ピアノを上手に演奏しようと思ったとき、楽譜に書いてある音楽用語を正しく理解して演奏することが大切ですよね。
今回は、そんな数多くの音楽用語の中でもよく見かける音楽記号の1つ、「アラルガンド」の意味と奏法について分かりやすくご説明します。
また、練習方法についてもまとめていきますので演奏の質を上げる参考にしていただければと思います!
まずは、基本となる「アラルガンド」の意味やテンポについて見ていきましょう!
【アラルガンド】の意味やテンポ

アラルガンドの意味
「アラルガンド」はイタリア語で、「allargando」と書きます。
その意味は、「だんだん遅くしながらだんだん強く」です。
似たような意味の記号にリタルダンドがあります。
こちらはritardandoと書き、「だんだん遅く」という意味を持っています。
楽譜ではrit.と書かれることもあります。こちらは見たことがある人も多いのではないでしょうか。
また、強弱記号にクレッシェンド(crescendo)というものがありますね。
意味は「だんだん強く」です。
つまりアラルガンドは、リタルダンドとクレッシェンドを合わせたような意味を持っているということですね。
アラルガンドの語源
そんなアラルガンドですが、この言葉はどこから生まれたのでしょうか?
今回は、その語源となった単語を紹介します。
アラルガンドの語源となった言葉は「allargare」といいます。
読みは「アッラルガーレ」、意味は「拡張する」「大きくする」といったものです。
アラルガンドはこの言葉を起源に生まれていますので、演奏する際ただ強くするのではなく、音が立体的に拡張していくイメージを持ちましょう。
意味 | だんだん遅くしながらだんだん強く |
語源 | allargare。「拡張する」「大きくする」 |
イメージ | 音がどんどん拡張していくようなイメージ |
では次に、「アラルガンド」を実際に演奏する際の正しい奏法、表現の仕方について
確認していきましょう!
正しい奏法・表現の仕方

「アラルガンド」の意味や語源について確認しましたので、次は正しい奏法や表現の仕方について、見ていきましょう。
正しい奏法
では、まずは復習です!
アラルガンドの意味は「だんだん遅くしながらだんだん強く」でしたね。
加えて語源の「allargare」は「拡張する」という意味を持ちます。
よって、ただ遅く強くするのではなくだんだん音が縦にも横にも深くなっていくように弾くのが正しい奏法です。
表現の仕方
続いては、表現の仕方です。
前に説明した通り、アラルガンドを表現する際は、強く遅くなるにつれて、音に深みが出るように演奏することが大切です。
よってピアノでそれを表現するには、ピアノのタッチをどんどん深くしていったり、音色を徐々に厚みのあるものに変えていったりしてみましょう。
さて、ここまでアラルガンドの意味や奏法などに触れてきましたが、どうでしょうか。
「アラルガンド」と1つの言葉で言われても、意識することがたくさんあるよう、感じたかもしれません。
ですが、次に述べるような練習を重ねることで、効果的な「アラルガンド」を表現することができます。
では、その方法について見ていきましょう!
練習方法

「アラルガンド」の練習は大きく分けて3段階です。
①だんだん強くする練習
②だんだん遅くする練習
③だんだん遅くしながらだんだん強くする練習
何やら複雑に見えるかもしれませんね。
正確にこの3つに分けなくても構いません。
それぞれの段階で、練習の際に考えたいことについて説明します。
もちろん弾き慣れていない方は、1つずつ着実に練習を進めることが大切です。
では、1つずつ見ていきましょう!
①だんだん強くする練習
この練習を行う際に注意することがあります。
それは、アラルガンドに入る前のテンポで弾くということです。
アラルガンドの他に、テンポの指示があれば変わってきますが、特に指示がない場合、アラルガンドは基のテンポから遅くしていくことが大切です。
曲のテンポにも、作曲家のこだわりが込められています。
テンポを崩し表現する練習は②で行いましょう。
まずは正規のテンポ通りに、だんだん強くする練習をしてみましょう。
また、演奏する際はアラルガンドのある部分だけを弾くのではなく、アラルガンドした後の1~2小節まで弾き切りましょう。
この1~2小節のテンポは後ほど調節するため、変える必要はありません。
これを行うことで、より先を見据えた演奏ができるようになります。
②だんだん遅くする練習
基のテンポの中で徐々に強くする練習を行ったら、次に行うのはだんだん遅くする練習です。
ここでは、「どのくらいのテンポまで遅くするのか」「どのくらいのペースで遅くするのか」
この2つを決めます。
「どのくらいのテンポまで遅くするのか」について説明します。
これは、アラルガンドの後のテンポまで遅くする場合や、アラルガンドでとても遅くした後テンポを戻す場合などがあります。
他の音楽記号で指定がされていなければ、弾き比べて曲想に合う方を選択しましょう。
続いて、「どのくらいのペースで遅くするか」です。
こちらも、アラルガンドが何小節にわたってかかっているかやどんな曲想かによって変わってきます。
アラルガンドのかかっている最後の1小節で急に遅くしたり強くすることと合わせて少しずつ遅くしたり様々な演奏方法があります。
こちらも弾き比べて、曲想に合う方を探しましょう。
③だんだん遅くしながらだんだん大きくする練習
①と②を行ったら、最後にそれらを組み合わせて練習します。
大切なのは、
- アラルガンドを始めるテンポ
- どのくらい、どのペースで強くするか、
- どのくらい、どのペースで遅くするか
この3点です。
この3つを意識しながら、①と②で行った弾き方を生かし、再度曲想に合った「アラルガンド」を考えていきましょう。
では最後に、今日お話しした内容についてもう一度、おさらいしていきましょう。
まとめ

さて、今日は「アラルガンド」について見ていきました。
アラルガンドの意味は「だんだん遅くしながらだんだん強く」でしたね。
語源となった「allargare」には「拡張する」「大きくする」という意味があることから音が遅く、強くなるだけでなく、立体的に拡張していくような表現を意識することが必要でした。
練習をする際は、
「だんだん強くする練習」
「だんだん遅くする練習」
「だんだん強く、遅くする練習」
この3段階に分けた上で、曲想に合うよう練習することが大切でしたね。
音楽記号を覚えていくときに、単語の意味を覚えていることは大切です。
しかし、こういったプラスアルファの内容もセットで覚えておくと表現のヒントになったり、ピアノに対する考え方が育っていったりします。
ぜひ、実際に曲を弾きながら、覚えてみましょう。
また、これは「アラルガンド」に限りませんが、音楽記号の指示は一見とてもアバウトなものです。
ですが、そこには作曲した方の思いが込められています。
今回紹介したような弾き比べなどを通して、どう弾くことでその曲の良さが引き出されるか考えてみると、作曲家のちょっとしたこだわりや一味違った面白さが見えてくるかもしれません。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
皆さまが楽しく、ピアノを演奏できることを願っています。