クラリネット吹きにとってリードは常に悩みのタネですね。
硬さを替えればもっといい音が出るかも!?
と調べても種類が多すぎて迷いますし、硬さの比較表があっても見方がよくわからない…自分に合うリードを見つけるのは大変です。
今回は様々なクラリネットリードを比較し、インターネットやカタログではわかりにくい種類や硬さについて、また初心者のリード選びについて解説します。リード選びの参考になれば嬉しいです。
目次
クラリネットのリードは何でできている?
クラリネットのリードは、葦(あし)という植物からできています。
葦、そのものを英語「reed」と表現するので、雑学的に知っていると「実は、リードって植物の葦でできていて、植物の名前もリードって言うんだよ」と鼻高々に教えられます。
さて、楽器として利用されるリード(葦)は主に地中海沿岸部で栽培されているのですが、なんといっても水辺の近くでよく育つ植物として知られています。
使用する前に、リードに少し水を含ませる理由は葦の性質を利用しているからなのです。
クラリネットリードの硬さ比較!
硬さの比較の前に、表記の方法について確認しておきましょう。
■リードの硬さの表記
リードには番号もしくはアルファベットが振られています。
番号の場合は、数字が上がるごとに硬さがアップします。
- S(ソフト)
- MS(ミディアムソフト)
- M(ミディアム)
- MH(ミディアムハード
- H(ハード)
など、英語表記のブランドもあります。
リードには統一された規格がないので、硬さは各社の基準に従い表記されています。
そのため、同じ番号であってもブランドが違えば、まったく異なる硬さである可能性もあるのです。
■リードの硬さ比較!比較表を入手しよう
さて、本題です。前述したように、リードに振られている番号は、言ってしまえば各社が好き勝手に付けたもので、統一の規格ではありません。
以下では、あくまで目安となるリードの数字について解説していきます。
- クラリネットのリードは、数字が大きければ大きいほど硬く、小さければ小さいほど薄くなります。
- 数字の大きいは吹きづらい、小さいは吹きやすいという目安にもなるので、リードの数字は覚えておくと演奏の際の吹きやすさにつながりますよ。
上記のポイントを参考に、具体的にあくまで目安となるリードの数字と数字から分かる吹きづらさ・吹きやすさを解説します。
リードの番号 | 吹きづらさ・吹きやすさ |
4 | 力まなければ音がでない。非常に吹きづらい。 |
3・1/2 | 吹きづらい。 |
3 | やや吹きづらい。 |
2・1/2 | 非常に音が出しやすく、吹き心地も感じる。 |
2 | 力まずに吹ける。息のコントロールが苦手な方には吹きやすい。 |
目安となる、リードの数字を確認したところで、各ブランド、各モデルの硬さの比較のために、各社のホームページやカタログに公開されている比較表をチェックしていきましょう。
■Vandoren(バンドレン)
定番のバンドレンは、自社の4モデルのみの比較表です。
最上段のTrad.はTraditional(トラディショナル/通称:青箱)の略で、載っていない比較表はないというくらい世界基準のモデルです。

出典:Vandoren Official Site
■D’Addario(ダダリオ)
RICO(リコ)から名称変更したダダリオは、自社モデル10種類とバンドレン3種類を掲載した比較表です。
バンドレンのチャートが本家バンドレンの比較表とはやや異なるのが面白いですね。
このことから、リードの硬さの感じ方は人により違いがあることがわかります。

出典:D’Addario Woodwind Official Site
■Legere(レジェール)
樹脂製で1/4刻みのブランド。
E♭管やバスクラ、コントラバスクラまで同じ表に掲載されています。
B♭管は自社3種類、バンドレン2種類、ダダリオ4種類を比較しています。
最下段Grand CS(グランドコンサートセレクト)は3種類ありますが、どのモデルを指すか不明ですね。
このように比較表には、情報が不十分なケースもあるのです。
出典:Legere Official Site
硬さの感じ方には個人差がありますし、使っているうちにリードが変化して、最初の印象と違ってくる可能性もあります。
比較表の数字にこだわり過ぎないことも大切です。
続いて、リードの硬さで吹き心地や音がどの程度変わるかを解説します!
柔らかいリードと硬いリードのメリットデメリット
リードの硬さが異なると具体的にどんな違いがでるのでしょうか?メリットとデメリットをまとめました。
柔らかいリードは吹きやすく、硬いリードは耐久性がある
柔らかいリードは軽い力で音が鳴りますので、特に口の周囲の筋肉がまだ発達していない初心者には、吹きやすいでしょう。
また、吹き始めから楽に音が出るので、本番直前にリードを新調したとしても、音が出なくて困ることはありません。
しかし強いコシがないので、リードは比較的変化しやすく、劣化も硬いリードにくらべると早いと言えるでしょう。
硬いリードは、鳴らすのに力が必要ですから、ある程度キャリアのある方に向いています。
吹き始めは吹くのが苦しいかもしれませんが、しばらく吹くと安定してきます。
リードの状態をピークに持っていくためには時間が必要ですから、大切な本番があるなら数週間前からリードを育てなければいけません。
きちんとリードが育てば、良い状態で長く安定します。手間ひまをかければ長持ちする点が硬いリードのメリットです。
柔らかいリードは明るくはっきりした音、硬いリードは落ち着いた音色
柔らかいリードは、明るくはっきりした音が出る傾向があり、音量も出しやすいです。
息に対する反応が良いので、タンギングもしやすいでしょう。
楽に吹ける分、必要以上に圧力をかけて吹くと、音が開いて汚い音になりがちです。
そのため、ある程度安定した息を吹きこめるようになると、一段階硬いリードに替える方が多いです。
硬いリードは厚みのある落ち着いた音色が出ます。
リードを振動させるのに力が入りますから、音量を出したり、素早いタンギングをするにはテクニックが必要です。
リードに対して息の圧力が足りないと、サーサーと雑音が入ることがあります。
音がこもっている感じがしたら、一段階柔らかいリードに替えるといいかもしれません。
リードの硬さ | 硬い | 柔らかい |
音色 | 厚みのある落ち着いた音色 | 明るくはっきりした音色 |
音質 | 息の圧力が足りないと雑音が入る | 圧力をかけると音が開いて汚い音になる |
吹奏感 | 鳴らすのに力が必要 | 楽に吹ける |
劣化 | 長持ちする | 硬いのに比べて早い |
続いて、楽器を始めたばかりの方がリードを選ぶ時のポイントをご紹介します!
初心者のリード選び方おすすめは?
初心者がリードを選ぶときは、先生や先輩に何を使えばいいか聞くのが一番です。
身近に聞ける人がいない場合は、楽器店のスタッフに相談してもいいでしょう。
■定番はバンドレン青箱2.5
バンドレンのリードは材質が良く長持ちしますから、毎日何時間も練習する学生さんに特におすすめです。
バンドレンのラインナップの中でも青箱(トラディショナル)はクラシックや吹奏楽、ジャズまでオールジャンルに対応できるのが魅力。
1年くらい経ったら、一段階硬い3にする方が多いです。
2.5の方が吹くのは楽ですが、3の方が音が整います。
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バンドレン青箱2.5のリードはこちらから!
■バンドレン以外の選択肢
バンドレン青箱2.5だと苦しくて吹けない、という方には、同じモデルの2を使う方法もありますが、バンドレンよりも材質が柔らかいダダリオを選ぶのもいいでしょう。
材質が柔らかい分、バンドレンよりも劣化が早めなのは否めませんが、時間をかけてなじませなくても音が自然に出てくれます。
具体的には
- 輝きのある音色で高音から低音までムラなく鳴らしやすいグランドコンサートセレクト・エヴォリューション3
- 深みのある音色でアーティキュレーションが付けやすいレゼルヴ・クラシック3
がおすすめです。
抵抗感としてはレゼルヴ・クラシックの方がバンドレン青箱に近く、エヴォリューションの方が軽めです。
リードの保管方法
クラリネットのリードは、専用のケースであるリードケースに入れて保管をしましょう。
リードケースに入れる際の注意点は、”リードに付着している水分を十分に落としてからしまう”です。つまりは、乾燥させてからしまいましょうの意味です。
リードが乾いていない状態でリードケースに閉まってしまうと、季節や気温によってはリードにカビが生えてしまったり次の機会に演奏しようと思った時にはリードが割れやすくなったりする原因になってしまうからです。
クラリネットの使用が終わったら、リードを外し、クラリネット専用のスワブやガーゼなどの柔らかい布を用いて、十分に水分を取りましょう。
リードから水分を取り除く際は、優しく丁寧に拭き取りましょう。
クラリネットに使用するリードを長く愛用するためにも、リードは正しい方法で保管するようにしましょう。
リードを長持ちさせるためにはローテーションを意識する
お気に入りほどショートタイムで
慣らしやすいリードはぜひとも使いたい!!そう思うのが楽器吹きの正直な気持ちではありますが!そこはぐっと堪えてください。なぜなら酷使するとあっという間にヘタってしまうからです。特に高音域・低音域はリードに負担を掛けやすいです。本番に備えて良いリードを準備するのであれば、ほどほどで使いつつ保管していくことが重要です。
コツはローテーション
良いリードを長く使用するにあたってリードケースは必需品です。なぜならローテーションが組みやすいからです。複数枚のリード一定の間隔で交換していくことで程よい使用感が維持できるのです。リードにマークや日付を付けるのもいいですね。
リードケースは5枚入り・10枚入りのものがありますので、どんどん交換していってください。そうすることによって良いリードをいつでも複数枚準備することができます。
ところで、リードを選ぶうちに雑音があるリードに出会ったことはありませんでしょうか?それはなぜかご存知でしょうか?
雑音が出るリードとは?
ノイズは水分!?
リードからノイズが出た経験はありませんか?それは何かしらの不調の信号であることが多いです。
まずは上げられるのは水分です。楽器を吹けば水分が出ますが、リードがその水分を吸収していき吸水の限界を超えたリードは水分を保ったまま振動をしますので、必然的にズズズズッといった水音が鳴りやすいです。吹き手が思っているより水分は溜まりやすいのでその前に交換してみましょう。
気づかないうちに割れていた!
ノイズはリードが上手く振動していないときにも起こります。それはリードの割れです。、その状態で鳴らそうとするとリードが上手く振動してくれずにノイズが混ざることがあります。これもリードの交換が必要です。
このようにノイズというのは何かしら問題が起きている状態でリードを鳴らすことで発生していることほとんどです。こまめにリードチェックをしてあげてください。
<リードの硬さは?>
- 硬さは厚みの違い
- 厚みによって数字が振り分けられている
- メーカーによって異なるが、一番広くある銘柄は1~5まである
- 初心者の方は22/1~3の硬さがおススメ
- 良く使用される方は22/1~32/1
<良いリードの選び方>
- ティップの部分のリードの繊維が均一に走っているか
- リード先端が波打っていないか
- ヒールの厚みが左右均一なものが良いリード
- 吹いたときの第一印象で判断せずに少しずつ試す
<リードを長持ちさせるためには?>
- お気に入りは使いすぎずに、ほどほどで使いつつ保管
- リードケースに入れて必ず保管する
- リードを数枚準備してローテーションする
<雑音が出るリードとは?>
- リードの雑音の正体は、水分の場合がある
- リードの雑音は、リードの割れが原因のときがある
プロの使うリード
学生の間での良く使われるリードはなぜか3 2/1が多かったりします。それはなぜかというと学校で奨められることが多かったり先輩がその厚みを使用していることが多いからです。
そのため厚いリードを頑張って吹くということがよくあります。実際その厚みが奏者にとってのベストなのかは自分自身で判断しなければならないのです。
では実際のプロ奏者はどうなのでしょうか?
2,2/1 〜 3, 2/1を使用する
プロ奏者のリードの厚みは2 2/1 〜 3 2/1を使用するそうです。比較的厚いものばかりということもなく薄いものを好まれることも多いそうです。なぜ薄いものも好まれるのかというと、ほどよい抵抗感で、コントロールや鳴りも安定しやすいからです。
演奏が長丁場になることも多いプロ奏者としては疲れにくいものがが好まれるようです。加えて厚いリードでパワーを出すということは繊細なコントロールが難しくなることでもあります。
プロ奏者が2 2/1 〜 3 2/1を使用するのはパワーだけでなく音色とコントロールのしやすさを意識して自分に最適なものを選んでいるのです。
そんなプロの使うおすすめメーカーはどこなのでしょうか?
バンドレンが多い
プロ奏者が使用するメーカーはやはりバンドーレンがダントツのようです。
近年はリードを新しく販売するメーカーも増えているため、選択の幅は大分広がっていますがそれでも根強い支持を得ています。
バンドーレンが選ばれる理由は、やはり音色・レスポンス・安定感が共に高い部分が評価されています。迷った時のバンドーレンとも言えるのではないでしょうか。
バンドーレンが選ばれる理由 |
①音色 |
②レスポンス |
③安定感 |
バンドーレン社のリードは100年以上の歴史がありますので、その歴史の中で研鑽されたポテンシャルはどのシリーズを使っても一級品です。
そのバンドーレン社からの2015年に発売されたのが”V21”と命名された新しいタイプのリードです。
バンドーレンのリードとしては久々の新シリーズとなるV21はどんなリードなのか?
まずはパッケージですが、今回は鮮やかなブルーの色に白字でV21と書いてあります。ジャーマンタイプもありこちらはホワイトとグレイのデザインをしています。バンドーレンのトラディショナルをよく青箱を呼ばれていますがこちらもある意味青箱ですね。
リード自体は円錐型でヒール(リードの根元部分の一番厚みがある部分)は厚く先端は薄いカットになっていますね。円錐型と先端からヒールに行けば行くほど細くなっており、バンドーレンのルピックと同じ特徴です。
部分的な厚みは、ヒールは3.25mmとルピックと同じで先端は0.10mmとV12と同じになっています。ルピックとV12のハイブリッドのような設計のようです。リードのカットはアンファイルドです。他のシリーズよりは若干薄めで他シリーズの同じ番号の厚みの中でも一番薄くなっています。
メーカー表記を見ても、全音域でより吹きやすくなり、あたたかな、深みのある音が出せるようになりました。また鮮明な響きで、反応のよさも抜群です。V21は広い音域での跳躍も均一で豊かな音で演奏することができる完璧なリードとなっておりバンドーレン社の自信を持って販売していることが見て取れます。
では実際の吹き心地はどうでしょう?
V21のリードはクセがなくおすすめ
実際の吹奏感の評価としてはレスポンスがとてもいいです。これは他のシリーズよりも若干薄い部分が起因していそうです。また息もスムーズに入りパワーも出しやすい傾向にあります。このことからもクセがなく非常に吹きやすいと感じる方は多そうです。
おそらくテールの厚みとアンファイルドカットが芯を強くし、パワーのある音にも耐えられ、先端の薄さと円錐状の形がレスポンスのよさに起因している印象です。人によっては芯が強すぎて音色に幅が出せないと感じるかもしれませんが、それほど気になるものではないように思います。そのため使いやすい器用なリードといえるのではないでしょうか。
このリードは吹奏楽からポップ、クラシックまで幅広く使いやすいかと思います。特に初心者の人には楽に吹けてコシのある音が出しやすいためおすすめと言えるでしょう。
バンドーレン V21の特徴 |
①ヒールの厚み3.25mm |
②先端の厚み0.10mm |
③リードカットはアンファイルド |
④全音域で吹きやすい |
⑤あたたかで深みのある音色 |
⑥鮮明な響き、反応が良い |
⑦息がスムーズに入ってパワーも出やすい |
⑧クセがなく吹きやすい |
⑨楽に吹けるから初心者の人におすすめ |
もちろん合う合わないは個人の感じ方にもよりますが、一度試す価値はあります。
まとめ
今回はクラリネットリードの硬さについてご説明しました。ポイントをまとめます。
■比較表が必須!
リードの硬さの基準は各社でバラバラなので、比較表があると便利です。
バンドレン青箱を基準に比較するとわかりやすいでしょう。
ただ比較表も絶対ではありませんので、先生や先輩、楽器店スタッフに相談するのがベターです。
■柔らかいリードの特徴
- 音が出しやすいので、初心者でも吹きやすい。
- リードを育てなくても自然に音が鳴る。
- 音色は明るめで、音量を出しやすい。
- 圧力をかけ過ぎると音質が悪くなる。
- 劣化は早め。
■硬いリードの特徴
- 音を出したりタンギングするのに力がいるので、中上級者向け。
- なじむまで育てる必要がある。
- 丸くて重厚な音が出る。
- 長持ちする。
■初心者におすすめリード3選!
- バンドレン 青箱
リードの質が良く長持ち。オールジャンル使える。 - ダダリオ レゼルヴ・クラシック
深みのある音で、バンドレン青箱よりやや反応が良い。 - ダダリオ グランドコンサートセレクト・エヴォリューション
輝きのある音色で、バンドレン青箱より軽く吹ける。
昔は「上手な人ほど硬いリードを使う」という都市伝説があり、リードの番号を上げることに情熱を燃やす人がたくさんいましたが、今そんなことを言っている人は誰もいないでしょう。
硬さがどうであれ、自分に合ったリードで吹くのが一番です。色々比較してぜひお気に入りのリードを見つけてください!