楽器を初めて吹く人にとって、最初に覚えなければならないことの一つが運指です。
木管楽器の場合は、音によって全て運指が異なりますが、金管楽器は違います。
トランペットの場合は3つしかピストンはありません。
だから、同じ押さえ方で息の入れ方を変えることにより音を変える場合が出てくるわけです。
運指や替え指を覚えて正確な音を出せるようになることがトランペットの最初の関門です。
今回は運指や替え指の覚え方、またトランペットでは欠かせないハイトーンを出すための運指を分かりやすく説明しているサイトや楽譜を紹介していきます。
それではまず、トランペットの運指を覚える方法についてみていきましょう。
トランペットの運指を覚えるコツは楽器の構造を覚えること
先ほどもお伝えしたように、トランペットには3つしかピストンがありません。
だから、同じ指で多いと6つの音を出すことになります。
慣れるまではどの押さえ方で何の音が出るのか覚えるのがたいへんですよね?以下にあるのがトランペットの運指表です。
(引用:ヤマハ楽器解体全書)
この運指表を見ながら練習を繰り返しすることで、音を覚えるというのが一般的だと思いますが、なかなか覚えられない人もいると思います。
そこで、運指がより覚えやすくなるコツなのですが、倍音とピストンの構造を踏まえると覚えやすくなります。
上の運指表をみるとわかるように、何も押さえない状態で低音から順に、「ド」「ソ」「ド」「ミ」「ソ」の音が出ます。
そして、ピストンを1つずつ押した場合、第1ピストンだと1音、第2ピストンだと半音、第3ピストンだと1音半下がる構造にトランペットは作られています。
この作りを応用して考えると次の表のようになります。
押すピストンの番号 | |
半音下げる | ② |
1音下げる | ① |
1音半下げる | ③(安定が悪いので単 独では使わない)
①② |
2音下げる | ② ③ |
2音半下げる | ① ③ |
3音下げる | ① ② ③ |
これを踏まえて運指をみてみましょう。
チューニングB♭(ド)を例に挙げてみてみます。
「ド」は何もピストンを押さないで吹きます。「シ」を吹くには半音下げればよいので第2ピストンだけ押します。
「シ♭」なら1音下がることになるので第1ピストンを押します。
「ラ」であれば1音半下がるので第1ピストンと第2ピストンを、「ラ♭」であれば2音下がるので第2ピストンと第3ピストンを押します。
このように「ド」の倍音を基準にして、何音下がっているかで押さえるピストンがわかりますので、なかなか覚えられない人は参考にしながら覚えてみましょう。
運指は一通りではなく、替え指といって他の指でも同じ音を出せる場合があります。その替え指の覚え方を次にみてみましょう。
替え指を覚えると音ムラが減ったりピッチが合ったりする
替え指とは基本の運指以外の押さえ方で同じ音を出せる運指のことです。替え指を知らなくても演奏をすることはできます。
しかし、指回しをするときやピッチがなかなか合わないときに替え指を使うと上手くいくことがあります。だから、替え指を知っておくととても便利です。
また、替え指を繰り返し練習しておくことで唇に耐久性が出てきて音を外しにくくなる、トランペットの響きが良くなる、和音の感覚が磨かれるという効果が出てきます。
基本運指で音を出すことに慣れてきたら、基本運指で行う練習と合わせて替え指を練習してみるとよいでしょう。
そうすると音ムラが減り、どの音階を吹いても音が狂わずに吹けるようになり、均一に音を鳴らすことができるようになります。
また、和音を吹くときに響きを良くすることができるという効果があります。
リップスラーやリップシェイクをきれいに鳴らしたい人の練習方法としても有効です。
例えば、四分音符100くらいのテンポで「ファ#(2)ソ#(2,3)ファ#ソ#→ファ(1)ソ(1,3)ファソ→ミファ#(1,2,3)ミファ#→レ(1,3)ファ(1)レファ」とスラーで練習してみましょう。
替え指を覚えておくことのメリットをお話してきましたが、それでも替え指は替え指です。
正式な運指で通常は吹いて、代替的に替え指を使うようにするのが好ましいです。
以下に替え指が多くある運指表を載せるので参考にしてみてください。
替え指の覚え方としては、オクターブ違う音でも同じ指で鳴らせるケースが多いので、その点を踏まえて繰り返し練習していきましょう。
では、次にハイトーンについてみていきます。
ハイトーンが分かりやすい運指表
ハイトーンについてわかりやすい運指表とハイトーンのコツについてご紹介します。
ハイトーンを出すために
ハイトーンを出せるようになるのはなかなかたいへんですよね?アンブシュアや息の入れ方など気を付けなければならない点がいくつかあります。 ここで一度、ハイトーンを出すための押さえておくべき点をおさらいしておこうと思います。
①息は細く速く、少なく
ハイトーンを出すためには速く細い息を出せなければなりません。そのような息を出し続けると唇の形やアパチュアが崩れてきます。唇の形が変わるということは疲れてきているということなので、休憩を入れるようにしましょう。唇を同じ形に保つ筋力もハイトーンを吹くためには必要になってきます。無理はせずに、継続して練習することで吹くためには必要な筋力を身につけましょう。
②早く唇を振動させる
無駄な力は入れないように気をつけて、唇の形が変わらないようにしながら速く振動させます。
③アパチュア(口を閉じたときの隙間)は小さく、舌を上げる
舌を上げることにより、口の中の容積が狭くし空気圧を上げることで息のスピードが速くなり高い音を出せるようになります。
以上のポイントを押さえてハイトーンの練習をしましょう。
ハイトーンが分かりやすい運指表はコレ
先ほど、運指表を載せましたが、よりhighB♭以上の運指は替え指のところに載せていた運指表を参考にしてみましょう。
運指表をみるとわかるように、ハイトーンになるほど替え指がたくさんあります。正式な運指(一番上に記載されている運指)で吹けるのが一番ですが、替え指もあわせて書いてあるので、吹きやすい指・音程が合う指を探してみても良いかもしれませんね。
では、次に実音についてみてみましょう。
実音の分かりやすい表
トランペットという楽器はB♭管の楽器です。
ですので、実音とは異なります。
実音とはin Cの楽器の音をいいます。だから、トランペットで実音を吹くためには移調しなければなりません。トランペットで吹く「ド」の
音は実音では「シ♭」になります。
B♭(Tp) | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ |
実音 | シ♭ | ド | レ | ミ♭ | ファ | ソ | ラ |
移調するのは慣れるまでは難しいと思います。表をまるまる覚えるのも一つの方法ですが、まずはトランペットの音(B♭)は長2度下げると実音になるので、それを踏まえて考えた方がわかりやすいでしょう。
まとめ
ここではトランペットの運指を中心にみてきました。運指を覚えるのは最初のうちはたいへんだと思いますが、第1ピストンを押すと1音下がるなどトランペットの構造を踏まえて覚えていってみてください。
金管楽器の場合、指だけではなく息の入れ方を変えなければ正確な音を出すことができない点が難しいところだと思います。
高音域になればなるほどコツがいりますし、口が疲れてしまうでしょう。上手く吹けるようになるためには練習を積み重ねる他に方法はありません。
運指も同じですが、慣れるしかないのです。適度に休憩をしながら、継続して練習することでぜひ素敵な音色を奏でていってくださいね。