数万円で買えるものから1億円以上の銘器まで、楽器の中でも特に価格の幅が広いのがバイオリンです。
なぜこんなにも値段の違いがあるのでしょうか。
バイオリン初心者の方は、「どれくらいの値段の楽器を買うのがおすすめなの?」と悩んでしまうかもしれませんね。
この記事では、初心者のバイオリンや弓の選び方、おすすめの楽器をご紹介します。
バイオリンの値段の相場と値段が違う理由
初めに、バイオリンの値段の相場や、値段が違う理由を見ていきましょう。
バイオリンの値段の相場
バイオリンの値段の相場とその価格帯の特徴を非常に大まかに表すと以下のようになります。
(大人用の4/4バイオリンの相場です)
相場1万円以下 | 大量生産された楽器で質はよくない |
相場10万円以下 | 中国製のものなら出来の良いものもある |
相場20万円~50万円 | ヨーロッパの素材を使用した楽器も買える |
相場50万円~100万円 | 作りの良い楽器が多くなる |
相場100万円以上 | 優れた新作楽器が増える。古いものは鑑定書付きも |
相場1000万円以上 | オールドバイオリンと呼ばれるビンテージものが多い |
バイオリンの値段が違う理由
バイオリンの値段にこのような違いがあるのは、以下の理由からです。
- 作り方の違い
- 原産国の違い
- 作られた年代の違い
①作り方の違い
まず、①作り方の違いについてです。
大量生産された楽器は、パーツの作成を機械化し、どの楽器も同じように作ることでコストを下げています。
一方、手工品の楽器は職人の手で一つずつ作られているため、まったく同じ楽器は存在しません。そのため価値が高くなります。
②原産国の違い
次に、②原産国の違いがあります。
バイオリンはドイツやフランス、ルーマニア、中国など、様々な国で作られています。
中でも価値が高いのは、やはり本場イタリア産のバイオリン。
イタリアのクレモナという都市は「バイオリンの聖地」と言われるほど、古くからバイオリン制作の盛んな地域です。
数億円にもなる銘器「ストラディバリウス」もクレモナで制作されました。
そのため、イタリア産であるというだけでバイオリンの価格は高くなることが多いです(ただし、イタリア産だからといって必ず良い楽器とは限らないのですが…)。
③作られた年代の違い
最後に、③作られた年代の違いについてです。
バイオリンが作られた年代は大きく3つに分けられ、
- 1600~1890年:オールド
- 1890~1945年:モダン
- 1945年~:新作
と呼ばれます。保存状態にもよりますが、年代が古い方が、価格が高くなる傾向にあります。
ストラディバリウスなどの高価な楽器は「オールドバイオリン」と言われるものです。
このように非常に価格の幅が広いバイオリンですが、初心者はどのようにバイオリンを選べばいいのでしょうか。
初心者のバイオリンの選び方
初心者の方がバイオリンを買おうと思ったとき、通販サイトなどを見るのではないでしょうか。
そこで目にするのが、1万円ほどでバイオリン・弓・松脂など必要なものがそろっている初心者セットだと思います。
1万円くらいの初心者セットを買ってもいいの?
確かに値段が安いのは魅力的ですが、このような初心者セットのバイオリンはおすすめしません。
安価すぎる楽器にはプレス加工で作られているものがあります。
プレス加工とは、薄い板に熱を加えて変形させることで、このような作り方をしたバイオリンは強度がなく長持ちしない上、音色もよく響きません。
丁寧に厚い板から削り出して作られているバイオリンは丈夫で、音の出しやすさや響きの良さも違います。
初心者だからといって適当な楽器で良いわけではありません。
むしろ、音の良い楽器を使った方がバイオリンの上達が早くなるかもしれません。
初心者のバイオリンの選び方
では、楽器を選ぶときに注意すべきポイントは何でしょうか。
それは、以下の3つです。
- 作りがしっかりしているか
- 弾きやすい楽器か
- 楽器のサイズ感が体に合うか
まずは作りがしっかりしていることが大事です。
先述の通り、プレス加工ではなく丁寧に作られた楽器を選びましょう。単板を削り出して作ったものかどうかを確認してください。
購入の際は必ず試奏し、弦を押さえず開放弦を弾いたときによく響くか、音を出しやすいかも確認しましょう。
また、同じ4/4バイオリンでも楽器のサイズにはわずかに個体差があります。ボディの厚みや、顎当てからネックまでの長さなどが微妙に異なるのです。
自分が楽器を構えたときに違和感がないか確認してみてください。
初心者の方は、なかなか自分では楽器の違いがわからないかもしれません。
そんなときは、バイオリンの先生に同行してもらったり、楽器屋さんにアドバイスをもらったりすることをおすすめします。
初心者のバイオリンの選び方
- 1万円程度の初心者セットを買うのは避ける
- 作りがしっかりしているものを選ぶ
- 弾きやすい楽器か確認する
- 楽器のサイズ感が体に合うか確認する
初心者におすすめ楽器
バイオリンを続けるつもりであれば、初心者であっても20万円以上の値段の楽器を買うのがおすすめなのですが、「いきなり20万も出せない!」と思われるかもしれません。
その場合は、いずれ買い替えることを前提に、10万円前後で楽器を探してみましょう。
カルロ・ジョルダーノ VS-2
マックコーポレーション株式会社のブランド、カルロ・ジョルダーノのバイオリンセットです。
10万円を切る安価でありながら、表板・裏板ともに単板削り出しで作られています。
全国の多くのバイオリン教室にて、初心者用バイオリンとして採用されています。
アンドレアス・イーストマン VL-80
世界でベストセラーとなっている、イーストマンブランドのバイオリン。
こちらも単板削り出しで作製されています。
値段の割に楽器の鳴りがよく、入門モデルとしておすすめと言われています。
バレンテ VN-80
バイオリンの通販を行うバイオリンパレットのブランドです。
ヨーロッパ産の木材を使用しながらも、中国の工場で作製することによりコストを最低限に抑えています。
【初心者におすすめの10万円前後のバイオリン】
- カルロ・ジョルダーノ VS-2
- アンドレアス・イーストマン VL-80
- バレンテ VN-80
初心者の弓の選び方
続いては、バイオリンの弓の選び方についてご説明します。
「良い楽器を買えば弓は安いものでも問題ない」と言うのは大間違いです。
安価で質の悪い弓を使っていると、楽器の音色を引き出すことができません。バイオリンの弓も、楽器本体と同じように質の良いものを選ぶことが大事です。
良くない弓を使っていると、変な弾き癖がついてしまうこともあります。
良い弓を選ぶには、
- 強度があること
- 軽量で重量バランスが良いこと
を確認しましょう。
バイオリンの弓は木製とカーボン製があり、木製にもブラジルウッド材とフェルナンブコ材のものがあります。
ブラジルウッド材の弓は低価格ですが強度ではフェルナンブコ材のものに劣り、演奏時に余計な力が入ってしまうこともあります。
また、弓を持ってみたときに重すぎると演奏しにくいです。あまりにも重い弓は選択肢から外しましょう。
重量バランスを確認するには、ゆっくりと大きなボウイングで、圧力をかけて楽器を弾いてみてください。
このとき弓が跳ねてしまったり不安定になったりするようであれば、弓のバランスが自分にあっていないと言えます。
初心者の弓の選び方
- 弓も楽器と同様に質のいいものを選ぶこと
- 強度があるものを選ぶ
- 軽量で重量バランスが良いものを選ぶ
初心者におすすめの弓
一般的に、バイオリン本体の3分の1~2分の1ほどの値段の弓を買うと良いと言われます。最大でもバイオリン本体と同じくらいの値段と考えておくと良いでしょう。
先ほど、バイオリン本体は10万円以下でおすすめをご紹介したので、弓は5万円前後のものをご紹介します。
アルシェ A1001
数少ない国産ブランド、アルシェの弓です。
フェルナンブコを使い、初心者にも扱いやすいバランスを追及して作られています。
バレンテ B-60
おすすめのバイオリンでもご紹介したブランド、バレンテの弓です。
初心者から次のステップへ進む際にもおすすめの弓で、フェルナンブコを使っており強度も十分です。
コーダボウ PRODIGY
アメリカの代表的なカーボン弓メーカー、コーダボウの弓です。
カーボン弓は木製と比べて温度や湿度による影響を受けにくいのが特徴。
音色が固くなる傾向があり好き嫌いが別れるところですが、木製の弓と併せて持っておくのも良いでしょう。
初心者におすすめの弓
- アルシェ A1001
- バレンテ B-60
- コーダボウ PRODIGY
まとめ
この記事では、初心者のバイオリンや弓の選び方、おすすめの楽器をご紹介しました。
バイオリンを始めたばかりのうちは、高い楽器を買うのは気が引けてしまうかもしれません。
しかし、安易に1万円程度の安すぎる初心者バイオリンセットを買ってしまうと、結局長くは使えません。このような楽器は楽器屋さんでも修理をしてもらえないことが多く、買い替えるときに下取りもしてもらえないのです。
また、質の悪いバイオリンで練習することは上達の妨げにもつながります。
最低でも10万円前後のものを選び、長くバイオリンを続けられそうであれば、それを下取りしてもらって、より質の高いバイオリンに買い替えてみてはいかがでしょうか。