フルートが頭部管・胴部管・足部管の3つの部品からできているのに対して、ピッコロは頭部管・胴部管しかないという違いがあります。
この部品のうち、頭部管がピッコロの音程や音色に大きく影響することをご存知でしょうか?
チューニングの際は頭部管を抜くことで音程を調整します。また、頭部管の材質には種類があり、それぞれ音色に違いがあるのです。
この記事ではピッコロの頭部管の音程や音色、抜くときの注意点について説明していきます。
まずは、頭部管のみで吹いたときの音程と音色について見ていきましょう。
ピッコロ頭部管のみで吹いた音程と音色
ピッコロの頭部管のみをチューナーの前で吹いてみると、A(ラ)に近い音が出ることがわかるでしょう。
音程を安定させるのはなかなか難しいかもしれません。
歌口に対して下向きに角度をつけて息を吹き込むと音程は低くなります。逆に音程を高くするには、浅めの角度で吹いてみましょう。
頭部管だけで3オクターブ分のAの音を出すことができます。
1オクターブ低いAを出したい場合はジョイント部分を手でふさいでみましょう。
また、高音を吹くアンブシュアにして息のスピードもより速くすることで1オクターブ高いAの音が出せます。
高音域なので出すのに苦労するかもしれませんが、お腹でしっかりと支えて鋭い息を吹き込んでみましょう。
頭部管のみを吹くと、ホイッスルのように明るくまっすぐで飾り気のない音色になります。
空気の通り抜ける雑音を少し感じることもあります。
ピッコロを頭部管のみで吹いた音程と音色
- Aに近い音を出すことができる
- 頭部管のみで3オクターブのAを出すことが可能
- 明るくまっすぐな音色が出る
頭部管のみで練習すると、アンブシュアや息遣いなどに集中することができます。
頭部管とつないだ時の吹き心地はまた少し変わってきますが、まずは頭部管だけできれいに鳴る感覚をつかむようにすると良いでしょう。
フルートも同じように、頭部管のみで音を出すことができます。では、ピッコロを頭部管のみで吹いたときの音はフルートとどう違うのでしょうか。
頭部管のみで吹いた時のフルートとの違いは?
ピッコロとフルートをそれぞれ頭部管のみで吹いたときの違いは、以下の通りです。
音程の違い
まずは音程の違いについてです。
ピッコロもフルートも、頭部管のみで吹いたときにAに近い音程となる点は同じです。
しかしピッコロはフルートより音域が1オクターブ高い楽器なので、頭部管のみで吹いたときの音もピッコロの方が1オクターブ高い音が鳴ります。
ピッコロの高音の練習時は耳栓を付けるという人もいます。特に右耳は楽器と距離が近く、高音を長時間練習すると負担が大きくなるので注意してください。
音色の違い
次に音色の違いについてです。
ピッコロの方が息のスピードが必要な分、フルートよりも音色は鋭くなります。
しかしピッコロの頭部管には以下のような歌口の形状の違いがあり、それによってまた音色が異なってきます。
歌口の形状 | 特徴 |
ノーマル型 | リッププレートのない歌口。 息を当てるポイントが分かりづらい反面、息の入れ方に自由度があるため出せる音色の幅がある。 |
波型 | リッププレートがなく、波型の形状になっている歌口。 ノーマル型のような音色の幅を持ちながらも、息を集めやすい作りになっており音が出しやすい。 |
リッププレート型 | リッププレートが付いており、音を出しやすい歌口。 フルート奏者が持ち替えをしやすい。ノーマル型、波型に比べると出せる音色の幅は減る。 |
また、ピッコロの頭部管には歌口の形状の違い以外に、素材の違いもあります。
主に金属製のものと木製のものがあるため、それぞれどのような違いがあるか見ていきましょう。
金属製の頭部管の音色
一般的に、金属製の頭部管は木製に比べて力強く、透明感のある音色と言われます。
明るい音色を出したいときや音量を出したいときにおすすめです。
よく通る音なので目立つ反面、合奏では他の人の音と比べて浮いてしまうことがあるかもしれません。
金属製の頭部管はリッププレートが付いているため、フルートとの持ち替えがしやすいという利点もあります。
金属製の頭部管の音色
- 力強く透明感のある音色
- 明るい音を出したいときや音量を出したいときにおすすめ
木製の頭部管の音色
続いては、木製の頭部管の音色についてです。
木製の頭部管は、一般的に金属製に比べてやわらかく豊かな音色と言われます。
音が響きすぎないため合奏でも他の楽器の音とうまく溶け合い、一体感が出せるでしょう。
一方で、「自分の音を良く響かせたい」「元気のある大きな音を出したい」という場合は金属製のほうが適しているかもしれません。
木製の楽器にはグラナディラという木材がよく使われています。
クラリネットやオーボエにも使われている黒い色の木材で、非常に硬いことから温度や湿度の影響を受けにくいのが特徴です。
木製の頭部管の音色
- やわらかく豊かな音色
- 合奏で他の楽器の音との一体感を出したいときにおすすめ
頭部管と胴部管をつないで練習するときには、まずチューニングを行うのが基本です。
チューニングの際は頭部管の抜き具合を調整することで音程を合わせていきます。
そこで、次は頭部管を抜くときのポイントを見ていきましょう。
頭部管を抜くときに気を付けることや調整法は?
ピッコロのチューニングのために頭部管を抜くときの注意点や、抜き具合の調整方法を説明します。
気を付けること
ピッコロの頭部管を抜くときに気を付けなければならないのは、抜きすぎないようにすることです。
頭部管を抜くと楽器が全体的に長くなるため、音程が低くなります。ピッコロは高音の音程が上ずる傾向があるため、頭部管を抜きすぎてしまいがちなので注意しましょう。
抜きすぎると楽器本来の音色が損なわれてしまいます。
楽器の特性もあるため、〇mm抜けばいいと具体的な基準を言うことは難しいです。しかし1cmや2cmも抜かなければ音程が合わないという場合は、息の角度など別の要因を探ってみてください。
頭部管を抜くときに気を付けること
- 高音が上ずりやすいからといって頭部管を抜きすぎないこと
調整法
続いて、抜き具合の調整法についてです。
楽器やそのときのコンディション(温度、湿度など)によってちょうどいい抜き具合は変わります。
そのため、先ほども言った通り具体的に「〇mm抜きましょう」とは言えません。
地道な作業ですが、チューナーを使って正しい音程になる抜き具合を確認していきましょう。
マニキュアやペンなどを使って目印をつけておけば、次回チューニングする際の参考にもなります。
マニキュアは除光液で落とせるため便利ですが、木製の場合は染み込んでしまい楽器に悪影響を及ぼすこともあるので注意してください。
頭部管の抜き具合の調整法
- チューナーを使って正しい音程になる抜き具合を都度確認する
まとめ
ここまで、ピッコロの頭部管の音程や音色、頭部管の素材の違い、抜くときの注意点などを説明してきました。
ピッコロを吹く上で頭部管が大きな役割を担っていることがお分かりいただけたかと思います。
練習をしていて、自分の音色がどうしても気に入らなかったり、曲のイメージにあった音色が出せなくて苦労したりすることもあるでしょう。
「自分の吹き方が悪いせいだ」と自分を責める人もいるかもしれません。
確かに、吹き方は要因のひとつとして考えられるでしょう。ですが、楽器そのものの性質が関係している可能性もあります。頭部管を変えることですぐに問題が解決することもあるのです。
今使っている楽器の音色を変えたいとき、頭部管を変えることも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
頭部管用の収納ケースがあるくらい、こだわる人はいくつもピッコロの頭部管を持っています。
楽器屋さんで頭部管を試奏することもできるので、ぜひ自分の気に入った音色を出せる頭部管を見つけてみてください。