バンドスコアや単独の楽譜としても特殊な書き方をされているドラム。
パーカッションを担当していて、「読み方がわからないからいきなり振られても無理!」「他の楽器だけは初見でもどうにかなるけど、ドラムだけはどうしても…」など読めたら回避できた苦い思いをしたことがあると思います。
ひし形やマル・バツなどパッと見ただけではわからない記号がズラリと並ぶドラム譜。
今回はこのドラム譜の読み方と演奏の仕方を見ていきたいと思います。
ドラム譜の記号の種類と意味
ドラムは他の楽譜と違って「音を指定された拍の数だけ伸ばし続ける」ということがありません。また、グロッケンやマリンバなどの音階のある打楽器でもありません。
この拍数の指定もなく、音階も存在しないドラム譜に書いてある記号が何を意味しているかというと、たたく楽器の種類を表しているのです。
それではまず、ドラムに用いられる楽器の種類と表し方を見ていきましょう。
・ドラムに用いられる楽器の種類
ドラムは
スネアドラム
バスドラム
タム(ハイタム・ロータム・フロアタム)
ハイハット
シンバル(クラッシュシンバル・ライドシンバル)
と、合計で8つの楽器で構成されています。
これらを五線譜の上で表したのがドラム譜となります。
・ドラム譜での各楽器の表し方
ドラム譜において太鼓類(スネアドラム・タム3種・バスドラム)は黒丸で表され、シンバル類(クラッシュシンバル・ライドシンバル・ハイハット)はバツで表されることが多いです。(譜面により表記の仕方は異なる場合があります)
また、この五線譜上の位置にも意味があり、ドラムセットの高い音が出るものから順に、五線の上から下へ配置されているのです。
ドラム譜に表されている記号をまとめると以下の画像のようになります。
ドラムのバンドスコアの読み方と演奏の仕方
では実際にバンドスコアやドラム譜を用いる際の読み方と演奏の仕方を見ていきましょう。
・ドラム譜でのタイミングの表し方
以下の楽譜はドラム譜の一例です。
4分の4拍子(1小節に四分音符が4つ入る)のリズムパターンで、使われているのはハイハット・バスドラム・スネアドラムの3つになります。
先ほどドラムには拍数の指定はないと書きましたが、この楽譜には四分音符や八分音符などが用いられているのがお分かりになると思います。
これは指定された長さまで伸ばすという意味で用いられているのではなく、この音は指定された音符の始まりと一緒に叩くという指示として、音符が用いられているのです。
そのため、最初のバスドラムとハイハットは四分音符の長さまで伸ばすのではなく、小節の拍に対応した四分音符の位置で叩くという考え方でとらえてください。
・スコアでの読み方、演奏の仕方
上のドラム譜をもとに、ベースと合わせた物(スコア)が以下の楽譜になります。
バンドスコアでは、ボーカル(Vo.)コーラス(Cho.)ギター(Gt.)キーボド(Key.)ベース(Ba.)ドラム(Drs.)と主に主旋律を担当する楽器から楽曲の骨組となるリズムを担当する楽器へ上から下に書かれています。
また、ドラムはリズム隊となるので一番下に書かれていることが多く、ベースと同じ動き方をすることが多くなるので、意識して読み進めるとよいでしょう。
・ドラムでの演奏の仕方
先ほどのスコアからドラムの部分を抜き出しました。
この4小節のドラム譜の中に着目すべき点があるのですが、それはどこでしょうか?
3か所あるのですがわかりましたか?
正解は
①バスドラムの符幹の向きが逆
②1小節目の2拍目のスネアドラムの記号
③4小節目の記号
でした!
今の注意点を詳しく説明すると、
①バスドラム・ペダルハイハットは足、他の太鼓・シンバル類は左右の手を使って演奏します。符幹が上は手・下は足と覚えましょう。
②スネアドラムの記号は本来黒丸ですが、今回の記号はバツで表されています。ここで注目するべきなのは、記号の下に書いてある「Rim」の表記です。
これはリムショット(ドラムのふちをスティックで叩く)という奏法で演奏することを表しています。
何か特別な奏法が必要になる際は必ず書いてありますので、読み落とさないようにしましょう。
③記号は反復記号の一種で、直前の小節内の音を同じように演奏します。
この他にも注目するべき点は多々あるので、その中でも読み間違いやすいところを紹介していきます。
読み間違えやすいところ
先ほど、符幹の向き・リムショット・反復記号の3つを紹介しました。
その他にも読む際に注意が必要なものがあるので、説明していきます。
・ひし形・丸の中にバツ
この記号が記してある位置をよく見てみましょう。五線譜の第五線(最も上の線)に書かれる記号は何でしたか?
そう、ライドシンバルです。
ライドシンバルをこの表記の例として提示しましたが、楽譜製作者によってはクラッシュシンバルをこの表記で書くなど、明確なルールはありません。
実際の音と表記を比べて、記号と音を確認することが必要になります。
・ハイハットの表記
スコアのハイハットはバツマークの上に○や+でオープン・クローズを表していますが、何もついていない場合があります。
ハイハットは基本クローズの状態で叩き、必要な時にオープンするので、オープンの○が表記されない限り、クローズの+は書かれません。
・バンドスコアでドラムの下に「Perc.」の表記がある
このPerc.の表記はパーカッション(Percussion)の略称でドラムの他にカウベルやタンバリン・マラカスなど指定された打楽器を用いる際に表記されます。
手が空いていればドラムと両立することは可能です。ライブではパフォーマンスの一種としてボーカルが演奏する場合もあるので、バンドメンバーと相談しながら決めていきましょう。
・スコアの進み方がわからない
先ほど小節の繰り返しを説明しましたが、複数の反復記号を組み合わせることで複雑になっていきます。
上の楽譜に表記されている反復記号は
リピートマーク(記号の間の小節を繰り返す)
1番カッコ・2番カッコ(1番カッコが出てきたら左のリピートマークに戻り、2回目は1番カッコを飛ばして2番カッコを演奏して先へ進む)
ダル・セーニョ(セーニョの位置に戻る)
セーニョ(ダル・セーニョから戻ってくる)
コーダ(次のコーダへ飛ぶ)
以上の5種類です。
この場合の演奏順は
A→B→A→B→C→D→E→F→C→D→E→G→H→I→J→K→
C→D→E→F→C→D→E→G→H→I→L→M→N→O
となります。
まとめ
特殊なドラム譜の読み方と注意するべき点についてご説明していきました。
対応する記号や位置、タイミング・反復記号など覚えることは沢山ありますが、まずは
記号と位置は叩く種類と演奏法
音符の長さは叩くタイミング
この2つを意識してドラム譜を読んでみてください。
この2つを意識すると、テンポを落とした状態で練習が始められるため、時間はかかりますが必ず演奏できるようになります。
落としたテンポから確実に練習することで、指定のテンポで演奏した場合にズレが少なくなり、ズレのないリズムはメンバーやお客さんから一目置かれるようになるはずです。
また、ドラムセットの対応する位置・記号と反復記号はバンドスコアを購入した場合は巻頭か巻末に書いてあることが多いため、必ず確認するようにしましょう。
演奏のクオリティを上げるためにも、まずはドラム譜の読み方をしっかりと身につけてくださいね。