クラリネットを吹いたことのある人なら1度は経験したことがあると思われる「キーッ」というリードミス。
演奏していて、いいところで思わずリードミスが出てしまった時はとても気まずいですよね。
そんな嫌なリードミスはなぜしてしまうんでしょうか?その原因は一体なんでしょうか?
リードを変えたり、楽器屋さんでバランス調整をしてもらったら治るものなんでしょうか?
実はこのリードミスが起こる原因は複数あります。
そこで今回は、クラリネット吹きの課題であるリードミスが起こる原因とその対策について紹介します。
目次
クラリネットのリードミスはミスではなく倍音!
「リードミス」というと、何かミスをしてしまっている印象がありますよね。
ところが、ミスではなく倍音のためとなります。
「倍音」というとなんだか難しそうですが、実は音というのは1つの高さが鳴っているだけではないのです。
音は何かが振動して起こるもので、その振動の波を「周波数」と言います。
周波数とは1秒間に繰り返される波の数のことで、吹奏楽をされておられたらチューニングの際に441Hzとか442Hzというのを聞いたことがあると思いますが、この数字も周波数のことです。
そして倍音というのは「基本となる音の周波数の整数倍の周波数を持つ音」のことです。
もし100Hzの音を基本とした場合、2倍の200Hz、3倍の300Hz・・・といった音が「倍音」となります。
そして、音を出したときには基本になる音が1番よく聞こえますが、同時に倍音も小さく響いているのです。
そこに下記に述べるなんらかの理由によってリードミスが起きる状態になった際に、倍音を拾ってしまいその音が大きく聞こえるのです。
それでは、具体的にどんなことが原因となっているでしょうか。
1つずつみていきましょう。
アンブシュアーが悪い
アンブシュアー(マウスピースを咥えた時の口の形)が悪いと、リードミスをしてしまう要因となります。
マウスピースの噛みすぎ
特にマウスピースを噛みすぎた状態で息を吹き込むことで、本来鳴ってほしい高さよりも更に上の倍音が鳴ってしまうことで「ピーッ」という高い音=リードミスとなってしまいます。
普段の練習ではリードミスしなかったのに本番になるとしてしまう、というのも、緊張して口の筋肉に力が入ってしまうから、という理由がほとんどです。
マウスピースの緩めすぎ
では逆に、力を抜いて口を閉めなければよいのか?というと、そうでもありません。
口の力を抜いてしまうと適切な圧力がかからなくなり、本来出したい音の振動部分に力がうまく伝わらず余計な部分まで振動してしまい、「ギャボッ」というリードミスにつながってしまいます。
上顎と下顎のバランス
また、下唇を口内に巻いてリードに接していると思いますが、この下唇がしっかり巻けていないと一定の力でリードを支えることができず、歯の位置が動きやすくなり上顎と下顎のバランスが崩れて、思わぬところでリードミスをまねいてしまいます。
下唇は極力薄く保つことを意識して、口に力を入れすぎずリラックスしていつもの練習を思い出して演奏しましょう!
リードやマウスピースが合っていない
リードミスはリードの厚さ(3・3半など)によって影響されることもあります。
リードは数字が大きくなるほど厚く硬くなり、薄いリードのほうが音を出す際に少ない息と圧力で楽に音にしやすいですが、必要以上に息を吹き込むと振動数が増えて高い倍音(リードミス)が出やすくなります。
もちろん適切な息の量をキープしていればよいのですが、本番などで緊張して余分な力が入ってしまったときに事故が起こりやすくなりますので、リードミスが多くて気になる人は1つ上の厚さのリードに変えてみたり、同じ型番でも少し硬めのリードを選んでみるとよいでしょう。
リードの調整
また、リードを削って厚さを調節することも試してみましょう。
もちろん薄いリードを削って薄くしてしまってはさらにリードミスを起こす可能性があるので、1つ上の厚いリードをサンドペーパー(紙やすり)で少し薄くして自分にあった厚さまで調節します。
リードの削り方
サンドペーパーはなるべく目の細かい耐水性のものを使用しましょう。
目安としては400番あたりがおすすめです。
(数字が小さいほど目が粗く、大きいほど目が細かくなっていきます)
楽器専門店で売っているリムペーパーを使用してもよいでしょう。
削りかたとしては、サンドペーパーを使いやすいサイズに切ってリードの表面を優しくなでるようにペーパーをかけます。
「リードを薄く削る」というよりは「表面をきれいにする」くらいのつもりでちょうどよいです。
削りすぎてしまうと元には戻せませんので、少し削っては吹いて確認して、もう少し調整が必要だと感じたらまた削るようにしましょう。
リードカッターを使う
他にもリードカッターというものもあり、こちらは爪切りのような形状をしていてリードの長さをカットするための道具ですが、こちらも一気に切りすぎず0.5mmずつカットしましょう。
トーンホールがとじていない
アンブシュアーやリードに問題がないのに「キャッ」という鋭い音が鳴ることもありますが、これは運指の早い動きをする場合などに指が追いついていないときにトーンホール(指穴)をきちんと塞げていなかったり、何かのはずみにトリルキーなど他のキーに指が触れてしまった時に起こります。
クラリネットは楽器の穴を指で塞ぐ必要がありますので、初心者の人がよくキッキッといわせてしまうのはこちらの場合も多いです。
特になりやすい音を見つけ、その音の運指を見て穴がきちんと塞がっているかどうか確認し、ロングトーンなどの基礎練習を行う際に指に無駄な力が入らないよう体に染み込ませていくことで、少しずつ改善されていくでしょう。
ソルフェージュ
ソルフェージュとは楽譜を読むことを中心とした基礎訓練のことですが、ここでは正しい高さ歌をうたうことや、演奏するメロディーや和音を聴き取る能力のことを指します。
なぜリードミスにソルフェージュが関係するのでしょうか?
先ほども「リードミスは倍音」という表現をしていますが、本来鳴るべき高さの音ではない倍音が鳴っている、ということは正確な高さの音を取ることができていない、ということです。
ただ楽譜に「ド」と書いているから「ド」の運指をして息を吹き込めば「ド」が鳴るのではなく、頭の中で「ドの音の高さはこれくらい」と想像してから音にする必要があります。
「音程が悪い」「ピッチが悪い」という悩みにもこのソルフェージュ力は関わってきますので、リードミスしやすいところは一度声に出して歌ってみて、実際その高さで演奏してみるようにしましょう。
タンギング
タンギングが強すぎる場合、リードミスを起こすことがあります。
よくタンギングのことを「舌つき」と表現している場合がありますが、舌が「つく」ときに音が出るのではなく「引く」ときに音が出るので、必要以上に舌をリードに押し付けてしまうとその反動で勢いよく舌が離れてしまい「ピッ」という音が鳴ってしまいます。
舌がリードに触れるか触れないかくらいで音を切ってみたり、TuTuTuではなくDuDuDuやRuRuRuのように柔らかな発音で練習してみてください。
重心が高い
また、楽器を構えた際の重心が高くなっていると、リードミスを起こしやすくなります。
アンブシュアーに力が入っていたり、指で握りすぎて肩が上がるような状態だと重心が高い位置にあります。
座って演奏する場合の重心
座って演奏する際には、椅子の前半分に腰掛けるように座り、猫背にならないように背中はまっすぐにして足をしっかりと床につけましょう。
そうすることで足とおしりで体を支えることができるため、重心が下になり安定して演奏することできます。
立って演奏する場合の重心
立って演奏する場合は両足を少し開いて均等に力が入るように立ちましょう。
足を揃えて立つと頭に重心がくるため不安定になります。
どちらの場合も上半身から力を抜き、足や腰に少し体重をかけるように演奏するとリードミスに繋がりにくくなります。
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レジスターキーの練習
レジスターキーは左手親指の部分にあるキーです。
ここを押さえる運指の練習をすることで倍音練習ができ、リードミス軽減につながります。
「ミーーーシーーー」
「ファーーードーーー」
「ファ♯ーーード♯ーーー」
のように、「低い音から高い音へレジスターキーを使って音を変える」という練習の一番の目的は、「低い音から高い音まで全て同じ息と口で吹く」ことにあります。
普段演奏している際に高い音が出てくると、ついつい口が締まってきつい音になってしまったり、ピッチが悪くなってしまいがちです。
上にも述べたとおり、アンブシュアーがきつくなったりソルフェージュができていないとリードミスにつながるため、普段からレジスターキーを使ってしっかり音を取る練習をすることが必要となります。
高い音も低い音も同じ息で
その際に気をつけたいことは、「高い音がきちんと鳴る息と口で低い音も吹く」ということです。
低い音からレジスターキーを押して高くはできたけど、レジスターキーを離すと音が鳴らないようでは「口が変わっている」ということですので、低い音も高い音もきちんと鳴る状態の息を吹き込むよう心がけましょう。
楽器の調整
上記のことを気をつけていてもリードミスが出てしまう場合は、物理的に楽器の問題かもしれません。では具体的にクラリネットがどのような状態になっている時にリードミスが起きてしまうのでしょうか。
タンポやコルクなどの劣化
楽器のタンポやコルク、キーなどが劣化していてちゃんと塞がらない状態になっていれば、通常鳴るべき空気の流れにならないためリードミスに繋がります。
普段メンテナンスに出している楽器屋さんなどにお願いして調整をしてもらいましょう。
調整に出す頻度は?
調整に出したことがなかったり、どれくらいのスパンで調整に出したほうがいいかわからない場合、修理、リペア担当がいらっしゃる楽器専門店に年に一度は持っていきましょう。
修理する必要がないと思っていても、演奏しているうちに少しずつタンポが劣化していくものですので、定期点検をしてもらってネジ締め、オイル補充、全体のバランス調整などを行ってください。
楽器を万全の状態で保つことで、不必要なリードミスを防げるかもしれません。
クラリネットでリードミスを起こす原因となる8つのポイント
①:アンブシュアーが悪い
- マウスピースの噛みすぎ
- マウスピースの緩めすぎ
- 上顎と下顎のバランスが崩れている
②:リードやマウスピースが合っていない
- リードの調整をしてみる
③:トーンホールがとじていない
④:ソルフェージュに気を付ける
- 正確な高さの音を取ることができていない
⑤:タンギングが強すぎていないか
⑥:楽器を構えたときの重心が高い
- アンブシュアーに力が入っている
- 指で握りすぎて肩が上がっている
- 座って演奏する時に背中をまっすぐにして足をしっかり床についているか
- 立って演奏するとき、上半身から力を抜き、足や腰に少し体重をかけて演奏しているか
⑦:レジスターキーを使うときに、しっかり音を取れているか
⑧:楽器の調整は大丈夫か
- タンポやコルクの劣化はしていないか
まとめ
今回はクラリネットでリードミスを起こす原因となる8つのことを紹介しました。
リードミスをしてしまう原因は、腕の問題や楽器の問題などさまざまですが、クラリネットでリードミスはプロでもするのでそこまで気にする必要はありません。
どんなに上手なプロでも、リードミスをするときはしてしまいます。
- 息のコントロールがうまくいかなかったとき
- 普段より緊張してしまったとき
人間ですから毎回同じコンディションで演奏ができるわけではありません。
リードミスがならないように気をつけて練習するよりも、いい音がコントロールできるよう日頃の練習に集中したほうが結果的にリードミスを防ぐ1番の解決方法です。
もちろん開き直ったりあきらめたりすることは良くないですが、怖がってしまう必要はありません。
「リードミスが怖い・・・」
と縮こまってしまったり、
「噛んでしまったらリードミスになってしまう!」
と気にしすぎて口をゆるめてしまったりすることは逆効果です。
普段の基礎練習などでアンブシュアーや運指に気をつけながら、リラックスして安定した演奏を目指していきましょう。
クラリネットのリードミスは、その原因をしっかりと知り、対策を行えば改善できるものです。
必要以上に怖がってしまわないよう、普段の練習でできることをやっておきたいですね!