライターからヒントを得て発明された日本の楽器です。
鍵盤はピアノと同じ配列になっており、初心者でも比較的、演奏するのが簡単な楽器でもある為、家庭用楽器として大流行しました。
では大正琴の初心者にも分かりやすく基本的な弾き方や、この楽器を演奏する際には欠かせないトレモロ奏法について分かりやすく解説をしていしたいと思います。
まずは大正琴の基本的な構え方から始めます。
大正琴の構え方
まずは、大正琴の構え方とピックの持ち方から解説をしていきます。
構え方
引用元:琴伝流
写真のように体を少し左斜め向きにして、響鳴穴を体の中心に合わせます。
そして右手の甲を上に向けて、ハンドプレートに乗せます。この時に右肘が大正琴と一直線になるようにして机の上に置きます。
左手は左斜めに指先を向け、人差し指と中指は「へ」の字に曲げて、小指以外の4本の指が音階ボタンの上に並べます。
ピックの持ち方
引用元:琴伝流
大正琴のピックは、先端をやや左斜め下に向け、ピックの穴の部分を中心に右手の親指と人差し指、中指の3本指で握ります。残りの薬指と小指は軽く握るように丸めます。
ピックの持ち方は鉛筆の握り方に似ているので、鉛筆を握るようなイメージで握るのがコツです。
ピックを持つ親指を強く握り込みすぎると、ピックが斜めを向いてしまい、弦に対してピックが直角に当たらなくなりますので力加減に注意をして下さい。
続いては大正琴の弾き方を解説していきます。
大正琴の弾き方
大正琴には4つの基本的な弾き方があります。
- 押し弾き
- 送り弾き
- 消音
- ヴィブラート
この4つの弾き方を必要に応じて使い分けて演奏します。
押し弾き
通常の音符は、この押し弾きを用いて演奏します。手前の4弦から向こう側の1弦へ、手首のスナップを使い一気に弾きます。
この時に響鳴穴の右ふちを弦に対して、ピックが直角に当てるようにして下さい。
構え方やピックの持ち方が悪いと、下駒付近を弾いてしまったり、弦に対して斜めにピックが当たってしまい、良い音色が得られませんので注意が必要です。
送り弾き
送り弾きは長い音符を弾く際に用いる奏法です。ボタンを押さえたままにして、1弦のみを軽く弾ます。この時に強く弾くと音が割れてしまいますので、強く弾きすぎないように気を付けて下さい。
消音
消音は譜面の0と表記されている場所や演奏をやめる時などに用いる、音を消す奏法です。右手親指か右手薬指を弦に触れて、4本の弦の音を消します。この時に弦に軽く触れるようにして音を消すのがポイントです。
ヴィブラート
大正琴は音階ボタンを左右に揺らすと、ヴィブラートをかけることができます。慣れないうちは右手の指もつられて動いてしまいますが、少し続けているとコツがつかめます。
ヴィブラートは音の揺れ幅とリズムを意識しながらかけるのがコツです。
どの楽器も共通していますが、曲調やテンポに合わせ、1拍の中で何分音符のヴィブラートをかけるかを考えるようにします。
基本的には1音の中でかけるヴィブラートのリズムには8分音符、16分音符、3連符、6連符があります。
伸ばした1音を、これらの音符で割ってヴィブラートをかけることをおすすめします。
例えば1小節に1音だけ伸ばすとしても、その1音はいくつもの音符に分割することができます。
伸ばした音を揺らしながら分割するのが、ヴィブラートだと考えると分かりやすいかと思います。
譜面にはヴィブラートの記号しか記載されていませんが、フレーズ毎に揺れ幅と、揺れのスピードを変化させることにより、格段に表現力が増します。
リズムや曲調に合わせ様々な種類のヴィブラートを使い分けるられるように、耳を使って演奏するように意識してみて下さい。
この他に大正琴にはトレモロという奏法がありますが、こちらは後程、詳しく解説していきたいと思います。
続いては大正琴の練習方法について解説していきます。
練習方法
まずは大正琴を弾く為の基礎知識から始めます。
大正琴の基本の1つに、指番号というものがあります。これは各指に振り分けられた番号ですので必ず覚えるようにして下さい。
指 | 親指 | 人差し指 | 中指 | 薬指 | 小指 |
番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
それから大正琴には、各音符に振り分けられた数字符と指番号もあります。
音符 | 数字符 | 指番号 | 指 |
ド | 1 | 四 | 薬指 |
レ | 2 | 三 | 中指 |
ミ | 3 | 二 | 人差し指 |
ファ | 4 | 一 | 親指 |
ソ | 5 | 四 | 薬指 |
ラ | 6 | 三 | 中指 |
シ | 7 | 二 | 人差し指 |
ド | 1・ | 一 | 親指 |
大正琴は、この基本さえ覚えてしまえば、簡単に演奏することができる楽器ですので、指使いなどの基礎練習を欠かさずするようにしましょう。
指使いの練習だけでは飽きてしまいますので、指使いの練習に向いていそうな楽曲を選んで楽しみながら練習することをおすすめします。
続いてはトレモロ奏法について解説していきます。
初心者が上手く演奏できるトレモロの仕方
トレモロ奏法は1つの音を小刻みに連続して鳴らす弾き方です。この奏法では1つの音を長く持続して響かせる(ロングトーン)の雰囲気を演出することができます。
トレモロ奏法のコツ
・肩と手首の力を抜きます。
・ピックは1cmほど先を出して持ち、更にピックの先端が弦に対し2〜3ミリほど接するようにして、垂直に軽く素早く振ります。
・トレモロ奏法はタイミングやスピード、強弱や音の粒の細かさなどがポイントになります。
これら3つに注意して練習を積み重ねるようにして下さい。
トレモロ奏法は安定したリズム感と、音の粒を均一にすることが非常に大切です。
初心者がトレモロ奏法をしようとすると、どうしても無駄な力が入ってしまいがちですが、無駄な力が入るとリズムは乱れ、強弱はバラバラになります。
力を抜くことで、音の粒は均一になりリズムも安定しますので、腕や肩や手首に無駄な力が入っていないか意識しながら練習して下さい。
そして、弦楽器は力を抜くことで抜けが良く、綺麗に響く音になります。
個人的におすすめの方法はピックを握る指には、ピックがブレない位の力を入れ手首からは力を抜く感覚を身に付けることです。
慣れないうちは難しく感じますが、この感覚さえ掴めば安定したトレモロ奏法が可能になります。
また柔らかいピックを使うと、ピックのしなりの効果で音が響きやすくなります。上手く音が鳴らない場合はピックの厚みを変えるのも1つの方法です。
まとめ
大正琴は基本さえ覚えてしまえば簡単に演奏できる楽器です。
ある程度、演奏ができるようになったら、確実な消音、ヴィブラート、トレモロの強弱とリズムの安定感を意識するようにしてみて下さい。
どの弦楽器でも共通しているのは、上手い人ほど、これらのことを完璧にこなします。
中でもヴィブラートには揺らし方について決まりも無ければ、正解も無いので難しくも奥が深い奏法です。
先程も解説したように1音を何分割するかを意識しながら練習を重ねていくと良いです。
個人的におすすめなヴィブラートの勉強方法は大正琴だけではなく、他の楽器のヴィブラートを研究することです。
特にクラシック・バイオリンのヴィブラートは非常に参考になりますので、機会がありましたら是非、参考にしてみて下さい。
最後に個人的におすすめのピックの使い方を、ご紹介したいと思います。
小さな音は弦に対してピックを浅く、大きな音は弦に対してピックを深く当てることをおすすめします。
小さな音と弱い音、大きな音と強い音は似ているようで実は違います。
小さな音を出す為に手首のスナップを弱くすれば音は響かず弱い音になり、大きな音を出す為に手首のスナップを強くすれば、強い音になり音は割れてしまいます。
しっかりと弦と楽器本体が響くピッキングを保ったまま、小さな音と大きな音をコントロールするのが強弱です。
ピッキングのスナップを一定のままに保ち、弦に対してピックが当たる面積を変えて音の強弱をコントロールすることが、ピックで弾く弦楽器を演奏する際に非常に重要なことです。
今回の記事を参考に大正琴を楽しんでいただけたらと思います。